第二十話 姉弟お着替えタイム
家につくどっと疲れがでた。久しぶりに人が多いところに行ったからかもしれない。
リビングに入ると姉さんと緋日はソファーに座って映画を見ていた。どうやらゾンビ映画を見ているらしい。
「この数なら全部倒せそう」
「そうね~百や二百ならねぇ~」
百や二百倒せちゃうんですか凄いですね。僕なら氷の壁をつくって籠城だな。
「ただいま、二人とも」
「たっだいま~」
とりあえず二人にただいまを言う。
映画に夢中だったのか今まで気づいていなかったらしい。
「あ、お帰り綴く…」
「お帰りつづ…」
振り向いた二人は返事をする途中で固まってしまう。
「どうかした?」
「グ、グレードアップしちょる…」
緋日、しゃべり方変だぞ。
何を驚いてるのか考えていると、二人が見ているのが自分の服だということに気づき、思い当たる。
「え?…あ」
そうだ忘れてた。今は元親に買って貰った服だったのだ。
「これは、その…」
「いいのよ、綴くん」
神妙な顔で綴に近づき両肩に手を置く姉さん。
「私、妹も欲しかったから、安心して綴ちゃん」
「ちゃんづけやめて。違うから。これは元親の悪ふざけだから」
「なんだ、そうなの?つまんないの~」
そう言うとソファーに戻る姉さん。
「まったく…ん?どうした、元親?」
元親を見ると視線は交互に綴と霞を見ている。
「ん?ああ、いや、綴に似合うんなら霞さんも似合うんじゃないかと思ってな」
「あ、確かに」
賛同する緋日に照れたように言う姉さん。
「そんなこと無いわよ~緋日ちゃんの方が似合うんじゃない?」
「霞さんの方が似合うと思うけどな」
「じゃあ、もう着てみれば?」
そういって服を脱ぎ出す綴に焦って背中を向ける元親。
「こら、綴ちゃん!女の子なんだから、男の子のいる部屋で脱いじゃいけません!」
「そうよ、綴!一回自分の部屋に戻りなさい!」
「僕男だから!て言うか、おい元親!笑いこらえて背中を向けてるんじゃない!」
そういいながらサクサク服を脱ぐ綴。それを畳んでソファーの上に置くといったん部屋に戻りジャージに着替える。
やはり部屋着は落ち着くな~。
一階に戻るとリビングの扉の前で元親が突っ立ってた。多分、中で姉さんが着替えてるのだろう。
「お、綴着替え終わったか」
「ああ」
二人ともしばらく無言でいたが、唐突に元親が口を開く。
「なあ」
「なんだよ」
「覗かね?」
「一生光を拝めなくなるかもな」
なんて、バカなことを話している内に着替え終わったみたいだ。緋日が扉を開けちょいちょいと手招きをする。
「入んなさいな」
「おう」
部屋に入るとそこには着替え終わった姉さんが立っていた。ナースコスに。
は?ナースコス?
「僕が渡した服じゃないじゃんか!!」
「だがこれはこれでいい!」
ツッコミをする綴と鼻血を垂らしながら喜びを露わにする元親。
「何のための着替えなんだよ!それにどこから持ってきたんだよ!」
「綴、そういいながらも写真を撮ってるじゃない」
それはしょうがない、これを撮らない人がいるならそいつは特殊性癖持ちに違いない。僕はあいにく特殊性癖持ちじゃないから写真を撮るんだ。
姉さんもノリノリにポーズをとってくれるからいいっちゃいいんだろう。
元親は鼻を押さえながら倒れてる。こいつはもう再起不能か。さすがは姉さんだ。
いろんなポーズを撮り終わると今度はちゃんと着替えるらしいので元親を引きずり外に出る。
体をピクピクと痙攣させながら元親は起き上がる。
「なあ、綴」
真剣味を帯びた顔で元親が綴を見る。
「なんだよ」
「覗かないか?」
「お前、ナースコスでそれなのに姉さんの下着姿見たら死ぬだろう」
「それはそれで悔いはない」
そういいながら扉を開けようとドアノブに手をかけようとするも、手をかける前に扉が開く。
「もういいわ…なにしてるの?」
「いや、その、ね?」
扉を開けた緋日と目が合う元親。緋日は冷たい目で元親を見ている。
こちらに被害が来ても嫌なので真実を話そう。
「緋日そいつ覗き」
「ギルティ」
迷わず判決を下す緋日は元親に目潰しをした。
「綴ぃぃぃぃぃぃぃいい!!裏切ったなあああああぁぁぁぁぁぁあ!!」
「僕はお前と手を組んだ覚えはない」
両目を押さえてのたうち回る元親はほおっておき中に入る。
中にはいると着替え終わった姉さんが立っていた。今度はさっき綴が渡した服だった。
「綴くん、何でそんなにがっかりしてるの?」
「いや、別に…」
なんだ、メイド服とかじゃないのか…。
さっきのこともあるので期待していた分落ち込みが激しい。だがしかし、姉さんの格好は似合っていたので、写真を撮る。
「シスコンにブラコンめ…」
そう言いながらも写真を撮る緋日。お前も大概だぞ?
廊下でのたうち回る元親、ポーズをとる姉さん、写真を撮る僕と緋日。うん、今日も平和だ。
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撮影会も終わり、元親は帰って行った。夕飯も食べ終わって一息ついた頃美来からメールが来た。メールを開き中身を確認する。
『良子の手術成功したよ!今日明日はリハビリで病院に泊まるみたい。メールしてあげて!』
とのことだった。
「よしっ!」
嬉しさの余りに思わず小さくガッツポーズをする綴。すぐさま良子におめでとう
メールをお送り、美来にもありがとうと返信をする。
「そうだ、姉さんと緋日にも知らせないと」
誰かいるかなと思いリビングに降りてみると丁度二人ともいたので話をすると、二人とも早速メールを送った。
病院内では携帯の電源を落としているので多分返信は遅れるだろう。
その後お風呂に入りベッドに横になっていると、良子の手術が成功した安堵感と今日の疲れに負けて眠りについてしまった。
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また夢を見た。今度はもう一人の女の人に初めからモザイクはかかっていない。見たことのある顔。でも誰だか思い出せない。氷霞のような懐かしさを感じることができる。
誰なんだ?あなたはいったい、誰なんだ?
夢の中の人に問いかけても返事は帰ってこない。そんな当たり前のことはもちろん分かっている。分かっているが問わずに入られなかった。
彼女が何かを喋ろうと口を開いたところで意識は覚醒した。
目を開けると、見慣れた天井。綴の部屋だ。
「そう言えば、疲れて寝ちゃったんだっけ…」
時計を確認すると八時過ぎだった。欠伸をしながら伸びをする。体を起こしてテーブルに置いてある携帯を手に取ると、良子からメールが来ていた。内容を確認する。
『ありがとうございます。土日はリハビリですが、月曜日の転入には間に合うと思います。ご心配をおかけしました。』
良子らしい丁寧な文だった。無理はしないでと返信し、朝ご飯を食べるために下に降りる。
リビングにはいつもの通り二人ともいた。挨拶をしてご飯を食べる。二人はもう食べたらしくテーブルには綴の分だけしかなかった。黙々と食べ続ける綴に霞が思い出したように言った。
「そうだ、綴くん。明日の準備してる?」
明日?はて、何のことやら?
顔にでていたらしく姉さんは若干呆れたような顔をして言う。
「転入の準備は済ませたの?」
「ああ、それね。教科書とかは今日届くみたいだからまだだよ」
「そう、ならいいのだけど。何か入り用のものがあったら買いに行かなきゃいけな
いかもしれないから、早めに言ってね?」
「りょうかーい」
食べ終わったので食器を流しに持って行く。お腹を休めるべくソファーに座りぼーっとしていると玄関のチャイムが鳴った。多分綴の荷物だろう。
玄関に向かいドアを開けると宅配便のお兄さんが立っていた。段ボール箱を2つ持っていて重そうだった。サインをして荷物を受け取りリビングに向かう。
「姉さ~ん、荷物届いた~」
「それじゃあ確認しちゃいましょ」
食器洗いをいったんやめてこちらに来る姉さん。綴は段ボール箱を床に降ろす。ソファーに座ってニュースを見ていた緋日も寄ってくる。
綴はガムテープをはがし段ボール箱を開く。中には教科書の類が入っていた。すべて外にだし同じ学年の緋日に不備がないかを確認してもらう。
「足りないものとかは無いみたいね」
どうやら不備は無いようなので次の段ボール箱に移る。先ほど同様ガムテープをはがし段ボール箱を開く。中にはジャージが入っていた。多分制服も中に入っているだろう。案の定ジャージを取り出すと下からは制服が出てきた。
「一応試着してみたら?」
「うん、そうする」
とりあえずジャージから着てみた。
「少し大きいけど問題ないよ。これから背が伸びるかもだしちょうどいい」
続いて制服に着替えてみる。ワイシャツを着てスカートを履きブレザーを着る。
よし、完璧だ。
「って、女子用じゃないか!!」
着替え終わってから気づく綴。女性陣の顔を見やると口元を手で押さえてプルプルと小さくふるえていた。どうやら、気づいてて言わなかったらしい。
「何で、女子の制服なんだよ!て言うか気づいててんなら教えてよ!」
あわてて脱いでジャージに着替える。
着替え終わると。緋日から手紙を渡される。
「何これ?」
「段ボールの底に入ってた」
宛名は桐生さんだった。開いて読んでみる。
『制服は気に入って貰えたかな?それを着て勉学に励んでくれたまえ 桐生』
手紙にはそれだけが書いてあった。
「あの人バッカじゃないの!?嫌がらせにも程があるよ!それより、この手紙段ボールの底にあったって言った?」
「言った」
「じゃあ、荷物これで全部かよ!え?男用の制服無いの!?何考えてんの桐生さん!」
なんてことしてくれるんだあの人は!あの人のせいで今朝食べた分のカロリー全部消費するほどツッコミ入れてるよ。
どうするんだよと頭を抱えていると、緋日がなにやら段ボールの底をガサゴソといじくり始めた。
「…何やってんの?」
「綴、これ二重底」
「へ?」
そう言うと緋日は段ボールの底から段ボール板を取り出した。その中には男用の制服が入っていた。
「よかったぁ~」
ふにゃふにゃと床に座り込む綴。女性用の制服を指差して綴は言う。
「本当にこれで学校行くのかとか考えちゃったよ…」
「それはそれでいいんじゃない?」
「良くないよ!」
とりあえずこれで危機は去った。
「あ、試着してみなきゃ」
そう言いまた試着をしてみる。女子のブレザーは白と赤の二色、男子のブレザーは黒に青の二色になっているみたいだ。知り合いの退魔師学校の生徒は姉と緋日など女性だけだったので知らなかった。そのせいで最初は女子用と気づかずに着てしまったが、今度は大丈夫だ。なぜならブレザーの色は黒と青。完全に男性用だからだ。
「よし、今度こそ完璧だ」
青と黒のブレザーにスカート。うん、完璧じゃない。
「だから何でスカートなんだよ!」
すぐさま着替える綴。二人は先ほど同様に口元を押さえてプルプルふるえている。
「は、はい、綴。手紙」
笑いをこらえながら先ほど同様手紙を渡してくる緋日。緋日の手から手紙をひったくると乱暴に開ける。
『先ほどのは冗談だ、こちらが本物の君の制服だ。気に入って貰えたかな?女子用の制服は俺からのプレゼントだと思ってくれて構わないよ。まあ冗談はさておき、頑張ってくれたまえ。応援しているよ 桐生』
「……」
この文面から察するに、多分…。
「発注ミスだ…」
「へ?」
手紙を二人に渡して目を通して貰う。二人は読み終わると言った。
「発注ミスね」
「…」
「…」
「…」
三人は沈黙する。やがて、綴が口を開く。
「どうすんのさ!?明日だよ!?これ着て行けって言うの!?」
「落ち着いて綴くん!まずは桐生さんに電話してみよう!ね?」
「!?そ、そうだね!了解!」
そう言うと綴は二階に行き携帯を持ってきて桐生に電話をかけた。
コールが何回か続くと桐生は電話にでた。
『もしもし、羽生だけど。どうした?』
「どうしたもこうしたも無いですよ!送られてきた制服二つとも女子用なんですけど!?」
『え?そんなわけ…』
一瞬の沈黙。
『悪い、発注ミスだ』
「どうするんですか明日!」
『すまん、本当にすまん!こっちから学校側には連絡入れとくから、女子用か
ジャージで行ってくれ!』
「女子用なんて嫌ですよ!ジャージで行きます!」
『…あっ』
「今度は何ですか…?」
とてつもなく嫌な予感がする。
『綴、ジャージの色は何色だ?』
綴は恐る恐るジャージの色を確認する。色は白だ。
まさか…。
「し、白です…」
『すまん発注ミスだ!!それ女子用!!』
「なにしてるんですかぁ!!」
どうするんだ、どうするんだ、どうするんだ!!全部女子用って完全に詰んでるだろこれ!?
『隊長、騒いでないで職務に集中してください』
『あ、まずい、京ちゃんが来た!悪いが綴、こっちもいろいろと立て込んでるんだそっちで何とかしてくれ!男用は今週中には送るから!じゃ!』
「え!?ちょっと!」
言うが早いか桐生はすぐに電話を切ってしまった。携帯を持ったまま立ちすくむ綴。二人をみるて困ったように笑う。
「は、ははっ。ど、どうしよ?」
最近バトル書いてない気がします。
誤字脱字等有りましたらご指摘下さい。




