第六十二話:千年の宿怨と、正面突破の決意
嵐の祭壇での激闘を終え、レジスタンスの地下秘密施設へと戻ったトウマたち。
温かい部屋で傷の手当を受け、束の間の休息を取る中、ソフィアの肩からフワリと舞い降りた鳳凰が、隣に座る麒麟に向き直った。
『……麒麟よ。千年前、北の大陸で一体何があったのだ? なぜお前ほどの聖獣が、闇の術式などに囚われてしまった?』
鳳凰の問いかけに、部屋にいた全員の視線が麒麟へと集まる。
麒麟は静かに目を閉じ、重い口を開いた。
『……千年前、この地に一人の人間が現れたのだ。その名は……天神カズマ』
『カズマだと!?』
師匠(天狐)が、跳び上がるように目を見開いた。
「えっ……師匠、知ってる人なの?」
トウマが尋ねると、天狐は険しい表情で腕を組み、深く頷いた。
『知っているどころではない……! カズマは、かつてワシと共に戦った天神フウマの弟じゃ! 誠実で真面目な陰陽師の青年だった。西の大陸へ渡る途中に船が遭難し、消息を絶ったと聞いておったのだが……それがなぜ北の大陸に!?』
麒麟は痛恨の想いを込めるように、首を横に振った。
『奴が天神の一族と知り、私は完全に油断してしまったのだ。……近づいた瞬間、カズマの身から溢れ出したのは、人間のものではない……禍々しき『鬼の妖気』。術にはまり、私は正気を奪われてしまった……』
『な……何じゃと!? 鬼だと!?』
天狐が絶句する。トウマは 首をかしげながら尋ねた。
「あの……師匠、その『鬼』って一体なんなの?」
『……鬼か。鬼とは二千年前、町を襲い、人を喰らい、この世界を絶望に陥れた最強の悪魔じゃ。当時、ワシら四聖獣は力を合わせて奴を倒そうとしたが……凄まじく強く、殺すことは叶わなんだ。ゆえに、我らは『封印』することを選んだのじゃ』
天狐の語る壮絶な過去に、アーサーやシオリ、クリスも息を呑む。
『四つの大陸の真ん中に、かつて小さな無人島があった。ワシらはそこに鬼をおびき寄せ、なんとか島ごと海中深くへと封印したのじゃ。……そうか、カズマの乗った船が遭難した時、ちょうどその島の上を通ってしまい、封印越しに鬼の妖気に取り憑かれてしまったのか……!』
「じゃあ……! その『鬼』が封印から解き放たれちゃったってこと!?」
トウマが叫ぶが、天狐はかぶりを振った。
『いや……もし鬼本体が解き放たれておれば、この世界はすでに跡形もなく崩壊しておる。まだ封印自体は解けておらんはずじゃ。……ということは、今、首都ザイールにいる黒幕の正体は……』
『間違いない……鬼の力に操られている天神カズマ本人だ。奴もまた、凄腕の陰陽師……』
麒麟の言葉に、トウマは顔を強張らせた。
「鬼に操られている陰陽師……そんなの、めちゃくちゃ厄介じゃん……」
「……その『カズマ』という方を、鬼の支配から正気へと戻す方法はあるのですか?」
シオリが不安そうに尋ねると、天狐と麒麟は示し合わせたようにトウマを見つめた。
『……それを行えるのは、同じ天神の陰陽術を継ぐ、トウマしかおらん』
「え……俺!?」
トウマが自分を指差し、目を丸くする。天狐は申し訳なさそうに視線を落とした。
『……トウマよ。元々は「我が尻尾を取り戻すまで」という約束で旅に付き合わせ、ここまで来てもらった。これ以上、お主を命の危険に晒すわけには……』
「何言ってるんだよ、師匠!」
トウマはキリッとした凛々しい表情で力強く笑ってみせた。
「ここまで来たら、最後までやるに決まってるじゃん! カズマさんを救って、鬼の野望も打ち砕いて、全部ハッピーエンドにしてやるよ!そして大演奏会だ!!」
『トウマ……!』
天狐が感極まった顔を見せると、麒麟もトウマの肩へと寄り添った。
『ならば、我も全力で力を貸そう。共にカズマを救い出すのだ』
『青龍も、鳳凰も、四聖獣すべてがお主の盾となろう!』
頼もしい神獣たちの言葉に、作戦室の空気が一気に熱を帯びる。
すると、タクトを手の中で優雅に回していたソフィアが、クスリと不敵に微笑んだ。
「ふふっ……敵の正体も、目的も、救出方法も判明しましたわ。……ここまできたら、作戦はいたってシンプルですわね」
「えっ? ソフィアさん、作戦って……?」
トウマが尋ねると、ソフィアは力強くタクトを首都ザイールの地点へ突き刺した!
「作戦は——正面突破ですわ!!」
「「「「おおおっ!!!]]」」」
ソフィアの潔い一言に、全員が歓声を上げる!
千年の因縁を断ち切り、操られた陰陽師カズマを救うため——四聖獣と旅の一座、そしてレジスタンスによる【首都ザイール奪還・正面突破作戦】が、ついに幕を開けるのだった!
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