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嵐来たる

 風下側、つまり上流側に張ったトラップが一気に鳴りだしていた。

 対岸を見ると鬱蒼と茂った森の木々がモサモサ揺れている。鳥や虫達が大量に飛び立っていた。


「バルドルいったん戻ろ!ルシア達を町へ逃がす!」


 現時点で送信できる相手に一斉に【速報】として伝書鳩を送る。

=======

【速報】

上流側の森から正体不明の一群襲来、魔物か。

弓矢集団とは交戦中。橋は死守する。

非戦闘員は町へ退避せよ!

=======

【お願い】

ロッカ!レーニア!

レインボー篝火の保守を誰かに頼んで!

=======


 背中のぞくぞくがとまらない。

 魔力の多寡を測るすべは知らないが、この負のオーラが闇の部類の魔力だというなら、射手の集団より森からきた何かの方が怖い相手だろうことは間違いなかった。

 パニックや空騒ぎを心配している余裕はない。


「バルドル!聞こえてる?」

 橋の途中までダッシュしてしまった所で、振り返って叫ぶ。爆音で聞こえてないかと思ったが、ちゃんとバルドルも追い付いてきてきていた。

「あ!ネズミちゃん、あっち!森が変だよ!」

 裸眼のバルドルにも見えるところまで、木々を押し倒しながら何かの塊が押し寄せていた。


 ーーーカンカンカンカン!

 また警鐘が鳴る音が聴こえる、気がした。


 土石流のように、巨大ナマコ的なものが押し寄せていた。

 なにあれ?


 警鐘ついでにアニメ音楽みたいなものも脳内に流れる。

 カンカンカンカン!パターンあお!しとです!!みたいな。

 首をふる。

 だめだ。幻聴にはまだ早い。


=======

【速報】

巨大なナマコ状の魔物大量襲来。

動きは遅いが、1列目の宿泊棟近くまで来ている。

=======


「少年っ!のど飴あげる!私はネズミ!よろしくね!

 弱い人を町に逃がすから、できれば通路を守って!お願い!」

 一瞬立ち止まって、欄干にいた少年達にのど飴を半粒投げ渡す。

「ふむのど飴か美味すぎずちょうどいい。了解尽力するオレの名はバンビ」

「速報も流すからよろしく!」

 ぱくっと飴を口で受け取った彼が子供らしくない返事と共に頷くのを確かめて、私とバルドルは宿舎へ駆け戻った。


 ドアが川側にある宿泊棟の側には、火矢に射抜かれ火だるまになった人達が転がっていた。ドアを開けた途端やられたようだ。

 火魔法の威力は苛烈で、ほとんど暴れた跡もなく息絶えている。

 すまない。私の警鐘聴いて飛び出したんだよね。ほんとにすまない。・・・でもトリアージ的には死人は後回しだ。後でちゃんと埋葬するから、今は放置させてくれ。

 心で十字架を切り、通り抜ける。


=======

【速報】

複数名が火矢で死亡。一撃で致命傷か。

十分注意して退避せよ!

=======

【案内】

今から集団避難班を送り出す。

合流希望者は中央雑魚寝棟へ集まれ!

=======


 射手集団はバーサーカー兎達の相手でいっぱいいっぱいなのか、今は矢はまばらにしか飛んでこない。

「矢が減ってるうちに、町まで逃げてください!森から敵が来ます!」

 腰が抜けて座っている人の手を引っ張って立たせ、四方に向けて肉声でも叫ぶだけ叫んで、両手に負傷者を掴んだまま雑魚寝部屋の建物へひとっとびした。


「皆!無事だった?!」

「ネズミ様!」

 建物の入口に皆揃っていた。

「私たち魔物に詳しくないから、悪いけど魔物対策に何人かは残ってほしいの!でも他の人は矢がやんでるうちに町へ逃げて!」

「了解しました」

「ルシア、残るメンバー選定して!」


「で、エンヴィー!!大変なの!頼むから起きてよ〜!」

 眠り姫エンヴィーは神官達にキラキラ神輿に載せられたまま玄関に来ていた。

 肩を掴んでガタガタ揺らしてみたが、爆睡していて起きてくれない。


「隷属を一気に作られたので、魔力が尽きてらっしゃるのかもしれません」

 とラーキが言い、他の神官達も同意する。

「確かにエンヴィー様から漏れる魔力が減っていますね」

 痛い戦力減だが仕方ない。


 ラーキ達神官は全員守備魔法の使い手だと言うので、メンバーの守りは彼らに頼むことにする。

「じゃあラーキ達エンヴィーと私の仲間を守って。てかエンヴィー起きそうになったら起こしてね!」

「わかりました」


 皆にはエンヴィー御輿と共に一旦町へ逃げてもらい、ロッカやレーニア達と協力して結界篝火の保守をしてもらうように頼んだ。

 火矢集団に対してはお互いステルスして触らぬ神になんとやらでいいと思うと伝える。中途半端な戦力で戦いに加わるよりは、バーサーカー兎に任せておいた方が安心だ。

 火矢連中にしたって、魔物にレインボー篝火を越えられたら困るはずなのだから、そこでいざこざしてる暇はないと思う。


 私についてきてもらうのはラスタ・グリーンとレッドベリー、動物商人の娘アザラ、元軍医の娘ミーエ、料理屋の娘ターニャになった。

 戦場においては異色な感じのターニャだが、ジビエ料理のために狩りに出ていたというのと、茶髪メンバー唯一の火魔法の使い手だからだという。


「じゃ、無事を祈る!」

「ネズミ様もどうかご無事で!」

 さっきの【案内】を受けて集まった数十人の勇者候補にルシアを避難班長だと紹介し、私たちと避難班は二手に別れて建物をあとにした。


 私たちはまず屋根に上り、屋根づたいに上流側へ移動した。


「見えた」


 一番上流側の長屋と二番目の長屋の間で、100人程度の勇者候補と同じく100匹以上の巨大ナマコ達の陣地争いが勃発していた。

 ナマコのサイズは狼サイズ位から牛サイズ位までで、青、赤、緑の3色のものがぎゅうぎゅうとひしめいている。

 剣やこん棒など近距離武器でナマコ魔物を突っついたり切りかかったりしている勇者候補達。

 一見善戦しているようだが、敵がぷにぷにしているものだから刃が刺さってもそれがダメージを与えているのかよくわからない。押し合いへし合い、レスリングじみた戦いが100対行われている。こう着状態といえた。


=======

【速報】

ナマコ状魔物100匹以上と勇者候補100名程度、

上流側の長屋2列目手前で混戦中。弱点などまだ不明。

前線での死者はまだなし。

=======

【お願い】

弱点発見した者は共有せよ!

=======


 カラカラッ!カラカラ!カラカラカラッ!


 勇者候補達と取っ組み合っているナマコ魔物達の後ろに、私が作ったトラップのマーカーに興味を示し奪い合うように鳴らし続けている奴らも20~30匹いる。

 つまり総勢120~30匹くらいか。


 前線の勇者候補達とは少し離れて、3列めの家屋に半ばかくれながら弓矢やスリングショットのような遠距離武器を構えている人たちもちらほら見えた。


 今目の前の争いを見ている限り、一個体がとんでもなく強いって感じはない。それでも、うすら恐ろしさは消えなかった。


 それにしても100人か。

「ふむ、出てきてほしくないときはいっぱい出てくるわけね」

 透明射手相手には20人以下しか出てこなかったのになぁ、と思うと微妙な気持ちだ。まぁ、ナマコを長屋2列目手前で食い止めてくれているのは本当にありがたいけれど。

「まあまあネズミちゃん、見るからにスライム~って感じのが出てきたら、思わずたくさんやっつけてレベル上げしなきゃ!って思うのがゲーマー魂じゃん!」


 え?

「スライム?あれってスライムなの?」

「RPGにしてはグロいけど、エロゲー系では典型的なスライムじゃん?」

 エロゲースライム?

 弟のゲームを後ろで見てただけの私には、スライムと言ったら青い栗型したあいつ、というイメージしかない。

 あんなうねうねして巨大でグロテスクなのがスライムかと言われると正直ハテナ?である。


 というわけで現地民に聞くことにした。屋根上作戦会議だ。

「ねえ皆、あの生き物ってスライムっていうの?」

 皆を振り返ると、いつも元気なレッドベリーが白い顔を一層白くして呟いた。


「グール・・・」


「ん?グールって?」

 レッドベリーは視線を落として黙ってしまった。

「・・・・・・」


 レッドベリーに代わってアザラが答える。

「似たものはありますが、こんな大きいのは聞いた事がないので確信がもてないですが」

「おーけーどうぞ!」

「屍食鬼(グール)や○○イーターと呼ばれるタイプの死体の掃除屋魔物ではないかと思います。野生の獣が死ぬとどこからか彼らが匂いを嗅ぎ付けてやってきて食べて自然に還します。指先サイズのものなら人里離れれば普通にいますし、戦場では戦士の遺体にも群がるという話です」

 なるほど。ハイエナとかウジとかみたいな存在か。


 ラスタ・グリーンが合いの手をいれる。

「とろっとしたの、ねちねちしたの、固めのがいる」

 アザラが後を引き取る。

「とろっとしたのは青のアクアイーターですね。水辺に棲み、餌を溶かして水の栄養へ還します。

 ねとっとしてて緑のは森に棲むフォレストイーター。動物の死体を取り込み苗床にして木々を育てます。

 固めで赤いのは餌を燃料に炎を生み出すフレイムイーターではないかと思いますが、定説では砂漠にいる種だということになっていて、この辺りでの目撃例は多分史上初です」

 なんだか、聞いただけだと害のないモノのようだが、カラカラカラ狂ったようにマーカーを鳴らす彼らの様子を見ると、穏やかな性格とは思えない。


 黙り込んでしまったレッドベリーを片手で抱き寄せつつ、アザラに質問する。

「なるほど。じゃあ、弱点とか攻略法知ってたら教えて」

「弱点は・・・正直わかりません。普段は見つけたら踏みつければ終わりなサイズなので、調べなくてもやっつけられるので。動きも遅いですし。

 でも未確認ですが、色属性的には緑は炎、赤は水、青は乾燥に弱いはずです」

「そっか。他に何か気づいたことないかな?」


「ん。生きてるモノ襲わないのにみんなで来たの、変」

「そうなんですよね。サイズだけじゃなくて、そこも不自然です」

「どういうこと?」

「それぞれ水辺、森、砂漠と棲み分けしているはずなので、3種一緒にいることは例がないと思います。

 それに、一緒になってわざわざ移動してきたのも珍しいです。死体はさっきまではなかったはずですし」

「あいつら知能高いのかな?意図的に勇者候補を襲ってるってことはありえる?」

「普通はあり得ません。ここまで大きな個体だとありえるのかもしれませんが。。」

「なら、逃げても追ってこないかな?」


 そのとき、バルドルが前線の左端を指差して叫んだ。

「みんな見てよ!あそこ!」


 【速報】を聞いて来たらしく、前線に一気に十数人が加わっていた。ナマコ魔獣1体につき数人がかりになったため、その一帯だけ人間側が圧していた。

 が、一気に切り傷を増やされた赤のナマコが断末魔らしき声で吠え巨大な火を噴いた。勢い込んで剣で刺していた数人が炎に巻き込まれる。今度は人間側の悲鳴があがった。

「ギャアアアアッ!!」


 青のナマコは10カ所以上刺された辺りで表面張力が切れたかのように破裂して、体液が周りに散った。周辺の大勢が叫び声を上げてのたうち回った。

「いてえっ!!溶けるッ!」

 ぬめぬめした青い体液を大量にかぶった男は服は一瞬で溶け、表皮もずる向けになってしまった。

 うう、まちがいなくこのナマコは食べられない。


 大きな傷を負った緑のナマコはその傷を追わせた勇者候補をそのぱっくり開いた傷口からペロリと飲み込み、一気に体中から芽吹き始めた。

 悲惨な光景を側で見てしまった者達の口から悲鳴が漏れる。

「ヒィイイイ!」

「スライムがメガンテってありえるかよ!?」

「オレもスライムに殺されるぅう!!」


=======

【速報】

スライムではなく屍食鬼(グール)の巨大種のようだ!

青は溶かす!赤は炎!緑には取り込まれる!

自爆に気をつけて!

=======


 一部の人間が重傷を負ったため、集中力が切れ敵におされる者が出始めた。

 一方で、距離を取って様子を見ていた中距離武器所有者の一部が参戦し始める。


「ミーエ!重傷者だけでも応急処置してくれる?!」

「了解しました」

「アザラとラスタはミーエについてて!ラスタ防げる?」

「ん。3人なら余裕」

「了解です!」

 3人は屋根から降りていった。


=======

【速報】

重傷者は下がって治療を!

白い救護旗が目印!

=======


「こうなりゃ勘だ!次々やってみよ!

 あいつらナメクジっぽいから塩が効きそう!

 ターニャそう言うの喚び出せる?」

「塩こしょうは得意分野です!」

「バルドル、何人までなら一緒に飛べる?」

「女の子なら何人でも!」

「真・面・目・に答えろ」

「両手と背中で3人が限度」


「じゃ、ターニャは青いのに塩メインで調味料かけてみて!乾燥しそうなやつね!」

「はい!」

「レッドベリーは」

 緑に火攻撃を試して、と言いかけるが、レッドベリーの様子がまだおかしいのでやめる。

「私に着いてきて」


 ターニャに向き直る。

「ターニャ、緑のに火魔法も試して見てくれる?威力なくてもいいんで、効くかだけ試して」

「了解です!」

「バルドル、ターニャおんぶして飛んで弱点調査して!やれそうならそのまま撃退してもいいよ!んで、重傷で歩けない人見つけたら両手でミーエんとこまで運んできて!」

「えぇ〜オレ男運ぶのやだ」

 べし!

「しのごの言わずに行け!!」

「はいぃ〜☆=」


 というわけで。

============

【暴風注意報!】

============


 こうして私たちは3グループに分かれた。


「じゃあレッドベリーおいで!」

「はい」

 私がレッドベリーにもう一度しっかりマインドクリアしてから前に目を向けると、さっそくバルドル達が大活躍を始めていた。


 塩吹雪に吹かれて、風が直撃した青のナマコから次々にしぼんでカサカサになっていく。

 ビンゴ!大ダメージだ。


=======

【速報】

青は乾燥に弱い。塩が効く!

=======

【お願い】

ターニャ:いいよ!次は火を試して!

バルドル:GJ続けて!

=======


 早速皆へ速報する横で、ターニャが出したフライパンサイズの炎をバルドルの風がうまく拡大し、なんとか1匹の緑ナマコを燃やすのに成功した。一気に燃やせば自爆する余地がないようだ。

 火力弱めであれだけやれるなら、火が弱点といっていいだろう。


=======

【速報】

緑は炎に弱い!

自爆注意!距離とって弱点を狙え!

=======

【お願い】

ターニャ&バル:

マーベラス(すばらしい)!塩まきプリーズ!

=======


「オオオオオオ!」

「炎ならまかせろ!」

「やれっ!燃やせ!!」

 エプロン姿で華奢な少女ターニャの勇姿を見て勢いづいた勇者候補達は一気呵成に畳み掛けた。

 さすが現代地球育ちというか、炎が使える者は多そうだ。


 緑ナマコに剣士や戦士がダメージを与えた後とびずざり、炎使いが火球などを投げてとどめを刺す。知らない者同士、そこここで即席のいいコンビネーションがうまれていた。


 上空では調子に乗ったバルドルとターニャがせっせと塩を降らせ、超局地的雪景色みたいになっている。


 屋根の上から橋の向こうを確認するとバンビやバーサーカー兎達が今も活躍しており、ルシア達はうまい事向こう岸に着けたようだと分かる。

「よし、今のうちだ、行こ!」


 人間達が一気におしている間に、1列目の宿舎を見回ることにした。

 レッドベリーをおんぶして、混乱の前線をホップステップジャンプで飛び越え1列目の長屋の左端の屋根に飛び移った。

 右端は川際なので火矢にやられて既に燃え落ちている。生き残っている人がいるとしたら左側の数軒だ。

 ナマコの突進のためドアは壊れて内側に折れ、使い物にならない。屋根から窓を覗いていった。


 まず最初の部屋で、なんとまだ寝ていたでかい男を発見した。

 バキャッ!メキメキッ!

「寝てたら死ぬよ!起きろ!」

 屋根を蹴り割って起こし、上にのぼらせる。

「ふえ?あんた誰?・・・何が起ってんだ?」

「いいから救助活動手伝って!隣行くよ」

 説明の時間はない。


 次の部屋ではもう緑が芽吹いていた。

「見ないで!」

 レッドベリーの目を塞いだ横から無防備に覗き込んだ三年寝太郎氏はぎょっとして屋根から落ちそうになった。


 寝太郎の衿を掴んだまま行ったその次の部屋では、部屋の一部が崩れ折れた材に挟まれた男を発見。レッドベリーと寝太郎に救助を任せて私は急いで次に行く。

 隣の部屋からミシミシと音が聞こえたからだ。


 結果から言えば音は生存者ではなくナマコの出す音だった。

 隣の部屋。一つ向こうの部屋まで焼け落ちている。この部屋に青ナマコが数匹密集していたため、彼らの水分で延焼がここで止まったようだった。


 焼けこげた壁に熊でも通れそうな穴が空いており、ベッドには両腕を縛り付けられたまま青ナマコ達に食われている女性がいた。

 上半身は青ナマコに完全に覆われ、だいぶ溶かされたせいですでに一部白骨化しているのが青いジェル状のナマコの体内から透けて見える。

 足は天井から吊るされていたため無事だった。いや、無事とは言えない。


 ・・・どうしてなの。

 

 トリアージ的には死人は後回しだ。

 それじゃなくても青ナマコと私じゃ相性悪い。


 分かっているけど、無理だった。


 頭が煮える。

「くっそぉおおおお!!!死ね!!」

 スタンガンを最大出力にして青ナマコに突撃した。


 バチンッ!!バリバリバリバリッ!!


 致命傷は与えられないが一瞬撃退はできた。

 バリバリッ!! ばきっ! ドシャアッ!!

 電気ショックで数秒動けなくなったナマコを、最大出力の蹴りで小屋から蹴り出す。同じ事を数回繰り返して彼女を青いぬちゃぬちゃから解放した。自分の足にも痛みが走るがどうでもよかった。


 剥き出しの下肢には陵辱の後があった。現地民をナンパしたか何かして連れてきたのだろうか。それとも。


 ・・・なんで。どうして!


 こんな移動がゆっくりの敵相手なら、縛られてさえなきゃ逃げられただろうのに。それとも一酸化炭素中毒か。

 それとも。胸くそ野郎の奴、縛って首締めセックスでもしてたのかもしれない。


 ーーーそいつが死ねばいい!!!


 気づかないうちに土砂降りが降っていた。

 ナマコへの怒りならちょうど良かったのに、これは女性を放置して逃げた同郷の胸くそ野郎への怒りだった。


 置き場のない怒りに、全く弱まる事ない大雨。

 バルドルの風と共に、嵐の様相を作っていた。


 せめてあいつらだけでも葬ってやる!!


 壁の穴から外へ飛び出した私に、マーカーに群がってカラカラ鳴らしていた30匹が一気に狙いを定めて飛びかかってきた。

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