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新米退魔師と氷結の姫  作者: 槻白倫
第三章 順位戦編
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第四十話 お姉ちゃんも予選開始

良い案が浮かばずに長引きました。すみません<(_ _)>


今回は少し短いですがご了承下さい

 綴が羞恥に悶えている中、霞も悶えていた。その訳は綴の映るモニターを見ていたからだ。


 相手が来なくて「うがーうがー」と吠えている綴が愛おしくて仕方なかった。


 だが、霞は気持ちを切り替える。次は二年の予選が始まるのだ。


 霞は気合いを入れると、準備の整った森へと足を運ぶ。準備というのも気絶した生徒の回収だけだ。魔法によって抉れた地面などの補強はしない。


 適当に歩き続けているとアナウンスが鳴る。


『それでは、二年の部はじめま~す!よーいスタート!』


 相変わらずのアナウンスを聞くと霞は剣を精製をする。


 目を閉じて気配を探る。


(右に三人、後ろに二人、前に三人か…)


 霞は別に囲まれている訳では無い。少し先にいるのが分かっただけだ。その少し先がどこまで先なのかは分からないが、少しという言葉に語弊があるのは確かだろう。


 目を開くと前に一歩踏み込む。


 向こうはまだこちらに気づいていないのか移動する気配は無い。


 三人の後ろまで迫ると流石に気づいたのか三人共振り返るが、時既に遅かった。


「ふっ!」


 人数分剣を叩き込むと三人は昏倒する。


 昏倒する彼らのブレスレットを確認することもなく霞は来た道を引き返していく。次の狙いは後方の二人だ。


 だが、その前に相手をしなくてはいけない者達がいた。


「はあっ!」


 左側の生け垣から一人の少女が飛び出してくる。その後ろからは男が飛び出てくる。恐らく二段構えの連携ーー


「あまい」


「なにっ!?」


 ーーに見せかけた後方からの襲撃だ。


 霞は感じた気配と出てきた数が合わない事に瞬時に気づきその事に思い至った。剣を背中を庇うように後ろに出し斬撃を止める。


 止めた後思い切り踏み込み目の前の少女に上段切りを放つ。少女はまさか奇襲を防がれるとは思っていなかったらしく反応できずに霞の斬撃をもろに食らってしまい後方を走っていた男にぶつかって錐揉みながら飛んでいく。


 霞はくるりと振り向きまたも踏み込むと下段から上段への斬撃を奇襲した男にお見舞いする。


 男はその凄まじいまでの速さに反応できずにもろに食らってしまう。


「があっ!!」


 木に思い切り体を打ち付けるとそのまま動かなくなる。


 少女に巻き込まれた男はどうなったかなと思い振り返ると、男は少女と木にサンドイッチされて目を回していた。


 それを確認すると霞は後方にいた二人に向かって歩き始める。


 霞は前回、一年の頃のランキング戦では二位だった。霞は今年こそは一位を取ろうと思っている。


 前回のランキング戦で二位になったのは霞が決勝を辞退したからだ。霞はその日綴が熱を出してしまいその看病のため休んだのだ。綴はその時中学三年生だ。もう看病が必要な年ではない。なので綴は、霞に学校へ行くように言ったのだが霞は三年前の事があってから綴の体調不良などにかなりと言っていいほど敏感になっている。そのため霞は綴の看病の為決勝を辞退したのだ。


 霞が話していないから綴はその事を知らない。言えば綴は自分を責めてしまう。それを知っているから霞は言わなかった。霞自身その事をどうとも思っていないので言うことがなかったと言うのもある。霞には後二回チャンスがあるのだ。それを考えれば一回くらい二位に甘んじようではないか。そう思ったのだ。催しものとしては決勝が不戦勝という結果で少々拍子抜けだと思うがそんな事は知ったことではない。霞の大切は綴でランキング戦など高校を卒業するまでのイベントの一つでしかない。そんな事のために霞の大切を粗末にする気はない。


 だが霞のその考えを良しとしない者もいた。そう、例えばーー


「あら、こんな所にいたのね。柊霞」


 ーー彼女だ。


 霞は垣根を掻き分け出てきた少女ににっこりと微笑む。


「ええ、封鬼院ふうきいんさんも案外近くにいたのね」


 彼女の名前は封鬼院璃々(ふうきいん りり)。去年の霞の決勝の相手だ。


 勝ち気な目に緩くウェーブのかかった髪。美少女と言うより美人と賞されることの方が多いであろう彼女は、事あるごとに霞に突っかかってくる。その理由は至極簡単なもので、璃々は霞をライバル視している。そのため彼女は事あるごとに霞に突っかかってくるのだ。


 璃々はフンと高圧的な態度で鼻を鳴らすと霞に言う。


「柊霞。今年こそはキチンと決勝戦をやってくれるんでしょうね?」


 未だ予選の段階なのだが彼女の中では霞と自身が決勝に出ることは決定事項のようだ。霞は聞く人が聞けば激怒するであろう台詞に少々苦笑気味で答える。


「まだ予選だよ?ちょっと気が早いと思うわ」


 霞の窘める様な言葉に彼女はフンとつまらなそうに鼻を鳴らす。


「二年の中で突出した力を持つのは私とあなたの二人だけよ。それ以外は頭一個分も二個分も下よ」


「う~ん。そんな事無いと思うけど~」


 霞はそう言うが実際の所二人は二年の中で異様に突出した力を持っていた。霞自身は謙虚な所があるのでそう言っているのだが、これもやはり聞く人が聞けば激怒するであろう台詞だ。本人は全く気づいていないのがいかんともしがたいところである。


「まあいいわ!今年こそは逃げないでキチンとこの私と戦いなさい!柊霞!」


「逃げた訳じゃ無いのよ?弟が熱を出してしまったからその看病のために休んだのよ。去年も言ったでしょ?」


「弟が中学三年生じゃなかったら私もそれで納得してたわよ!」


 璃々の言い分はもっともなのだが、霞にそれは通用しない。霞にとって綴はいつまで経っても守りたい可愛い弟なのだ。それに、霞の綴への思いは他人が思っているほど簡単なものではない。


 璃々は勝ち気なめを呆れたような目に変えると言う。


「あなた、そろそろ弟離れした方がいいわよ?」


「ダメよ~あんな可愛い弟から離れるなんて考えられないわ」


「だからって甘やかせばいいと言うものじゃないのよ?中学三年、今年で高校一年でしょう?それなら、自分の事は自分でやらせないと」


 実際の所、綴はしっかりしていて自分のことは大抵自分で処理出来ているのだが、ダメな弟というイメージが着いてしまっている璃々には知る由もないことである。


「それでも熱を出せば心配にもなるわよ~」


「あなたの弟も子供ではないのだから少し放っておいた方がいいんじゃないの?くっつきすぎると『姉貴ウザイ』って言われるかもしれないわよ?」 


「封鬼院さんが弟さんにそう言われたの?」


「そうなのよ。私がせっかく心配してあげてるのにってそうじゃないわよ!!私のことはどうでも良いの!!今はあんたの話をしてるのよ!!」


 見事なノリ突っ込みをした璃々に心の中で拍手を送る霞。


 そんな事を知ってか知らずかプリプリ怒って霞に指を突きつける璃々。 


「いい?男の子って言うのは放っておけば勝手に強くなってくのよ!それに、何でもかんでも人に頼ってちゃ将来本当の意味で自立出来ないでしょう?いい?これからは適度な手助け以外はしちゃダメよ!あなたの弟さんのためにもならないんだから」


「ええ~」


「ええ~じゃない!あなたはもう本当にガミガミガミガミーーー」


 璃々の霞に対するお説教は予選終了の合図が鳴るまで続いた。


 霞と璃々はこの時点でもうすでに自分達が戦いの中に身を投じていると言うのをすっかり忘れているため周りに何の警戒もしていなかった。


 だが、それでも誰も二人に奇襲をかけなかったのは単に二人の実力が自分達とは段違いで複数で相手をしても負けは見えているからだった。


 この二人の映像は何故か戦闘をしている他の生徒をそっちのけで全校に流されており、クラスで見ていた綴は顔を真っ赤にして悶絶していた。後に今の会話を全校生徒に聞かれていたと知り二人共顔を真っ赤にする事になるとはお説教をするのと聞くのに夢中な二人は知る由もなかった。      

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