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新米退魔師と氷結の姫  作者: 槻白倫
第三章 順位戦編
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第三十七話 お披露目

今回はいつもより短いです

 氷霞が帰って一人なった綴。その顔は暗く先程、氷霞に向けた明るさは無い。ベッドの上で膝を抱くようにして座り膝に顎を乗せ虚空を見つめる。


 先程、氷霞の言った、妖魔に近くなっていると言う言葉が、綴の頭から離れなかった。


 自分が、得体の知れない者に変わろうとしていると言う事実に体が震える。


 震える体を両腕できつく抱きしめ膝に顔を埋める。


「怖いなぁ……」


 誰にとも無くぽつりと呟く。


 その声は誰に届くわけでもなくただ、空気を振動させやがて消えていく。


 綴は、氷霞の前では気丈に振る舞っていたが、本当は不安で仕方なかった。強い敵が現れるのは覚悟の上だった。強い敵が自分の道を塞ぐなら、自らも強くなり叩きのめせばいい。だが、妖魔に近づいていくこの体については何も予想できていなかった。氷霞も自分を人として見てくれる。だから、自分は人なんだと安心していた。でも、実際は力を解放したあの日から自分は妖魔に近い存在になっていた。


 綴の体を検査したという桐生はこの事を知っているのだろうか。知っていて隠した、あるいは知らなかったのか。


 もし、この体のことを皆が知ったらどうするのだろう?奇異の眼差しで見られるだろうか。それとも、嫌悪、忌避、恐怖。


 よくない憶測ばかりが綴の頭を埋め尽くす。


「怖いなぁ……」


 奥歯をギリッと噛みしめるともう一度、今度は自分が妖魔に近づくことにではなく、仲間の反応が怖くなり、そう呟くのであった。 


 だが、元親や夏彦の暖かい言葉を思い出すと、不思議と恐怖は薄れていく。その事を自覚し、自然と口元が綻ぶ。


 ゴロンとベッドの上に寝転ぶ。


「信じるって決めたのに、何弱気になってんだろうな…」


 右腕を天井に伸ばして手を開く。


 さっき氷霞に言ったとおりだ。例えこの身がもう人間では無くても、皆は僕が守ってみせる。


 改めてそう決意すると綴は手を下ろし、そっと、目を瞑った。


********************* 


 休み明けの月曜日。綴は今までとは違く女子用のジャージではなく、男子用の制服に身を包んでいた。


 鏡の前に立ちおかしい所がないかチェックする。と、鏡の中の自分と目が合う。その顔はお世辞にも健康的とは言えず血の気が引いた顔をしていた。


 自分の顔を見て苦笑する。結局、あの日からあまり寝付けていない。決意をしても、目を瞑る度に嫌な考えばかり過ぎってしまう。


「ああ、ダメだダメだ!」


 自分の頬をパシパシ叩いて気分を入れ替える。


「よし!」


 意気込み、玄関に向かう。玄関には既に二人が待っている。待たせたことを詫びて学校へ向かう。


 今日から男子用の制服なのでいつものような視線は感じることはないだろう。と、思っていたのだが、学校に近づいて生徒の数が増えていくにつれて視線の数も増えていく。


 な、何故だ…。


 綴は以前、夏彦に男に見えないと言われたことをすっかり忘れてそんな考えを抱くがそれを指摘する人はこの場にはいなかった。


 いつもより早く学校に到着した。教室に着くなり視線が集まる。その視線を極力気にしないようにしながら、自分の席に着く。


 皆驚愕の眼差しで見るのは止めて欲しい…。


 そして、しばらくするとホームルームが始まった。


 眠里も驚愕したような顔をするもホームルームを始める。


 そんなこんなで、直ぐに放課後になった。


「綴~一緒に帰ろうぜ~」


「ノータッチかよっ!!」


「うわっ!何だよいきなり」


「いや、何だよはこっちの台詞だよ!見ろ!」


 そう言うと綴は立ち上がりその場でクルリと一回転する。


「ほら!」


 そう言うと、元親は困惑した表情をすると自分も一回転する。


「ちっがぁーう!僕の服装を見て何か言うことがないかってことだよ!誰も元親がその場で回ることなんて望んじゃいないよ!」


 すると元親は、ようやく合点がいったと言う顔をする。


「似合ってるぜ、男装!」


「違うわ!」


「へぶっ!」


 綴に跳び蹴りを食らい吹っ飛ばされる元親。


「お前、そのボケはつまらないぞ?」


「わ、分かった!分かったから追い討ちをかけないでくれ!」


 ゆらりと近づく綴におののきながらも謝罪する元親。


「それで?感想は?」


「何で、男の服装に一々感想言わにゃならないんだ…」


「何か言ったか?」


「いえ、何も」


 胡座をかき元親は考えるようにうーんと唸ると言った。


「取りあえず、似合ってるぜ!」


「お前にまともな感想を求めた僕が悪かった…」


 はあ、と一息吐くと綴はカバンを掴み歩き始める。


「いつまでも座ってないで帰ろう。さあ、早く立つ」


「へいへい」


 因みに、元親に感想を求めたのは、余りにも他の人が綴の恰好にノータッチだったため、取りあえず感想が欲しかったからだ。


 一方、クラスメイトの心境と言えば、皆一様に「男装の麗人に見える」と口走りそうになっていたので報復が怖く話しかけること出来ないのであったが、綴がそれを知る由もなかった。   

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