第六十一話:真なる九尾の威光と、四聖獣の無双
嵐の祭壇の石畳の上に、澄み切った空気を纏った『麒麟』がゆっくりと着地した。
漆黒の雷はすっかり消え去り、その全身は神聖な金色の光に包まれている。
麒麟は青龍、鳳凰、そして九本の尾を誇らしげになびかせる天狐へ向かい、深々と頭を下げた。
『……感謝する、天狐。そして青龍、鳳凰よ。闇の呪縛から救い出してくれたこと、礼を言う……』
『ふふっ、無事で何よりじゃ、麒麟。永い悪夢からよくぞ戻ったな』
天狐が優しく微笑みかけた、その時——!
ドォォォォン……! ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
突如、山脈の麓から地響きのような激しい足音が響き渡り、極寒の吹雪を割って凄まじい邪気が押し寄せてきた!
「な、何だ……!? 麓から……魔物の大軍勢が登ってくる……!?」
傷ついた体を支えながら、クリスが声を上げる。
祭壇を取り囲むように現れたのは、首都ザイールから差し向けられた闇の軍団の増援——数百を超す魔物の大軍勢だった!
「チッ……ケルベロスが倒されたことを察知して押し寄せてきたのか……!」
アーサーが刀を構えようとするが、膝ががくぐりと震える。トウマも二大式神を呼び出した反動で息を荒らげ、シオリやソフィアも満足に戦える状態ではなかった。
「みんな、下がってて……! 俺が……もう一度九字を切る……!」
トウマが必死に印を結ぼうと前に出た、その時。
フワッ……
トウマの前に、神々しい九本の尾をゆらゆらと揺らす巨大な天狐が立ちはだかった。
『……よい、トウマ。ここまでよく頑張ったな』
天狐が振り返り、穏やかだが威厳に満ちた声で語りかける。
『いつまでも若い者たちだけに苦労を掛けさせるわけにはいかんからの。……おい、青龍、鳳凰、麒麟よ。久しぶりに我らの本当の力、見せてやるとしようぞ!』
天狐の言葉に、神獣たちがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
『フッ……異論はない。我らを舐めた魔物どもに、神威を教えてやらねばな』
『ああ、存分に暴れさせてもらう!』
『我が力を貸そう……!』
青龍が天へ昇り、鳳凰が紅蓮の翼を広げ、麒麟が金色の雷を全身に纏う!
「ヒィィッ!? な、何だあのバケモノどもは……怯むな、突撃せぇぇぇい!!」
怯える魔物の軍勢が一斉に雪崩れ込んできた、次の瞬間——!
ドカァァァァァァァァンッ!!!!
『神威・四聖天極陣っ!!』
天狐の【天】の浄化光、青龍の【蒼雷】、鳳凰の【神炎】、そして麒麟の【金雷】が合体し、天空から天地を激震させる超絶怒濤の神光波が降り注いだ!
ズババババババババババババァァァァンッ!!!!
「ギャアアアアアアッ!?」
数百の魔物の大軍勢は、トウマたちが反撃する間すらなく、たった一撃で影も形もなく蒸発し、北の空へと吹き飛ばされて消滅したのだった……!
◇
……静まり返る嵐の祭壇。
「……すご……」
呆然と立ち尽くすアーサー、シオリ、ソフィア、そしてクリス。
トウマは目を丸くして口ぐうぐう開けたあと、ドッと胸の支えが下りたように破顔した。
「うっわぁぁぁぁ……!! 師匠、めっちゃ強いじゃん!!」
すると、巨大な姿から一気に光が収まり、ポンッといつもの三十センチほどの姿に戻った天狐が、トウマの肩にちょこんと跳び乗った。
『ふん! 当たり前じゃろ! 儂らを誰だと思っておるのじゃ! 神々の長たる四聖獣なるぞ!』
天狐が威張るようにフンスと小さな鼻を鳴らすと、ミニサイズになった青龍、鳳凰、そして新しく加わったミニ麒麟もトウマたちの周りを可愛らしくフワフワと飛び回る。
「はははっ! さすが師匠! 一気に吹き飛ばしちゃったね!」
「本当に……頼もしすぎる味方ですわね」
ソフィアが安堵の笑みを漏らし、クリスもレイピアを鞘に収めて深く息を吐き出した。
天狐がトウマの頭をぽんぽんと前足で叩きながら、力強く宣言する。
『さあ! 麒麟も無事に戻ったことじゃ! ひとまずレジスタンスのアジトへ戻って身体を休めるとするぞ! 首都ザイールの奪還はそれからじゃ!』
「「「「おーっ!!!]]」」」
全員の無事と最高の勝利を祝しながら、一行は意気揚々とレジスタンスの秘密施設へと引き返していくのだった!
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