第二十二話 勘違い
しばらくお喋り(決して会話では無い)をしているとチャイムが鳴った。チャイムが鳴ると緋日は自分の席に戻る。少しすると先生が教室に入ってくる。
「よし、それじゃあ授業を始めるぞ~。と言っても、今日はその五人と親睦を深める時間にする。それじゃあ、悪いが五人とも前に出てきてくれ」
そう言われ前にでる。
ううっ、こう言うの苦手なんだよな…。
五人が前に出終わると先生が言う。
「それじゃ、何か質問のある奴、っとおその前にまだ名乗ってなかったな。私の名前は眠里爽だよろしく」
随分独特な名前だな眠りそうって…。親御さん絶対に狙ってるだろ。
「何か失礼なこと考えなかったか?」
ギロリと綴を睨む爽。
ひいっ、怖い!怖いですよ!そんなに睨むとしわになっちゃいますよ!
「やっぱり失礼なこと考えてるな…」
エスパーか!何でわかるんだよ!
「いえ、特に何も考えてませんが」
あ、ヤバい。声ちょっと震えた。
「…まあいい。では、質問のある奴!」
「はい!」
と、すぐに手を挙げる誰だか分からない男子生徒。無駄に元気ありそうな奴だ。
「えっと、柊さんに質問!何でジャージなの?」
やっぱり、この質問か…。絶対言われると思った。だって変だしな。
「ええっと、発注ミスで服が違うのが届いちゃったので今はジャージを着ています」
「なるほど。似合ってますよ!ジャージ!」
殺すぞこいつ。客観的に見ても男の僕に女物が似合ってると思ってるのか?嫌みか、戦争か?
そう考えていると目がきつくなってしまうが全く動じた様子のない男子生徒。質問はそれで終わりなのかすぐに席に着いてしまう。
「それじゃあ、次」
「は~い」
気怠げに手を挙げる女子生徒。
なんか、分かりづらいな。あだ名付けよう、あだ名。この子はたれ目でお下げなので垂れ目お下げちゃん。で、さっきの奴は、馬鹿元気。うん、良いと思う。
「皆さんは知り合いなんですか?」
元親や氷霞のしたことと、休み時間の間にお喋りをしていたことでだいたい感づいているとは思うが、一応聞かずにはいられないのだろう。
誰が言うのかと皆をちらっと見ると皆と目が合う。どうやら僕に言えと言っているようだ。
「あ~、僕は全員と友人だけど、隣の氷霞は僕としか面識は無いよ」
「なるほど~。あい、わかりま~した」
そう言うと席に着く。すると、間髪入れずに馬鹿元気がまたもや手を挙げながら席を立つ。
お前はろくな事言わないんだからいい子に座ってろ!
「はいはい!その、さっきから柊さんが言ってる僕ってのはキャラづくりか何かですか?」
もの凄いこと訊くなこいつ。こいつもしかしなくてもKYか?それとも一人称が僕って言うのが単に珍しいだけか?まあ、どちらにしろ失礼な奴だ。
少しむっとしながら答える。
「キャラづくりじゃないです。素でこうなんです」
「なるほど、ボクっ子って奴ですね!」
さっきから何が言いたいんだこいつは。
隣からぷっという笑いをこらえる声が聞こえたので見てみると、四人とも笑いをこらえていた。
何かおかしな事でもあったか?いや、あったな。馬鹿元気がさっきからおかしな事言ってる。でも、笑うようなことか?
頭にハテナマークを浮かべている間に馬鹿元気が座る。
「それじゃあ、次っと言いたいところだが…ふんっ!」
「いたっ」
爽が急に、手に持っていたチョークを投げた。投げた先には、ホームルームからずっと寝っぱなしの男子生徒がいた。
なんだか聞き覚えがある声だな。
「親睦を深める時間だと言っただろう。寝てるんじゃない、真田」
ん?真田?
呼ばれた生徒は伏せていた頭をむくりと上げる。
「すいません、せんせ…」
謝っている最中に綴と目が合い言葉を止める。綴と目が合うと大きく目を見開く。そして机に置いてあった眼鏡をかけさらに見てくる。その時点で綴も思い出した。
「夏彦!?」
「綴!?」
そう、一昨日デパートで会ったナンパ少年団の一人、真田夏彦であった。
まさか、退魔師だったとは驚きである。
「なんだ、知り合いだったのか?」
「ええ、先日デパートで…」
元親を見やると元親も驚いた顔をしていた。夏彦が綴の視線の先を追い元親を見る。
「あ、元親も」
「おう、夏彦。二日ぶり」
なんという偶然だろうか。綴としては転校先に知り合いがいると心強いのでこれは幸運である。
夏彦はどうしたものかという顔をすると控えめに綴に訊いてくる。
「あ~っと、やっぱりお前そっち系?」
「ん?なにが?」
「いや、その格好」
「ああ、これは、制服がまだ届いてないから仕方なくな」
「だけど、よりによって何で女子用のなんだよ」
「発注ミスだ」
「ちょ、ちょっとまって!」
急に馬鹿元気が会話に割り込んでくる。
む、割り込んでくるとは無礼な奴だな。
「あ、あの柊さん」
「なんだ」
「その服って発注ミスなの?」
「そうだけど」
「それじゃあ、もしかして…柊さんって…男?」
「何を今更。正真正銘、どこからどう見ても男だ」
シーンと静まり返る教室。
え?なになんかおかしな事言った?
爽を見て助けを求めようにも爽もきょとんとしている。
数秒の静寂の後、馬鹿元気が口を開く。
「う」
「う?」
「「「「嘘だろ(でしょ)おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
クラスのほぼ全員が叫ぶ。爽までも叫んでいた。かすかに吹き出す音が聞こえてそちらを見てみると前にでている四人+緋日が笑っていた。夏彦はクラスの皆が急に叫び始めたので驚いている。
何でこうなっているのか分からずおどおどしていると前に回り込んできた爽に両肩をガシッと掴まれる。
「お、お前男だったのか!?」
「は、はい。そうですけど…書類とか届いてないんですか?」
「いや、届いてはいるんだが…」
届いているのなら分かるはずなのだが。それなのに分からなかったという事は…。
「見てないんですか?」
「いや、見たぞ!…見たんだが…」
だったら何故口ごもるのだろうか?理由が分からずジッと見つめていると、目をそらされる。だが、意を決したように口を開く。
「すまん!写真だけで女と判断してた!」
「は!?」
確か、書類に貼った写真は制服を着て撮ったはずだ。それなのに女に間違われるなんて…。かなり傷つく…。
しょぼーんとしてしまう綴に爽が慌てて何かを言おうとしたが何も出なかったらしく口を閉じる。
「…とりあえず質問とかある人いる?」
場を取り持つためか元親がクラスメートに聞く。クラスメートも空気を軽くするためにそれにのって質問をする。あえて綴に触れないようにしながら進めていく。
「あの、先生。手をそろそろ…」
「あ、ああ!すまん」
今までずっと肩に手を置かれっぱなしである事に気づき言うと、爽は慌てて手を離すと、綴の斜め後ろに戻る。
自分はそんなに女顔なのか?いや、そんなはずはない。ない、はずだ…。
綴がそう考えている内にもどんどん質問するクラスメイト。綴は授業が終わるまでずっとそのことを考えていた。
この小説の主人公は超女顔です
タイトルを変えるかもしれません




