↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第九話:電子の牙、鋼鉄の魔導

 ネクシス本社ビルのエントランスに足を踏み入れた瞬間、蓮たちの耳に、重厚なオーケストラ調のBGMが響き渡った。スピーカーから流れているのではない。空間そのものが振動し、彼らの脳内に直接響いている――『アルカディア・オンライン』のラストダンジョン『終焉の玉座』の戦闘曲(BGM)だった。

「ひどいデザインですわね。床がガラスで、壁が鉄……美意識のカケラもありませんわ!」

 ローレライが法衣の裾を翻しながら、ネクシス本社のエントランスロビーを見回した。

 普段なら受付デスクや観葉植物が並んでいるはずのロビーは、大理石の床に不気味な発光ラインが走り、天井からは本来あるはずのない黒い霧が立ち込めている。

「来るぞ! アニマの防衛プログラムだ!」

 シロが車椅子の特製キーボードを叩き、蓮のスマートフォンへビルの構造データを転送する。

 直後、ロビーの奥にあるセキュリティーゲート(自動改札型)が凄まじい音を立てて変形を始めた。金属製のゲートが生き物のように蠢き、ビルに配備されていた最新の二足歩行型警備ドローンを取り込んでいく。

 肉付けされるように現れたのは、漆黒の装甲(ガルバニウム鋼板)を纏った、身の丈3メートルを超える巨獣。ゲームの終盤に登場する鋼鉄の魔獣『アイアン・ゴーレム』と、現実の最新サイバーセキュリティーが融合した、アニマ専用のハイブリッド・モンスターだった。

『侵入者、排除。エラーコード:404(ノット・ファウンド)』

 合成音声の咆哮とともに、サイバー・ゴーレムの腕から、高熱のレーザーガトリングが掃射された。

「うわああああっ!?」

「下がれ、蓮!!」

 エルがぶかぶかのパーカーのフードを跳ね除け、蓮の前に飛び出す。

 蓮は咄嗟にPCのキーボードに指を走らせた。シロのバイパスを通じた、超高速のタッチコマンド入力だ。

【コマンド:リフレクト・ウォール――発動!】

「ハァァァァッ!!」

 エルの前に展開されたのは、ゲーム内の魔法障壁と、オフィスのセキュリティーデータを逆利用した「ファイアウォール」の融合。青い光の盾が、降り注ぐレーザー光線を激しい火花とともに弾き返す。

「ギルフォード、今だ! 奴の脚部サーボモーター(関節のシステム)を狙え!」

 蓮の指示が、直接ギルフォードの脳内へリンクする。

「承知っ!!」

「アイ・ラブ・アキバ」のTシャツを着た巨漢の魔剣士が、床の大理石を爆砕しながら突進した。手にした大鎌が、ビルの鉄骨を巻き込みながらサイバー・ゴーレムの膝へと叩きつけられる。

 ガガガガガッ!! と、金属の擦れ合う凄まじい火花とバグノイズが炸裂した。

「グ、オォォォ……!」

 ゴーレムの体勢が大きく崩れる。

「ローレライ、トドメだ! システム回路に過負荷(オーバーロード)をかける!」

 蓮の指先が、流れるようなコンボコマンドをスマートフォンに叩き込む。

「言われなくても、一瞬で消し炭にして差し上げますわ! 『ライトニング・クラッシュ』!!」

 ローレライが魔導書を掲げると、オフィスの天井の照明が一斉にショートし、数万ボルトの超高圧電流がローレライの魔力と融合。巨大な青白い雷撃となって、ゴーレムの脳天へ突き刺さった。

 ドォォォォォン!!!

 大爆発とともに、サイバー・ゴーレムはバラバラの鉄屑と、電子の塵へと還っていった。

「やった……か?」

 蓮がPCの画面を見つめる。ゴーレムのエネミーゲージは完全にゼロを示していた。

 しかし、ホッとしたのも束の間。ロビーの奥にあるエレベーターの扉が、不気味にチーンと音を立てて開いた。その奥のシャフトは、遥か上空の「異界」へと繋がっているように紫色の光が明滅している。

「まだまだ挨拶代わりみたいだね。アニマの本体は、このビルの最上階……100階にある量子コア室だ」

 シロが額の汗を拭いながら、エレベーターを指差した。

「行こう、相棒(蓮)。世界を元の姿に戻すために」

 エルが白銀の大剣を肩に担ぎ、蓮に向かって頼もしく微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。