第三十九話 予選開始
開会式の後、綴達ランキング戦選手は会場となる森へと移動した。
森に着くとゼッケンと何故かブレスレットを配られた。ブレスレットには四つほどランプがついている。どうやら、戦闘不能と判断されたらこのランプが青色から赤色に変わるらしい。カラー○イマーみたいだ。
ブレスレットとゼッケンを付けて森に入る。最初は一年からだ。
森の中に入り適度にばらけたら始めるらしい。
綴は少し見晴らしの良い場所に立つと軽く準備運動を始める。
腰に手を当てて体を反ると逆さまになった視界の中にキラリと光ものを見つけた。そのままの体制でよーく見るとそれは小型のCCDカメラだった。
この予選会場の森には至る所にカメラが仕掛けられており、教室のモニターなどに配信されている。CCDカメラのランプが赤く点滅している。と言うことはつまり録画中と言うことだ。
それを理解すると今の格好を見られていると分かり急に恥ずかしくなり姿勢を戻す。
しばらく準備運動を続けるとアナウンスが鳴り響いた。
『これより、一学年の予選を開始します。…それでは、よーい……スタート!』
なんだか運動会みたいなノリだなと思いつつも周りに気を配る。
この、ランキング戦には一年だけで八十二人が参加している。これは例年よりも若干少ないそうだ。
予選はバトルロイヤル形式。なので八十二人の内の六十七人を戦闘不能にすればその時点で生き残った十五人の本戦出場が決まる。
「ふっ!」
綴は後ろから攻撃を仕掛けてきた二人を刃を潰した剣で昏倒させた。
そう、つまりは
「チームを組んで倒しても何ら問題無いって事なんだよなぁ…」
予選のルールには徒党を組んではいけないとは書いてないのでルールには抵触しない。
眠里先生に確認したところ毎年チームを組む奴はいるらしい。つまりは常套手段だ。
他がそうしてるのだから綴もそうした方が生存率が上がるに決まっている。だが、そうはしない。
「それじゃあ、つまらないしね」
昏倒させた二人のブレスレットが赤色になっているのを確認すると綴は歩き出した。
教室では丁度綴が二人を昏倒させた映像が流れていた。
後ろからの攻撃だったので見ている美来達はヒヤッとしたものの、綴は危なげなくそれをかわすと二人を昏倒させた。
流れるような動作に思わず感嘆の声がでる。
因みにだが準備運動をしているところもバッチリ映っていた。
「いやあ~やっぱり凄いね~桁違いだよ彼は~」
「そうだね。この分なら予選通過は間違い無いかも」
「それより心配なのは元親よ~!」
「そう?模擬戦の時も危なげなかったように見えたけど」
「あれはダメよ。無手の時より動きがぎこちない。あれじゃ本戦では思うように戦えないわ~」
言外に予選通過は出来るという美来の発言に良子も心中で賛同すると同時に、あることを思い出す。
「そう言えば、元部君は何だか秘策があるとか言ってたよ?」
「秘策~?」
胡散臭そうな顔をする美来に良子は苦笑する。
「どうせ碌なもんじゃないでしょー」
美来が言うと同時に画面が切り替わり元親が映し出される。その両手には何も持っていなかった。
「秘策が無手とか…いつも通りじゃないの…」
嘆息する美来。だが、良子は違った。
「見て!元部君の手!」
良子に言われ美来は元親の手を見る。
「ん~?」
目を細めてよく見ると美来にも良子が何を言いたいのかが理解できた。
感嘆の声を上げると言った。
「へ~そっか~そう言うのもありか~成る程ね~」
「確かに、見たことのない手だね~」
「まあ、あいつにしてはよく考えたじゃん」
森の中を手ぶらで歩く一人の少年。それを見た三人はお互いに顔を見合わせて頷くと散開する。
少年を囲むように配置につくと一人が指を三本立てた手をあげる。その指が一本二本と折り畳まれていき最後の一本が折り畳まれると二人が駆け出す。
一人は茂みを掻き分け、一人は木を蹴りつけ跳躍して迫る。飛び出さなかったもう一人は後方から、二人が退いた後に発動させる魔法の準備をしていた。
背後から少年の首を刃を潰した剣で狙う。だが、その場に響いたのは肉を打ち付ける音ではなく、金属同士がぶつかり合う音だった。
驚愕に目を見開くが直ぐに思考を戻し距離をとろうと下がる。その時間を稼ぐべく遅れて少年の本に着いたもう一人が死角から胴に剣を振るった。
無手の少年はそれをしゃがんでそれをかわすと地面に手をつき回転して後ろから迫った少年の足を刈る。
足を刈られバランスを崩した少年の顎に鋭い掌底が炸裂する。意識を一瞬にして刈り取られ崩れ落ちる少年。
無手の少年は距離を取ろうとしていた少年に迫る。
それを見た少年は焦って剣を振るも、焦って振り下ろされた剣では無手の少年をとらえることは出来ない。
そして、顎に衝撃を感じると体が宙を舞う。舞っている間にも意識は遠のいていき体が地面に落ちる前には完全に意識が飛んでいった。
魔法を放とうとしていた者は即座に勝てないと悟るとその場を後にした。少年もそれを追わない。
ただ、少し残念そうな顔をするとぽつりと呟いた。
「残念…こいつの強度とか試したかったのに…」
そう言うと、少年は両の拳を打ち付けた。打ち付けると素手だと鳴るはずのない金属音が鳴り響いた。
それもそのはず、少年は無手だが何も装備していないわけではない。その両の手には鈍色に光るガントレットがつけられていた。
ガントレットをはめた少年元親は気を取り直すと強敵を求めてまた歩き始めた。
森を暫く練り歩く。が、一向に誰にも会わない。会ったと言えば言葉も交わさない内に昏倒させてしまった最初の二人だけだ。
綴は戦えないことで若干ふてくされながらも森を練り歩いていた。
「都合良く元親あたりが出て来ないかな~」
そんな事を呟くも当然元親が出て来るわけはない。綴はおもむろに足を止めるとうがーっと天に吼えた。
「誰でも良いからかかってこーい!!暇じゃぼけぇーーーーーーー!!」
声が森の中に少しだけこだまして消えていく。辺りはまた静寂に包まれた。
暫くしても誰も出て来ないことに嘆息して歩き始める。
「予選でまだ二人しか相手にしてないよ…つまんないなぁ…」
こういう発言が出て来ることから綴も大概バトルジャンキーなのだが本人は気付いていない。
もうこうなったら隙を作り続けて狙われやすくしよう。
そう考えた綴はくるくると回りながら剣を振り回して「うがーうがー」と謎の声を発し始めた。
だが、それでも一向に敵が来る気配はない。そして、
『ただいまを持ちまして一学年の予選を終了いたします。皆様お疲れさまでした』
予選が終わりを告げた。
「うがーっ!!」
満足に戦えなかったので一吼えするもむなしさが増すばかりだった。
「はあぁ…」
溜め息を一つ吐くと綴はトボトボ最初の集合場所に向かった。
集合場所につくと綴は大勢の人に温かい目で見られた。まるで可愛い幼子を見るようなその目に綴は困惑していた。その、誰も彼もが上級生だったので反応にもか困っていた。え、なんで?と思いながらも歩を進める。
予選が終わった人は各自学校に戻れるので綴はなんだか居づらくなりさっさと学校に戻った。
だが、学校に戻っても温かい目線を向けられた。しかも、今度は同級生にもだ。訳が分からなかった。
取りあえず教室に入る。すると、ここでも温かい目線を向けられた。
「何故…?」
そう呟く綴に美来と良子がニヤニヤしながら近付いてきた。
「いや~柊君災難だったね~」
「え?何が?」
きょとんとする綴に美来と良子は顔を合わせ「せーの」と呟くと言った。
「「誰でも良いからかかってこーい!!暇じゃぼけぇーーーーーーー!!」」
「っ!?」
まさか聞かれていたとは思わなかった綴。そしてその部分が放映されていたのにも驚いた。だが、それだけではなかった。
「「うがーうがー!」」
「っ!?」
美来はくるくると回り始め、良子は可笑しそうにそれを見ている。
良子に視線を向けるととびっきりの笑顔で一言。
「全部見てました♪」
驚きと羞恥のあまり顔を真っ赤にし口をパクパクさせながら綴はクラスメイトを見ると全員笑いを堪えていた。
どうやら、嘘じゃないらしい。
その事を理解すると、綴はその場にうずくまり一言。
「は、恥ずかしいぃぃぃ~!!」
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