参戦っ!みなぎるぁあ!
ビュッ! ーーーダン!
ボウッ! パチパチパチ・・・
矢が建物に当たる音から遅れて、何かが燃える音も聴こえた。
時代劇でよく見るあれ、火矢か。
本物見るのは初めてだ。
見るとすでに宿泊棟の幾つかに小さな火が付いていた。
「敵襲!バルドル位置代わって」
敵の姿は見えないが、角度的に川の向こう岸からの攻撃だった。小声で声をかけ、川側のバルドルと位置を代わる。
ビュッ! ーーーダン!
ビュッ! ーーダン!
ビュッ! ーダン!
ビュッ! ダダン!
矢の音は途切れず聴こえ、音の感じからすると敵は相当人数いる。
共同宿舎は川に沿って幅200〜300m程度あるが、飛んでくる火矢の角度を見るに、その向こう岸の端から端まで敵がいるくらいのイメージだ。100人以上いるとみていいだろう。
なのに、サーチアイ全開にしても射手達は見えなかった。ステルス術者もいるからなのか。
城下町側からきたということは、魔物に町がやられたって訳じゃなければ、黒扉か第4勢力か、とにかく魔物じゃなくて人間だろうな。
瞬時に判断し女子雑魚寝部屋諸姉と城下町のロッカに往復型伝書鳩を飛ばした。
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各員起床、臨戦態勢をとれ。
川向こう岸から火矢を使う敵100名以上。
状況次第では退避せよ。
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町のロッカへ
お家の辺りは大丈夫?
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エンヴィーごめん起きて助けてm(__)m
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すぐにルシアから了解返事と、ロッカから「こちらは平穏なり」と返信がある。とりあえず敵のターゲットは勇者候補で決定だろうな。
しかしエンヴィーは熟睡しているようだ。伝書鳩自体が着信拒否されたイメージだった。
仕方なく顔見知りのエリート神官ラーキに「エンヴィーを護り場合によっては退避せよ」と伝書鳩を送る。
他の勇者候補にも伝えたいが、パニック起こして寝起きで外に出てきたらいい矢の的になってしまう。
火事さえ何とかすれば、自ら気づいて討って出られるレベルの人以外には下手に動かず部屋で寝ててもらう方がいいのかも?と思い、雨を降らせようとするが、うまくいかない。
目の前でどんどん火が大きくなっていく状況で、慣れない魔法はコントロールできなかった。
くそうままよ!
となれば四の五のいってられない。密室での一酸化炭素中毒防止の決め手は初動速度だ。
「バルドル!敵に居場所ばれるから頭下げといて!」
パニック発生覚悟で警鐘を鳴らした。
カンカンカンカン! カンカンカンカン!
警鐘を鳴らすと同時に炎矢が見張り台に集中的に降り注ぐ。
カンカンカンカン! カンカンカンカン!
目まぐるしく脳内で行動シミュレーションしつつも、警鐘は鳴らし続ける。
ストーキングスキル使って橋渡って射手探して各個撃破はどうかな?でも相手が多いならむざむざ近寄るのは危険かな。遠距離攻撃の勇者候補を募って・・・なんて、皆素直に出てきてくれるかな?などなど。
しかし見張り台にも火がついた今、ここは一酸化炭素中毒の心配はないとはいえ焼け落ちる前に離脱しなくては。ってもこんな矢の雨をかわして下に降りられるだろうか。
狼相手にはいけるって思ったけど、基本私もバルドルも近距離攻撃型だもん!弓矢相手にどうしろっちゅうのよ!
毒づきたい気分だが、見張り台の支柱が燃えてミシミシいっている。そろそろ離脱しなくてはならない。
「もーいちかばちか離脱するよっ!バルドル、気合いいれてっ!!」
この騒ぎの中でも現実味がないのかキョトンとしているバルドルの首をぐりっとこちらに向けて、ちゅっと勢いよく唇を押し付けた。
あ、えーと、ほっぺにだが。
「ね、ネズミちゃんっ!?う、あ、☆み☆な☆ぎ☆る☆ぅあああ!!!!!」
ガッと目を見開いていきなり竜巻を起こしたバルドルにガバッと抱きつかれると、奴はそのままロケットのように飛び出した。
え、なにこれ。
ビシビシ顔に風が当たってあれっと思う間に、見下ろせば遥か下に所々火の手が上がる宿舎が見えるくらい上空にいた。
ズームすると見張り台上部は切り刻まれたかのようにバラバラになっていた。
妙な爽快感。
「えーもうバルドル飛べるなら早く言ってよ!」
「オレだって今知ったよぉ!」
「あーもう私たち自分が何できるかさえ分かってないって言うのに大量に敵来るし、どうする?」
「ちゅーされたもん!飛べるんだもん!今なら何でもできる気がするっ!」
「今はキミののーてんきさが嬉しいよ」
計算外だが見張り台と矢の雨からいったん離脱できた。さて、次はどうするか。
バルドルは風を操って巧い事上空でスーパーマン飛行している。私は姫抱っこから逃れ大剣と共に背中に馬乗りになっていた。
「ね、バルドルさっき無意識に見張り台、風で壊したでしょ。
やる気になればカマイタチっぽく矢を切り払えたりするんじゃない?」
「今のオレにふかのーはないぜっ!」
橋の渡り口だけでも蹴散らせれば、非戦闘員だけでも逃がせる。
「じゃ、バルドル切り込み隊長よろしくね!蹴散らしてちょーだいっ!」
「うぃ!」
「でも調子にのりすぎないでよ!ちょっとでもヤバければ撤退!
撤退命令したら一瞬で逃げること!守らないと後でひどいからね、分かった?!」
「ツンデレきゅん!おっけーベイビィ☆」
「行くよ!」
緑のマントがバサバサ鋭い風切音を出す。私たちはミサイルのようなスピードで橋の向こう側に突撃した。
地上に近づくと襲い来る矢の嵐。バルドルはそれを加速度数倍の竜巻で凪ぎ払った。
やるじゃんっ!
ドガシャア!!
すごい音を立てて着地すると、地面に渦巻き状にヒビが入った。
「ギャアッ!」
ステルス魔法を維持できなくなったのか、爆風に煽られた敵数人がヒビの入った地面に転がったのが見える。
「バルドル!攻撃は最大の防御っ!続けて!」
私はバルドルから跳んで離れた。
一番近くに倒れた敵の腕を踏み折り、胸ぐらを掴んで立たせた。シュビッと後ずさりして堤防に背を預け、敵の首にペンを突きつける。
「目的はなんだ!」
問いかけた瞬間左右両方から火矢が飛び、目の前の敵を突き刺した。
バシュッ!ボゥッ!!
魔法のかかった火なのか、鎧を着た敵が一気に燃え上がった。
危うく跳んで離れる。
次に近い敵に駆け寄ろうとすると、今度は上から飛んできた矢が倒れ込んでいる敵の頭を撃ち抜いた。
「グフッ」
返り血が飛んだ。
・・・うわ、キテるな。
今の上からの射手は、あそこか?
川沿いに疎らに建つ四角い建物群の一つに見当をつけて、シュビビッと外壁を駆け上がる。
屋上の敵はステルスを掛けていなかった。駆け上がった勢いで左手から弓を蹴り落とし、2歩目のヒールで肩を踏みぬいて右腕を屋上に縫い付けた。
ゴキィッ!
派手に肩関節が外れた。
「目的とリーダーを言え!」
そのまま襟を締め上げて強く問う。今度は邪魔は入らせない。
「グブッ!」
しかし男は目の前で舌を噛んで絶命した。
ガクリと落ちて傾いた頭。口と鼻から流れ出る鮮血には毒らしき暗紫色が混じっていた。
おーけー、こりゃ無理だ。
敵に口を割るぐらいなら味方も殺すし自害もする。そんな相手に話し合い解決は無理そうだ。こりゃ戦うしかない。
途端、トトッと階段を上がってくる僅かな音を感じた。見ればはね上げ戸がある。
モグラ叩きよろしく、戸が開くタイミングに合わせて見えない敵をめがけ蹴りを放つ。
ボキィッ!!
何かが折れる鈍い音とともにステルス魔法が解け、現れた男ははね上げ戸を塞ぐようにゆっくり倒れ込んだ。口から泡を吹き、自殺する力も残っていないようだった。
聞き耳を立てれば下階から多数の足音が聴こえる。気づかれたのだ。
倒れた2人の懐をチェックするが、特に気になるものはない。
見えない敵が大勢だと分が悪い。
次の敵が来る前に気配を消して隣の建物との間に身を投げた。
ボルダリングの要領で隣り合う建物の小さい窓穴をつたって途中まで降りた辺りで、バルドルの風攻撃とは違う音がすることに気づいた。
路地から伺うと、警鐘を聞いてから用意して出てきたのか、思い思いの武装をした十数人の勇者候補たちが我先にと橋を渡りながら攻撃を始めていた。
つまりは中〜長距離攻撃のできる者達ということだし、なかなか勢いがある。これならいけるかも。助かる!
橋の中程、よじよじと欄干に上った小柄な少年がおもむろに口から何かを取り出し、ピンっと指先で弾いた。
「キャンディーボムっ!」
キャンディーボム(?)は先を走る勇者候補達の頭上を飛び越え、見えない敵がいると思われる辺りに着弾する。
ちゅどーーーん!!!
派手な音と共に中規模の爆発が起こり、爆心地から5、6人の敵が飛ばされ地面に打ち付けられた。
キノコ雲はなぜか毒々しいピンク。
「キャンディーボムっ!」
「お次は鼻くそボムっ!」
欄干の上から悠々と攻撃を放つ度、色とりどりのキノコ雲の下に敵がばたばたと倒れていく。
あの子、美女と雑魚寝部屋で寝ていた男の子だ。やるじゃん!
一方、不思議な動きでびょんびょん跳ねて矢を避けながら何人かを追い抜いた妖艶な美女は、急に立ち止まるとミニフレアスカートの裾をつまんでくるんっ♪とその場でスピンした。
「へ〜んしんっ♪」
回り終わるとあ〜ら不思議、ピンクのキャミソールの美女がピンクのビキニを着た巨大な熊に早変わり!!
なんだあれっ?!
あれ、熊にしては耳長いかも?・・・でかいけどまさか、兎?いやすんごい牙と爪生えてるし、まさかなぁ・・・というかこの世界あんなスキルもありなのか?!
内心びっくりする間にも、バキャッ!ドキャッ!ビシャッ!グチャアッ!と巨獣による残虐で一方的な狩りが始まっていた。
リーチがとんでもないのでターゲットが見えてなかろうとあまり関係ない。
適当にビシバシ振り回される長いかぎ爪が空を斬る度に何もないところから鮮血や内臓が飛び散り、遅れてステルス魔法が解けどてっ腹に風穴が空いた敵の本体が現れビシャアと地面に崩れ落ちる。もはやエンドレス殺戮。
兎(?)にもたまに矢が当たっているが、鋼鉄のような毛皮に弾かれかすり傷さえ負わせていない。
バーサーカー兎・・・まじヤバい。
ほんと助かるけど、中の人は一体どういう性格の女性なんだろう。
ま、私も人の事言えないけど。
今や橋から下流側に離れたところで敵を蹴散らしているバルドル。
橋の側では美女&少年ペアが目覚ましい動きをしており、他の十数人も爆撃などでステルス魔法が保てなくなった敵を相手に善戦をしている。他のメンバーにとっても敵の姿さえ見えていれば比較的楽勝なようだ。
腕に自信があるメンバーが出てきてくれたということだろう。
余裕があれば、私みたいなサーチスキル持ちと戦闘タイプとが2人組で戦えば効率よかったんだろうけど・・・何しろ今回は全体構成のことまで手が回らない。
でもこれなら適当な戦法のままでもなんとかいけそうだ。
ただ人数が少ない分時間がかかると不利だ。
できれば追加でもっと討ってでてきてくれないかな。
あと、こちらに死者や重傷が出ないうちに、ラスタ・グリーンかレッドベリーに回復スキル持ちを連れて来てもらえないかな。
ルシア達に相談の伝書鳩を送って、自分は隠密したまま一旦バルドルの側へ戻ろうとしたときだった。
カラン・・・カラ!
聞き耳がトラップのマーカーが鳴る音を捉えた。
カラ カラ・・・!・・・カラ・・・カラ!カラ・・・カラカラ!
「まさか」
トラップには約5mごとに通ると特殊な音が鳴るマーカーを設置した。それが20個以上、全て一気に鳴り出したのだ。しかも、ゆっくりと。
ぞっとした。
音は、ゆっくり進むものがたくさん、一気に押し寄せてくることを知らせていた。
脈絡なく、鬱蒼と茂った森が蠢きながら近づいてくるグロテスクなイメージが脳裏をよぎる。
ズリッ・・・バリッ!ズリッ・・・
良すぎる耳がとうとう重いものが地面を這う音を拾った。木が折れる音も。
「撤退っ!何か来た!ルシアッ!みんな逃げてっ!!」
これ、ヤバい。間違いなく、トップニュース差し替えだ。




