第五十八話:嵐の祭壇の激闘! 宇宙(天)の歪みと絶望
極寒の吹雪を突き抜け、トウマたちは北の山奥に聳え立つ『嵐の祭壇』へと辿り着いた。
古代の石造りの祭壇。
その中央では、漆黒の雷を纏った聖獣『麒麟』が、邪気に操られて咆哮を上げていた。
そして、その麒麟を鎖で縛り付ける傍らには、三つの凶悪な頭部を持つ巨獣——『ケルベロス』が君臨していた。
「……来たか、虫ケラども」
ケルベロスの胸元で、眩いばかりの神聖な光を解き放っているのは、天狐の最後の尻尾——【九本目の尾】だ。
「我が身に宿るは【天】の力……宇宙の理そのもの。貴様らの存在ごと、虚無へと押し潰してくれよう!」
『全員、作戦通りに行くぞ! 麒麟は我らに任せよ!』
天狐の叫びとともに、アーサーの肩から青龍が、ソフィアの肩から鳳凰が天空へと飛翔した!
青龍は巨大な蒼龍へ、鳳凰は燃え盛る不死鳥へと姿を変え、天狐もまた真の姿となって上空へ躍り出る!
嵐の祭壇の上空で、三聖獣対麒麟の、天を揺るがす壮絶な聖獣合戦が勃発した!
「よし! 俺たちはケルベロスを討つ!!」
アーサーが青龍刀を構え、シオリも風雷の翼を広げて跳躍する!
だが、ケルベロスの三つの口が歪んだ。
「愚かな……『天理歪曲・重圧』」
ドガァァァァンッ!!
ケルベロスの目が怪しく光った瞬間、空間そのものがグニャリと歪んだ。
目に見えない凄まじい重力が襲いかかり、アーサーとシオリは地面へ叩きつけられ、雪原の石畳がバキバキと砕け散る!
「ぐああっ……!? こ、呼吸すら……っ!」
「身体が……押し潰される……っ!?」
「アーサー! シオリ!」
ソフィアがタクトを振り、精神防壁を展開して二人に押し迫る重力を和らげようとするが、あまりの圧力にソフィア自身も膝をつき、口から血の混じった息を吐き出した。
「くっ……! 防壁が……削られていく……! 強い……強すぎるわ……!」
「ハハハ! 宇宙の重力の前では、いかなる剣も魔法も無力! そのまま肉塊となれ!」
ケルベロスが鋭い爪を振り上げ、動けない三人へ向けて振り下ろす!
シュバババババッ!!
「させん!!」
一閃の銀光! クリスが踏み込み、レイピアを電光石火の速度で繰り出す!
「『氷華水龍突』!!」
クリスのレイピアから解き放たれた水と氷の龍がケルベロスの爪を弾く!
だが、ケルベロスの中央の頭が冷酷に笑った。
「ぬるい」
バチバチバチッ!!
【天】の力が空間を歪め、クリスの放った水と氷の龍が、一瞬で逆方向へと折り曲げられてクリス自身へと襲いかかった!
「ぐあっ……!?」
自身の攻撃を叩き返され、クリスは血を流して吹雪のなかへ吹き飛ばされる!
「クリスさん!!」
圧倒的……! 攻撃も防御も全て【天(宇宙)】の歪みによって無力化され、一行は全滅の縁へと追い詰められていた。
「ハハハハ! 終わりだ! 宇宙の歪みの中に消え去れぃ!!」
ケルベロスの三つの頭が同時に巨大な漆黒の光弾を練り上げ、トウマたちへと向けられた。
全滅の危機。その絶望の極致の中で、トウマが静かに一歩前へ踏み出した。
両手を胸の前で素早く交差させ、鋭い眼差しで空を切る!
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前——!!」
トウマの指先が高速で刻む九つの【九字】。
空間に刻まれた黄金の光の文字が眩しく弾け、トウマの全身から凄まじい霊気が溢れ出した!
「万物の理を正し、二大の神獣よ、我が召喚に応えよ……!」
トウマが九字の最後を強く結び、力強く叫ぶ!
「来い……! 『式神・朱雀』! 『式神・玄武』!!」
ゴォォォォォォンッ!!
トウマの左右の空間が裂け、灼熱の炎を纏う巨鳥『朱雀』と、巨大な蛇が巻きつく漆黒の霊亀『玄武』が姿を現した!
玄武がトウマたちの前に立ちはだかり、その強固な霊気の甲羅でケルベロスの放った宇宙の歪み光線を真正面から受け止める!
ズバババババァァァンッ!!
凄まじい衝撃波が駆け抜け、玄武の甲羅に亀裂が入るが、攻撃を完全に防ぎ切った!
「なっ……!? 何だその獣どもは!? 我が【天】の攻撃を防いだと……!?」
ケルベロスが慄く。
玄武の背後から、トウマが汗を滴らせながら前に出た。額から血を流しながらも、その瞳は力強く澄み渡っている。
「これが……俺が受け継いだ陰陽の力だ……! 空間が歪んでるなら、戻すまでだ!! 朱雀っ!!」
朱雀がけたたましく鳴き声を上げ、空中で紅蓮の炎を巻き起こす!
だが、ケルベロスはすぐさま体勢を立て直し、残る頭からさらに苛烈な高重力波を放ち始めた!
「調子に乗るなよ人間ぇぇぇ!!」
トウマの呼び出した二大式神と、宇宙の力を操るケルベロスの、真の死闘が始まろうとしていた——!
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