P.S.I don't love you, and TO DO lists.
女勇者心得その壱。・・・あやしきは締め上げよ。
「キラキラキラキラと、一体何のまね?」
「ぐえふ!」
軽く衿を絞めて、挙動不審の理由を説明させた。
咳き込みつつ説明するヤツいわく、バルドルのジョブは【剣士】と【遊び人】がメインで少し【魔法使い】だったそうだ。
「ごほごほ!んだから【遊び人】の魅了スキルを試したんだけど、ごほ!ネズミちゃん効かなくてさ〜ごほ!」
「なんで私に試すのよ」
「ごほ!だって初の女勇者を魅了できたらオレすごーいって感じじゃん?げほごほ」
「へえ〜?なるほどね」
すっごーい!!バルドル様すご〜い!!感じ悪い方向ですご〜い!
気持ち悪いことすんのやめてよ。不愉快!
まず相手見てやれ。魅了されて喜ぶ相手かどうかを!!
文句はつきない。
印象はもともと(サーチアイと生理的な感覚で)良くなかったのが、(論理的にも)最低レベルへと猛烈ダウンした。もー、ほんとこいつ苦手。
「ちなみに魅了できたらどうなんの」
「そりゃあハーレム第1号だよ!」
・・・・・・。
「エンヴィー、この人切りたいです」
ぼそ。つい本音が漏れた。
「げっ!そこまで怒るなよ!
なんだよ普通に魅了スキルとか手に入れたら強気な女の子に使いたくなるのは人のサガってもんだろ?!」
「お前ごときが人の性を語るな!」
穏便に、縁を切りたい、という意味で言ったのに、両手で防御の構えをとるバルドル。無駄に構えられると逆に殺気が生じる。
あら~そんなに攻撃されたいならご期待に応じて【呪いの股間蹴り】してあげてもよろしいのよ?ってなもんですが、そこまですると量刑的に重すぎるとは思うからやめてあげるけども。
「てゆーか【遊び人】判定されるようなヤツのくせに、神の名であるバルドルなんつー大それたハンドルネーム使うなっつの!こののーたりん顔だけ男が!!」
手加減してちょっとした毒舌で勘弁してあげたのだが・・・。
クリティカル!!!
おどろくべき豆腐メンタル!
あろうことかバルドルはこの程度の毒舌で精神に100のダメージを受けた!
しょぼんとして濡れた子犬の目をしている!
女勇者の追撃!
「うわ、男の媚びる目って私苦手ッ!」
「ふえ~」
バルドルはなんと本当に泣き出した!
女勇者は引いている!
女勇者は引いている!
「あら~・・・弱いものいじめしちゃったかしら。ごめんね。
でも最近の若い者は折れやすくて困るわ」
泣かれたので後味悪くてうざい。今後もかかわり合いになるのはまじ勘弁だ。P.S. I don't love you!
「えー、というようなモノローグの所ごめんね、ネズミちゃん。
正直ここまでバルドルが嫌われるとはさすがのアタシも予想外で、さっきパーティー登録しちゃったよん」
「・・・それ、政治資金パーティーとかの方じゃなくて仲間登録の方?」
「むろん後者」
私に話しかける以前にエンヴィーとバルドルは仲間登録済みだったという。そこにエンヴィーからのパーティー申請を私が口頭で了承したという状況のため、バルドルも自動的に私のパーティー扱いになっていたようだ。
「えーやだ~。かかわり合いたくない~」
なのに復活したバルドルは空気を読まずにハイテンションにアピールしてきた。
「レベルMAX4つ!加えてこのかっこよさ!仲間にして損はないよ!ね?ネズミちゃん☆(キラーン☆=)」
魅了は効かないつってるのに懲りないヤツだ。
「臨時ならいいけど、何かあったら速攻別れるからね。」
泣かせた負い目から一応了解したが。
「このイケメン相手にその態度・・・お前、レズかよ?」
こいつどこまで空気読まないのか。
「私恋愛興味ないの」
「え〜っ?!フツー異性に知り合ったら、考えるのはつき合えるかつき合えないか2つに1つだよ!ネズミちゃんは男をそういう風に見定めないの?」
「記憶にございません」
その恋愛観、地方から東京に出てきた大学デビューの童貞かって感じだよ、バルドル。あ〜も〜この会話全部無駄無駄ァ!と思いながらも一応やりとりしていると、エンヴィーがいい笑顔で会話に加わってきた。
「アタシが考えるのは1つじゃないわよ。男も女も抱くのも抱かれるのもアリだしね♪」
「おおっ!エンヴィーねえさん大人発言!・・・あれ?」
「そ♪アタシバイなの」
「おおー!おとな、はつげん・・・え?」
「むしろまず見定めるのは、這いつくばらせたいか縛り上げたいか放置プレイでいいかってことね♪」
「おおー!ええ?・・・ていうかエンヴィーその道のお人なのかよっ?!」
ざざっとひいたバルドルを見て、なおさらエンヴィーは楽しそうに笑った。
「バルたんはまだまだオシリの穴小さそうねぇ」
「ぎゃー!!小さいです小さいです未使用ですから!」
「そういう意味じゃないってば、怯えないでよ〜」
そして一度聖母のように優しく微笑みかけてから、睫毛の長い両目を見開いて威圧的に妖しい笑みを浮かべる。怖いけど、やはり可愛い。
「ちなみに【魅了】はアタシ、レベルMAXだから。
そのアタシのが効かなかったんだから、たったレベル3のバルたんのが効くわけないじゃない?」
「その呼び方、やめてよお・・・」
しょぼーん。
自慢げに披露していた魅了スキルをめたくそに言われて、目に見えてバルドルはしょんぼりした。濡れた段ボールに入れられた大型犬のようだ。
人ごとのように見ていたら、ぐるっと首を回して涙目のバルドルにぶーぶー言われた。
「なんでネズミちゃん、エンヴィーに魅了試されたのは怒らないの?えこひいきー!」
「えこひいき然り、人生はそんなものだよ。だってエンヴィーにはされても嫌じゃなかったからね。普通にかわいいと思ったし」
「ひどいひどい!オレがかわいくないの!?」
かっこつけてみたりかわいがってほしがったり、キャラが一定してないなあバルドル。でも意外と立ち直り早いね。
「セクハラと同じだよ。信頼関係があれば、多少の色目やスキンシップは親近感アップに繋がるけど、信頼関係がないとセクハラって訴えられるのよ。社会人の常識よ。会社に入る前に覚えときなさいね」
「へえ。って、ネズミちゃん年上なの?」
「言っとくけど社会人5年目だよ」
「ええー!その顔で?!てかそれ地顔だよね?!」
「失礼だなあ。今日は内勤だったから。社外出るときはちゃんと化粧するし」
「ちなみにオレは大学2年だよ!」
「へー。」
「へーってひどいだろ!もっと会話を楽しもうよ!」
「遊び人さんは黙ってて」
「そうなんだよ、遊び人ってジョブまさかほんとにあるとはさぁ、うけるよな!」
黙っててと言っているのに、一度ステージオンモードに入ったバルドルは聞いてもいないのに勝手に自分の事をしゃべり始めた。典型的なナルシストだな。
気楽な大学生として遊んで暮らしてるのと、女好きなことから、本人としてもジョブ名【遊び人】については納得しているようだ。【剣士】なのは、親の方針で小中高と剣道をやっていたからだろうとのこと。
「へえ」
「オレハーフだからさー。親が日本らしい習いごとしろってうるさくてさ〜。
大学入って親元離れてからはフェンシングに変えたけどね。そっちのほうがモテそうでカッコいいっしょ!」
「はあ」
「魅了スキルで髪型も整えたり風で崩したりできるんだよ!すごくない?!」
「ほう」
「ていうかオレ魔法属性は風だからかな?まあまだほとんど使えないんだけどね」
「ふーん」
自分の事のみエンドレスエンドレス。
はひふへほの相づちもネタが切れるよ。
こんなめんどくさい相手とパーティー組んじゃったなんて、結構不覚だ。
ん?パーティーとな?
むむ。
「ていうか、もう一方のパーティーっていいアイディアかも!」
「ん?」
「エンヴィー、パーティーとか出たくない?その顔と話術を生かせばあわよくば政治家とか王族とか?にも取材できちゃうかもだよ?!」
「うん、もちろん王子様たちとはお近づきになりたいしドレスも着たいわ。でもちょっと話飛び過ぎじゃない?」
「あ、ごめんよく言われる〜」
もうバルドルの事はどうでもよくなっていた。
「よし、神官に取り入って、首脳陣に会えるようなパーティーに出席させてもらおう!勇者になって有名税払うんだから、いい取材機会もらわなきゃやってられないよね!新聞事業のスポンサーも見つけなきゃだし」
「ネズミちゃん独り言も多いわよ」
「あ、ごめんよく言われる〜」
話の途中で色々気になってしまうのは悪い癖だ。特に今は気になる事が多すぎるから仕方ない。ごちゃごちゃしてきたので、ざっと【TO DOリスト】を書いてみた。
☆至急
・宿舎の安全確保
・みんなの家族と連絡(伝書鳩?召還魔法使える人探す)
・国、地域、魔物分布、被害状況の情報収集→生き字引、歴史書探す
・医療、食などの現地情報
・現地通貨かせぐ方法は?通貨は暴落していないか?物々交換?
☆数日中
・義指調達可能か調べる
・過去の勇者、戦死者の情報収集
・召還魔法習得可能か
・情報共有方法模索(仲間は部屋に案内板?住民には壁新聞?伝書鳩を連絡網にできるか?)
・パーティーとかで、王族か神殿に壁新聞の許可をもらう。できればスポンサーも得る
・メダルの呪いをとく
・他にどんなスキル覚えるべきか、聞き込み。解毒や回復系は?
・実地で手頃な魔物を見に行く(言葉が通じるのはいるのか?なら魔物にも聞き込み)
☆後日
・黒扉被害者・家族の会を作る→自警団の能力アップへ
・印刷技術確保、新聞作る
・歴史書作る
☆元の世界と行き来できるなら
・人数分の郵送エイズ/性病検査キット
・会社への病欠届けを家族に頼む
・家賃などの滞納確認
・衛生用品など買い出し
懸案事項が多すぎて頭が痛くなりそうだ。しかもリアルな話と夢のような話が混在している。
「えっと、他には・・・・・・あれ?」
はっと気づくともうとっくに中古装備品貸し出しの建物に着いていた。体育館での古物市みたいだ。ばらばらと物が雑多に並んでいた。
「話が飛んだと思ったら書くのに熱中してたわね。着いてるわよ」
「あ、ごめん」
1人でいるともうちょっと周りに気を使うのだが。エンヴィーに頼りすぎたのか入り込んでいた。助かるけど、悪かったな。
見ればもうエンヴィーは自分の分の武器や防具を入手していた。さすが素早い。中世っぽい細い剣と白銀の部分鎧、白いマント。白い服で小柄な彼女に似合いそうだ。
「とりあえずこれはアタシには大きかったからあげるわ」
「ありがとー!」
名前の通りネズミ色のマントを頂いた。ちょうどよかった。
「中古とはいえそれなりにいいのもあったぜ。早くしないとなくなるぜ?」
バルドルもいくつか物色中らしく、両手に色々持ったまま、尻尾を振るでかい子犬のようにワンワン近寄ってきた。
「ありがと、でも私は要らないかも。」
「って、あんた着の身着のままじゃん!」
確かに、今の私は気を失ったとき身に付けていたスーツにパンプス、ポケットに常備していた小物以外は持っていない。
「んー、でも私使った事ない武器持っても、自分の指切りそうだしな」
「本当に何もいらないの?着替えは?」
「清浄魔法あるしいらない」
「色気ないな〜。でも流石にそのスーツのままじゃヤバいでしょ?」
「じゃ、何か防具だけなんか軽いの重視で・・・てなるとどんなかな?」
気分的には着替えとかはどうでもいいのでさくっとすませて、神殿で得られる情報収集は今日のうちにしてしまいたい。取材の顔つなぎを済ませて、あわよくばパーティーに潜り込めるような話に持っていけないかな。
気もそぞろに適当な防具を選んだ。
そんな私に、機嫌を取りたいのかバルドルがすり寄る。
「オレが君の為に何か取ってきてあげようか☆」
もうキラキラはいいっつーに・・・。
あ!そうだ。でも1つ適任があった。
「バルドル、さっきはごめん。虫がいいのはわかるけどお言葉に甘えてお願いしてもいい?」
「いいよいいよ!何?」
「さっき助けた女の子達、12人もいるけどそれこそ着の身着のままなの。
着替えの服とかもらってきてもらえないかな?」
何とかと鋏は使いよう。
お願いしてみると、バルドルはぱぁっと笑顔になり大喜びで頷いた。ぷるぷる尻尾ふっているのが見えるようだ。
「りょーかい!せくしーなのもかわいいのも全部集めてくるよ!」
「普通のでいいから」
「女の子12人も〜!ハーレムだ〜!」
・・・聞いてないな。まあ成果さえあれば言うだけなら何言っててもいい。
「じゃあよろしく、広間戻ってるから!」
「あっそうだ!」
きびすを返そうとしたら、ガバッと後ろから抱き締められた。ギャー!
「なにすんの!セクハラ!訴えるよ?」
「測ってるだけだから!動かないでよ~♪」
ぎゃあー!!やめろ〜!!まさぐるのはやめて!!
「バルドルッ!本気で殴るよ!!」
「えー?だいじょぶもうわかったも〜ん!上から91の・・・」
ぎゃー!!!!
「黙れッ!もげたいか!!」
つい思いっきり、投げ飛ばしました。不可抗力です。
でも意外にもバルドルは丈夫だった。転がされてもケラケラ笑っている。
さっきと打って変わって手強い・・・。
調子づいてるときはメンタルも強いのかな、こいつ・・・。レベルMAX幾つかあったっていうし身体の方も結構強いのかも。
「いや〜ネズミちゃん、ツンデレ巨乳上等!デレ早期召喚願います!」
「・・・何言ってるのかわかんないから!
もー!私のはいいから、いいから皆の分早く取ってきてよ!」
少し見直しかけたが、ノリに乗っちゃってるバルドルは訳分からない事をほざくので、一気にうんざりしてどうでもよくなった。
「おっけー!」
ボールとってこーい!と主人に言われた子犬のように巨大な美形がうきうきと走っていった。役に立ちたいという気持ちは買う。普通にありがたい。
しかし制御が面倒だ。
・・・総合するとコスパは微妙ってとこか。
本日は迷惑なバルドルのターン!
次はエンヴィーのターンかな?
水曜更新目指します。




