ジュナ、吸血鬼への目覚め!? 介抱された結!
ジュナが、結の首元に唇を当てました。
そして――――。
(タカハル……)
「!」
座り込んだままの結が、一瞬だけ身体を強張らせます。
傍目には結の首へ吸い付いているようにしか見えません。
しかし、その行為が意味するところを、この中でアンブレラとジュリアだけは知っていました。
(覚醒……。そう、ジュナが……)
恐らくはジュナに、吸血行為を施そうという意識はまるでないのでしょう。
それはあまりにも自然で、そして何かに導かれるようでもありました。
二本の尖った牙が、ジュナの口からちょこんと生えていて、その先端は結の肌へとめり込みました。
「あ
あ
あ」
瞳を閉じて唇を寄せるジュナ。何かに絡めとられるよう、心細い声をあげて身体を震わせる結。
しばらくすると、ジュナの身体がほんのりと淡く光り始めました。
(ジュリア様。これは……)
(普通の吸血行動……じゃあ、ないみたい)
その様子を見たアンブレラが、ジュリアに視線を配りました。
ジュリアも声には出さず、心の中で返答します。
(人間と妖怪の混血だから……。普通とは違うのかも)
(ということは、血を吸っているわけではないと?)
ふたりがやりとりをする間にも、ジュナの身体から満ちる輝きは増していきます。
アンブレラが気づいた時には、結の顔から苦しそうな表情が消えていました。
溺れてしまい、酸素を求めて喘ぐような必死さは既にありません。
それどころか、どこか安心しているような――――。
「……っぷは」
しばらくの間、ずっと結に顔を寄せていたジュナがそっと身体を離すと、ぽん、と息をはき出しました。
「あれ? わたし……」
「ジュ、ジュナちゃん」
「詩惟花ちゃん」
一息ついた瞬間に輝きは消えてしまいました。
心配そうにのぞき込む詩惟花の顔を見たジュナは。
「うん? なにやってたんだっけ?」
(あらあら。ほんとに無自覚だわ)
(無意識に半覚醒まで昇り詰めるとは……。さすがジュリア様のご息女です)
ぽかん、としていたジュナですが、はっとして前を向きました。
もう、動く気配すら感じない結。
「うん。魅了をかける必要も、なくなったみたい」
「おかあさん」
「解くわね。たぶん、大丈夫でしょう」
言って近づき、再び結の瞳を覗き込むジュリア。
瞬きひとつする間に解除したのでしょう。すぐに上体を起こしてしまいました。
「はい。元通り」
果たして、結は。
「……。えっと、ゆ、結……?」
しばらく呆けたままでした。
しかし、ジュナの呼びかけが届いたのでしょう。
ぴくん、と顔がかすかに揺らいで、そろりと瞳を動かした結は。
「あ
ありが、とう」
「!」
それだけを言うと、ふっと意識を失い、ジュナのもとへ倒れ込んでしまうのでした。




