第四十一話: 二手に別れる誓い
大宴会の賑やかさが嘘のように消え去った翌朝。俺たちは作戦会議室に集まり、次なる目的地——北の大陸への移動手段について話し合っていた。
だが、その平和な時間は突如として破られることになる。
会議室の影が突如として揺らめくと、黒い装束を纏った男——東の大陸からの密偵・影丸が姿を現した。
「影丸! 帰っていたのか!」
俺が声を上げるが、影丸の表情は極めて緊迫していた。ひざまずき、息を乱しながら報告を口にする。
「……緊急の報告にございます! 北の大陸より、見たこともない大規模な魔物の軍勢が出現! 大海を渡り、我が『東の大陸』へと一斉に押し寄せております!」
「何だと……!? 東の大陸に魔物の大軍が!?」
驚愕する俺たちの前で、さらに会議室の扉が勢いよく開かれ、兵士が転がり込んできた。
「ソフィア様、アーサー様! 西の大陸——竜人の国『ロイ様』より、至急の伝令です!」
差し出された書状を素早く改めたアーサーさんの顔色が、一瞬にして変わった。
「……我が国からもだ。北から押し寄せた魔物の別動隊が、西の大陸の我が故郷にも侵攻を開始した……! 国王様より『アーサーよ、至急戻りて軍の指揮を執ってほしい』と……!」
「そんな……! 東の大陸と、西の竜人の国が同時に襲われるなんて……!」
シオリさんが悲痛な声を上げる
北の大陸から同時に放たれた二大軍勢。両大陸が同時に危機に瀕しているのだ。放置すればどちらの国も壊滅を免れない。
「……くっ、次の尾を探すどころではなくなったな。だが、どうすれば……!」
俺が焦りを募らせると、ソフィアが冷徹かつ迅速に思考を巡らせ、作戦地図をバンッと叩いた。
「——二手に分かれましょう。東と西、同時に救援に向かうのです!」
「二手に!? でも、どうやって振り分けるんだ?」
ソフィアは迷いのない瞳で、それぞれのメンバーを見つめた。
「まず、西の大陸・竜人の国へはアーサーさん、トウマ、天狐様の三人。故郷であるアーサーさんが陣頭に立ち、トウマの柔軟な属性攻撃と天狐様の圧倒的な力が不可欠よ」
「納得だ。故郷は俺が守る」アーサーさんが力強く頷く。
「そして東の大陸へは、私とさん、そして鳳凰様の三人で赴きます。東の大陸には現在、鳳凰様の息がかかった駐屯軍が滞在しているわ。私が指揮を執るのが最も効率的だし、シオリは東の大陸の地の利を完璧に熟知している」
『なるほど! ソフィアの戦略眼とシオリの案内、そして我が伴えば東の大陸の軍は完璧に機能するな!』
肩の上の小さな鳳凰がパタパタと翼を叩いて賛同する。
完璧な理にかなった人員配置だった。
「移動手段はどうする? 船では間に合わないぞ!」
俺が尋ねると、ソフィアと鳳凰がニヤリと微笑んだ。
「東の大陸組は、本来の姿に戻った鳳凰様の背に乗って大空を駆け抜けます。これなら半日もかからずに東へ届くわ」
「そして西の大陸組は……昨日正気に戻した二羽の聖獣に乗っていくが良い! 我の背ほどではないが、海を越える圧倒的な速度を誇るぞ!」
「聖獣に乗って西へ……! それなら、襲撃に間に合う!」
決断は下された。分断の危機ではあるが、それぞれの強みを活かした最善の陣形だ。
作戦会議室を出て、大聖堂前の広い広場へ出ると、すでに巨鳥の姿を取り戻した鳳凰と、光と闇の聖獣たちが俺たちを待っていた。
「トウマさん……気をつけてくださいね。お互い、無事でいましょう」
シオリさんが不安と決意の混ざった瞳で俺を見つめ、そっと声をかけてくる。
「ああ、シオリさんも! ソフィアさんと鳳凰様がついているけど、無理はしないで」
俺が力強く答えると、ソフィアがアーサーさんと固い握手を交わした。
「東と西、それぞれの魔物を完全に討伐したら……東の大陸にある『鳳凰の村の大聖堂』で合流しましょう。必ず、生きて再会することを誓って」
「ああ! 鳳凰の村の大聖堂で合流だ! 絶対に全員無事で集まろう!」
俺たちの固い誓いが響き渡る。
シオリ、ソフィア、鳳凰を乗せた巨大な鳳凰が黄金の炎を散らして東の空へ飛び立ち、俺、アーサー、師匠を乗せた光と闇の聖獣が西の空へと疾走する。
二手に分かれた仲間たちの、大陸の運命をかけた新たな戦いが今、幕を開けるのだった——!
読んでいただきありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価(★)で応援してもらえると嬉しいです!




