独占取材!からの、女王様エンヴィー様のお手並み拝見♪
気を取り直してさっそく取材すべく広間に戻った。
バルドルとのやり取り一連を大笑いして見ていたエンヴィーは誘わないうちから着いてきた。
「あらけっこう有望株いるじゃない?」
早足で歩く後ろで、エンヴィーはすれ違っていく神官達を見定めては魅惑的な笑みを浮かべていた。
射すくめられた彼らはドキュンとなって立ちすくんだり腰砕けになったりしている。
「そお?
では、私はまず大神官を追うんで、エンヴィーさんは思う存分有望株捕まえてください。これ、聞けたら聞いてほしい事メモです。できればパーティーとか誘ってもらってくださいね」
「ってちょっとネズミちゃん、あんなイケメン達素通りしてハゲ爺狙いなの?ストイックね〜」
「ええ。そっちの方はエンヴィープロにお任せしますんで。存分に顔繋ぎしてきてください」
仕事モードなので自然と丁寧語だ。
「おっけ。仕事熱心ね♪」
「ところで・・・」
エンヴィーが身を寄せてくる。
耳元でささやかれた。
「さっきのあの子達、奴隷?」
「えっ?」
背筋が冷たくなる。
「あ、怯えないで。アタシ【奴隷使い】のスキルもあったの。
見てわかっちゃったから確かめただけ〜」
そんなスキルもあるんだ。
エンヴィーの場合、多分元の世界でも特殊な魅力を振りまいてたんだろうから、取り巻きや崇拝者がいたんだろうな。
日本で人買いしてたとは思えない。
「いいな〜奴隷いいな〜!あたしも奴隷ほしいな〜♪」
「指のないむさ苦しい男達でよかったらあげれるかも」
黒扉マフィアの脳筋メンバーを町の地下室に捕まえてある話をする。
神殿の隷属担当者と懇意(?)になれれば、そのまま横流ししてもらえるかもしれない。
「ええ〜!カワイイ系?カッコいい系?」
「えー?あえて言えばワイルド系?むしろそのまんまチンピラ系というか」
「アリかも♪おっけー!担当者探してみるわ〜」
先ほどの大神官の説明によると、元の世界で熟練していたスキル、潜在的なスキルはこちらの世界で増幅する。
そんな中【奴隷使い】スキルがあったというエンヴィーを信頼するのは、なんだか普通に考えるとおかしい。だが、彼女は信用できると思えた。私の事を下に見ていないのも分かるし、性嗜好が変態だとしても、性根は真っ当に見える(言葉として変な気がするが)。
エンヴィーならあいつらを女王様的スパルタで真っ当な奴隷(?)に躾けてくれそうだ。
広間に戻りルシア達に目配せすると、一直線に大神官の元に向かった。
大神官は太った身体を両脇から支えられながら舞台から袖に下がろうとしていた。
ーーーちょうどいいタイミング!独占取材だ!競合他社いないのかここは!?
一瞬いつもの調子で喜んでしまったが、競合他社なんているわけない。
「すいません!お疲れの所すいませんが、10分程度ですみますので!取材させてもらえませんか?!」
一瞬で舞台袖に駆け寄って進路を塞ぐ。ひとり囲み取材だ。
「大神官様!本日はありがとうございました!感動しました!
【歴史記録者】としてぜひとも本日から記録を付けたいと考えています。
名誉ある大神官様のことももちろん記録しておきたいので、お名前を頂けませんか?」
「おお?おやおや・・・儂の名前を聞きたいかね」
疲れた表情は一転、ニヤニヤして言われた。この程度のリップサービスで笑顔になってもらえるなら単純でありがたい。こちらも営業笑顔を浮かべる。
「はい!ぜひフルネームでおねがいします!」
さらにニヤニヤが顔中に広がる。好色な笑みだ。
「おお、女勇者も女よの。でももう妻がいるのでね〜。表では教えられんよ」
は?妻と何が関係が?
あ、もしかしてフルネームは結婚相手にしか教えないとかなのかな?
私、妻にしろって言い寄ったことになるのかしら?
・・・ていうか影でなら教えてくれるってのか。愛人にならいいよって意味か?
キモいし釈然としない〜。
「ではせめて呼び名だけでも。記録にただ大神官様としか書けないと、どの大神官様かを子々孫々に伝えられません」
「ふふふそなたもしつこいのお。金の髪で美しい大神官とでも書いておけばいいじゃろうに」
「ははあ、なるほど」
むー。口が堅いな。警戒されているのかな。
金の髪が禿げておりビール腹がめだつ大神官とでも書いておこうか。「ビール腹大神官」とか勝手にあだ名をつけちゃうぞ!
次は国の名前や神殿の名前を聞いたが、魔物が現れるようになってからここ数十年、正式名称を使っていないという。
「外交では国名が必要ですよね?名無しの国としてどうやりとりするのですか?」
「【一番広い国】【一番広い国の神殿】でよいのじゃ」
なんて曖昧な。
「身分証明はどうするのですか?」
「魔力の少ない者には必要じゃろうが、我ら高貴な身分に他人に名のる名は要らぬのじゃよ。
魔力のある同士ならば魔力で相手を認識できる。我々は下賎な民と違い名前は使わないのじゃ」
感じ悪い選民思考だ。
単に強い相手に名を知られて操られるのがやなんでしょ?
自分たちだけ保身に走りやがって、話しても埒があかないなり。
「足が疲れたので、そろそろ儂は〜」
逃げようとしたビール腹大神官の退路を笑顔で塞いだ。
「では、椅子のある所でお話を!!」
むしろそっちがそういうつもりなら別室の方がありがたい。
伝書鳩で『幹部候補っぽいイケメンいるよー』とエンヴィーを呼び寄せ、控え室に通してもらった。
先ほどから大神官を脇から支えている神官2人は、神経質そうな細面とぎらりとしたエリートっぽいイケメンだ。
ビール腹大神官の狸おやじっぷりには正攻法では難しいので、エンヴィーの魅力で男どもをたらし込んでもらう方がむしろ現実的じゃないかと思ったのだ。
キラッキラ美少女のエンヴィーが【魅了】スキル全開の笑顔で近寄ってきたときの、大神官の顔と言ったらもう。
幹部候補達も相好を崩していた。
・・・よし、いけそう。
エンヴィーの笑顔のおかげか、その後は多少口も緩み、まずはこの国が王政であることが分かった。
現王には王子と王女が大量にいて、ある年齢以上の王子達はおのおの軍、土木、経済などを司る役目を与えられているという。
自分たちの事は口を閉ざす割に王室のことは結構ぺらぺら話す大神官。王室を崇める振りをしつつも、口調からは王室の権力を虎視眈々と狙っている感じも受ける。いざとなれば操れる(と思っている)私達が王室側を嗅ぎ回るのは賛成の立場なんだね。
神殿と王室は対立とまではいかないが微妙な関係なんだなー。
前期・前々期の勇者候補達、騎士団、国軍については口が重かった。
先日の魔王軍との大戦で大量の戦死者が出た、の一点張りだ。
戦死したにしても、勇者候補にはどんなジョブがいたか、どこの出身か、いつ頃来て何年いたかなど知りたかったのだが、またも「詳細は全く情報がない」の一点張り。
ならばせめて今の戦況はと聞いても、山3つ向こうに戦線があり、大戦の直後のためか今は魔王軍も大人しく、戦線維持は残った国軍でなんとかしている。森や川沿いに現れたはぐれ魔物との小競り合いはあっても、戦線を超えない限りは組織的な戦闘にはならない、という程度しか知らないという。
地理的情報も曖昧なので全体像が見えないが、後は自分の目で見るか王室に聞けってことかな。
進展ない話を続けるのは得策ではない。
話を変えて、【マッパー】【歴史記録者】として、まずは壁新聞、地図、ゆくゆくは歴史書を作りたいと許可を求めた。
「壁新聞とはどんなものじゃ?」
「広場や店など人の集まる場所に、ニュース、地域情報、暮らしの知識などを記した物を掲示します。
よろしければ、国や神殿からの御触を市民に周知する役割もいたします」
「お触れを勇者自らするというのか?」
「駄目ですか?私は元々新聞を作る仕事をしています。
勇者候補向けに限って言えば、どこの地域でどんな敵がでる、どの敵にはこんな弱点があるなどという情報を共有し、戦死者を減らし効率を上昇できます。
大敵を倒したニュースを載せれば市民の士気高揚にもなり、ひいては神殿、国のためにもなりますよ」
大神官をノセるために彼ら目線で耳障りのいい言葉だけ伝える。
一旦許可を取って軌道に乗せちゃえばこっちのものだ。勇者候補と市民の目線に路線変更していけばいい。
新聞業界の苦い過去。戦時中の新聞は政治の駒であり、敗戦色濃かろうがなんだろうが勝ち戦の振りをして民の士気高揚に努めさせられた。
その教訓を忘れないようにか、社の労働組合の部屋には「現代の新聞は平和のためのニュースを伝える使命を持つことを忘れてはいけない」と赤茶けた古い掲示がかかっていた。同じ過ちは繰り返すまい。
「女勇者よ。そう言うが、勇者候補は仲間でもあるが、ライバルなのだぞ?
おぬしはせっかく今一番有力な位置におる。
優遇される権利を棒に振る事になるかもしれぬとわかっているのか?」
「競い合って技を向上させるのは大切な事です。
ですが、戦闘人員が減った今、競争よりも人命、安全が重要です。
いたずらに競争心を煽っては烏合の衆が各個撃破されて終わる危険性があります。
人の命は個人にとっては唯一の宝、国にとっても有限の資源です。
願わくば国、神殿、勇者候補、市民全部が連携してお互いの命を守り合うことが、人的資源の節約にもなり、結局は国と神殿のためになると考えます」
「ほう、今回の女勇者どのは理想論者なのだな」
確かに、言うだけなら簡単だ。なんとでも言え。
「・・・よかろう、まず試作を作ってみい。
儂が見て気に入ったら、公共の場所へ掲示の件、王室に声をかけてやろう。
今後は、儂直接でなく先ほどのリーケを通じて連絡を取るように」
「わかりました」
よし!食いついてくれた。
連絡手段確保。とりあえずは公明党の若手議員の顔パスを手に入れたってとこね。
「大神官様ぁ、難しいお話終わったぁ?」
てなあたりで、うずうずしていた様子のエンヴィーがするんと大神官にすり寄った。
「装備品見てきたけど、エンヴィー、鎧とかばっかじゃつまんないよぉ。
キレイなドレス着てお城でパーティーに出たいな〜。
そしたら大神官様達にもキレイって思ってもらえるかもだしぃ?」
大神官の腕に胸を押し付けながらも、両脇の若い方にもチラッと意味ありげに視線を一瞬ずつ合わせる。「仕方なくお偉いさんにすり寄ってるけど、本当に興味があるのはアナタよ♪」という風な目線。巧い。
「おぬし、さっきレベルMAXを幾つもはじき出していたエンヴィーちゃんじゃな!女勇者と仲良くなったのかい?」
「うん♪ネズミちゃんと一緒に冒険者やるの」
「えらいのう。褒美にドレスを仕立てさせてやろうかの」
大神官の声音が変わっている。やに下がりすぎてて【魅了】が効いてるんだか素なんだかわからないな。
私が長い事問いつめてて彼もダレてきてたから、いいリフレッシュになったみたいだ。ナイスエンヴィー。
「近くで見るとますますかわいいのう・・・エンヴィーちゃん。連れて帰りたくなっちゃうのぅ」
「ええ〜?嬉しいけどエンヴィーお洋服ダサイから今日はダメぇ〜。
いつかキレイなドレス着たときにまた会えるといいなぁ、大神官様♪」
「あぁんもうエンヴィーちゃん!
すぐにでも君のために女勇者パーティーお披露目パーティーを開こうじゃないか!」
「王様にも会えるぅ?」
「もちろん儂から話通しておくのじゃよ〜」
おお!素晴らしい!
ものの5分で王宮への取材切符を手に入れた!女勇者パーティーお披露目パーティーとか舌噛みそうなパーティーになっちゃったけど、すごい!やったー!
飴と鞭作戦、成功。ふらりと公明党本部に来たら、なぜか一足飛びに首相公邸でのパーティーにアポ取れちゃったみたいなレベルの快挙だわ!
普段ならデスクに「独自ダネのチャンスゲットです!」と電話をかけたくなるような気分だ。が、ここにきてから圏外のままだ。繋がる訳もない。
そういえば・・・。
私の身体どうなってるんだろう?倒れて死んじゃったのかな。
夢にしては長過ぎる。
今更だが、また気になり始めた。
夢の中の人物かもしれない人に問いかけるのも不毛だが、とりあえず機嫌の良くなった大神官に尋ねてみる。
気づいてしまったか・・・というような顔をしつつも一応答えてくれた。
「確かにそなたたちの世界で、体は意識を失っておる。
儀式終了後すぐ、魔法の使い手達は戦線防衛のため各地へ向かわせた。
界を渡らせる程の召還魔法の使い手は現在都にはおらん」
「ええー?じゃぁアタシ達帰れないのぉ?」
「話は簡単じゃ。
元々勇者候補達はそれぞれ神のご加護を受けておるため、ここの民よりスキル向上速度が速い。
そなた達自身が、魂を行き来させる召還魔法を使いこなせるまでスキルをあげればよい。
それが無理なら、魔王さえ倒せば安定した召還儀式も行えよう」
・・・ど・こ・が・話は簡単だ!
こんの狸親父が!
それでまた召還魔法習うにはお金がかかるっていうんでしょ。
つまりは呼び寄せるだけ呼び寄せて、後のケアは適当なんだ。どういう人事部だよ!
もーどこの世界でもうさんくさいやつは同じ顔してるもんだね!!
私のムッと来た顔を見て、大神官も苦虫をかみつぶしたような顔に変わった。
「エンヴィーちゃんはかわいいのに女勇者は扱いにくいのう」
あら失礼。こちらの世界には従順な女性ばかりみたいですもんね!
睨み合いにエンヴィーが割って入ってくれた。
「大神官様ぁ。でもエンヴィーもメイク用品とか持ってきてないから困るぅ。ここの世界のお金もないしぃ。召還魔法ってすぐ出来ないのぉ?」
「うーん、召還魔法にも色々あるからの。魂に界を渡らせるのは最上級なんじゃよ。小さい物を呼び寄せるだけなら比較的短期の講習でできるようになるはずじゃ」
最初は水鏡などを使って声のみの通信、そのうち小物の呼び出しが出来るようになり、最終的に自分で行き来ができるようになるという。
レベルによって範囲も近距離、中距離、遠距離、そして異世界へと広がるそうだ。
エンヴィーと2人掛かりで飴と鞭式会話誘導をして、勇者パーティー特典として召還魔法の初級講習を無料で受けさせてもらうことになった。
やったね!持つべきものは頭のいいお色気同期だ。
「では、リーケに宿舎まで送らせよう」
生真面目細面に大神官をまかせ、エリート風の方と一緒に廊下に出た途端。
「ねぇ神官さまぁ。宿舎のベッドが足りなくなったらしいの。アタシを神官様のとこに泊めてくださる?」
エンヴィーはイケメン幹部候補にスルッと近寄ってしなだれかかった。
「え?いや・・・神殿内個人房は部外者立ち入り禁止なのだ」
といいつつ、目は泳いでいるエリート風神官。
むむ、さすがエリート、少しは防御できてるな。と感心した途端に神官の顔が真っ赤になってうろたえだした。
あれれ一転、陥落早いなぁと思って見ていると、いつの間にかエンヴィーの膝が神官の膝を割って急所をぐりぐりしていた。
エンヴィーさん仕事がお速い!
神官服は裾が長いので中がどうなってるのか分からないが、分からなくていい。エンタメ記事の有名人の情事なら表情筋一つ動かさずに熟読できるけど、流石に身内の情事は恥ずかしいよ。
廊下に待機していたリーケは自分がターゲットではないとはいえフェロモン攻撃を近くで食らったようで、一瞬で前屈みになっていた。
存分に捕まえてとは言いましたけどね。
うわぁ目をそらしたい。でもそらせない。
目の前でメロドラマ?のような、美形2人によるいちゃいちゃが展開される。もう手が胸元に差し込まれていた。
「こらっき、君!人前、で、け、けしからん!」
一気に容赦ないフェロモンが放出される。
「やん♪そんなこと言わないでぇ。
エンヴィーお腹すいちゃったの。
大神官様とはやだけど、アナタならいいかなぁ」
ふぅ♪とエンヴィーは甘い吐息をエリート神官の耳にはきかけた。
リーケは完全に床に沈没した。
エリート神官は震えながらも何とか耐えている!!
「こんな飴なんかじゃお腹いっぱいにならないよぉ。ねぇ、エンヴィーのお腹いっぱいにしてぇ?」
と、どこからともなく取り出したチュッパチャップスをぺろりと見せつけるように舐めると、早業で神官の口にねじ込んだ。
「う、あ・・!」
神官の顔が一気に上気し、目が虚ろになる。
「ねぇ、エンヴィーに名前、教えて?」
「は、あ、、 ラーキ、です。。」
「ラーキちゃ〜ん。アタシのお願い聞いてくれるよね?」
「は、い、、」
「ラーキのお部屋でエンヴィーにたっぷり食べさせてくれるの?」
「部屋に、、どうぞ、、、」
概要は説明したが、眷属と隷属にする方法は伝えていない。
エンヴィー、方法知らずに眷属にしたよ!
しかも、流れで隷属にする勢いだよ!
「あ、あの飴、普通のチュッパなの?」
「んふ。わかった?媚薬入りよん。
アタシはあれくらいじゃ効かないけどね♪」
「さすが!エンヴィー様の本気、魅せてもらいました」
「やん♪まだ3割よ。
じゃ、後よろしくね~♪アタシ泊まるから。また明日ねん♪」
すごい。天性の【奴隷使い】だ。
敵じゃなくてよかった。
女王様、かなり手抜きの三割であれくらいらしいです。
本気が怖い・・・|||
てなわけで、五月中はなんとか水曜連載続けます!




