第六十話:天を穿つ神獣と、真なる九尾の覚醒
トウマが地上で二大式神『朱雀』と『玄武』を呼び出し、ケルベロスの宇宙の重力波と死闘を繰り広げているその頭上——。
嵐の祭壇の遥か天空では、世界の存亡を賭けた「神々同士の壮絶なる戦い」が荒れ狂っていた。
ゴガガガガガガァァァンッ!!
「グオォォォォォォッ!!」
闇の術式に支配され、完全に正気を失った聖獣『麒麟』が天を仰いで咆哮する。
その神聖なる角から放たれたのは、空そのものを真っ二つに引き裂くような漆黒の極太雷光——『黒雷』の嵐だ!
バリバリバリバキキキッ!!
黒い稲妻が全方位へ爆ぜ、吹き荒れる吹雪すら一瞬で蒸発させていく。
『ぬぅぅっ! なんという禍々しい気じゃ……! 目を覚ますのじゃ、麒麟!!』
巨大な真の姿となった天狐が空中を舞い、背の八本の尾から激しい【響波】の衝撃波を放って黒雷を相殺する!
しかし、押し寄せる黒雷の波は留まることを知らず、天狐の衝撃波すら呑み込もうと膨れ上がっていく。
『天狐、余計な心配をしている暇はないぞ! 奴は完全に自我を失っている!』
蒼い神光を纏った巨龍——『青龍』が、雲を突き破って急降下!
その巨大な爪に蒼雷を宿し、麒麟の側腹へと猛然と襲いかかる!
ドガァァァァァンッ!!
『青龍・神龍爪!!』
青龍の一撃が麒麟の体に直撃する!
だが、麒麟を覆う黒雷の防壁はあまりにも強固だった。ダメージを即座に殺した麒麟は、狂乱の瞳で青龍を睨みつけると、その鋭い角を青龍の巨体へと突き立てた!
『グハッ……!?』
『青龍っ!!』
神獣の血が空に舞い、青龍の巨体が凄まじい衝撃とともに叩き落とされかける。
『させるものか!! 『神鳳・九連天火』!!』
空の彼方から、燃え盛る黄金の不死鳥——『鳳凰』が翼を広げて急接近!
その羽から解き放たれた九つの黄金の火球が、麒麟の頭上を覆い尽くし、爆炎の嵐となって視界を完全に奪い去った!
ズババババババァァァンッ!!
『今だ、青龍! 姿勢を立て直せ!』
『……感謝する、鳳凰!』
一時的に体勢を戻した三聖獣。だが、爆炎の渦を押し破り、麒麟はさらなる邪気を膨らませて天空へとおどり出た。
『グオオオオオオアアアッ!!』
麒麟の全身から放たれた漆黒の雷が、天空に巨大な「黒い渦(雷雲)」を形成する。それは、三聖獣をまるごと押し潰さんとする破滅の雷撃陣だった!
『くっ……このままでは、我らもろとも嵐の祭壇ごと吹き飛ばされるぞ……!』
青龍が歯を食いしばり、鳳凰が焦燥の叫びを上げる。
その時——!
ズバババババババババァァァァァンッ!!!!
地上から、天を突くほどの黄金と紅蓮の光柱が爆ぜた!
トウマの陰陽術『封邪陰陽陣』と二大式神の力が決裂し、地上で重力を操っていた暗黒の巨獣ケルベロスが、断末魔とともに消滅したのだ!
そして——ケルベロスの胸元から解き放たれた、天狐の最後の尻尾——【九本目の尾】が、眩い彗星となって一筋の光の軌跡を描き、まっすぐに天空へと駆け上がってきた!
『……来た! 我が最後の尾……九本目の【天】の霊気よ!!』
天狐が天空の中央へ躍り出て、両前足を広げてその光を受け止める!
ドカァァァァァァァァンッ!!!!
次の瞬間、北の大陸の空全体が昼間のように眩しく跳ね上がった!
九本すべての尾が揃った天狐の身体が爆発的な黄金の神光に包まれる。
柴犬ほどの姿から始まった天狐の体が、巨大化どころか山々を見下ろすほどの神々しい『九尾の狐』へと完全覚醒を果たしていく!
背後に広がるのは、空間すら清める美しき九本の巨大な狐尾。
その身から溢れ出るのは、万物を浄化し、理を正す真なる神の力【天】——!
『ついに……ついに全ての尾が戻ったぞ!!』
覚醒した天狐の神々しい咆哮が、北の空全体を震わせる。
麒麟の形成していた黒雷の渦が、天狐の放つ神気に触れただけで、シュウシュウと音を立てて消滅していった!
『な……なんという神々しい姿だ……!』
青龍と鳳凰が息を呑んで見上げる。
麒麟はなおも狂乱し、残された全邪気を額の角に集中させ、天狐へ向けて死の黒雷光を撃ち出そうとする!
「グ……オォォォォッ!!」
真の力を取り戻した天狐は力を溜める
『目を醒ませ……我らが誇り高き同胞、麒麟よっ!!』
天狐が天空を力強く蹴り、光の速度で急降下!
九本の尾から集束させた【天】の絶対浄化光をその右前足に宿し、麒麟の頭上へと肉薄する!
『神威一撃・【天】の破邪掌っ!!』
ドォォォォォォォォォンッ!!!!
天狐の神威を纏った前足が、麒麟の額の角へ一直線に叩きつけられた!
空が激しく歪み、世界が静止したかのような錯覚。
次の瞬間、麒麟の全身を縛り付けていた漆黒の闇と闇の術式が、まるでガラス細工のようにパリィンと音を立てて粉々に砕け散った!
「グ……ッ……ア……ッ……」
漆黒の雷が綺麗に吹き飛び、麒麟の瞳から濁った邪気が消えていく。
そこに残されたのは、透き通るような美しい金色の瞳だった。
正気を取り戻した麒麟は、空中で静かに天狐を見つめると、感謝と安堵を込めて高く澄んだ美しい咆哮を上げた。
ウオォォォォン……!!
光の粒子となった麒麟は、天空からゆったりと地上へと降りていく。
九本の尾を誇らしげになびかせた天狐、そして傷つきながらも勝利した青龍と鳳凰もまた、共に地上へと舞い降りるのだった——!
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