第四十話:意外な同行者と、賑やかな祝宴
無事に『黄昏の渓谷』の聖獣たちを救い出し、五本目と六本目の尾を取り戻した俺たちは、軍師ソフィアと共にパラドラの大聖堂へと戻っていた。
朱色と黄金の光が満ちる謁見の間。神聖な台座の上で羽を休める鳳凰の前で、ソフィアが恭しく一礼して報告を述べる。
「鳳凰様。トウマたちの力により、暴走していたグラディウスとノックスは無事に正気を取り戻しました。南の大陸を覆っていた魔物の異常な活性化も、これで沈静化に向かうはずです」
「見事だ、ソフィア。そして天狐よ、旅人たちよ。南の大陸の平穏と、聖獣たちを救ってくれたこと、心より感謝する」
鳳凰が神々しい羽を広げ、深く感謝の意を示す。
すると、報告を終えたソフィアがまっすぐな瞳で鳳凰を見つめ、静かに膝をついた。
「鳳凰様……私から一つ、勝手なお願いがございます。どうか……私をトウマたちの旅に同行させてはいただけないでしょうか」
「ほう……? この国の軍師たるお前が、か?」
「はい。今回の戦いで彼らと手を取り合い、世界を脅かす異変の大きさを痛感いたしました。また、彼らの絆と奏でる音色に深く魅せられたのです。彼らの力となり、共に世界の危機を払いたいのです」
ソフィアの決意のこ心強い言葉に、俺とシオリさん、アーサーさんは顔を見合わせて嬉しそうに頷き合った。
「受けて立つが良い、ソフィア。お前の見聞を広めることも、この国にとって必ずや糧となろう」
「感謝いたします、鳳凰様!」
許可が降りてソフィアがほっと胸を撫で下ろした、その時だった。
「——さて。ならば……我が身の支度もせねばな」
鳳凰がニヤリと力強く微笑み、翼を大きく羽ばたかせた。
『ぬ……? 鳳凰、支度とは何のことじゃ?』
肩の上の師匠が首を傾げると、鳳凰は当然のように言い放った。
「決まっておろう。我もトウマたちの旅に同行する」
「「「えぇぇぇぇぇッ!?」」」
謁見の間に、俺たちの驚愕の叫び声が響き渡った。
「ほ、鳳凰様自ら旅に出るのですか!?」「南の大陸の守り神様が!?」
俺とシオリさんが目を丸くして叫ぶと、鳳凰はどこか楽しそうに目を細めた。
「密偵が途絶えた『北の大陸』の惨状も気になるでの。それに……なにより天狐よ、お前が若い者たちと実におもしろおかしく旅をしているのが、心底羨ましくなったのだ」
『ぬははは! 相変わらず形無しな奴じゃな鳳凰! だが……その巨体でついて来られては目立って仕様がないぞ?』
六本に増えた尾を誇らしげに揺らしながら師匠が笑うと、鳳凰は「フッ、案ずるな」と呟いた。
直後、眩い黄金の光が鳳凰の巨体を包み込む。光が収まると——そこにいたのは、手のひらにすっぽり収まるほど小さくなった、愛らしい小鳥姿の鳳凰だった。
パタパタと翼を羽ばたかせると、小さな鳳凰はソフィアの肩の上にちょこんと飛び乗った。
「これならば問題なかろう。南の大陸はソフィアの鍛え上げた軍隊がしっかり機能しておるし、正気に戻った二羽の聖獣も守ってくれる。我がいなくとも何の心配もないわ!」
「まあ……鳳凰様がそこまでおっしゃるなら、心強いわね」
ソフィアがクスッと微笑み、肩の上の小さな鳳凰を撫でる。
こうして、軍師ソフィアに加え、まさかの【神獣・鳳凰】まで旅の仲間に加わるという、なんとも賑やかな大所帯となったのだった!
◇
その夜、大聖堂の広場では南の大陸の平穏と新たな仲間の旅立ちを祝う、盛大な大宴会が催された。
たくさんの料理と果実酒が振る舞われ、兵士や街の人々が大盛り上がりする中、宴の最高潮で俺たちは広場の中央へと立った。
——ベベンッ……!!
俺が心のリズムを三味線の音色として力強く響かせると、シオリさんの澄んだ竹笛と、アーサーさんの重厚な二胡の音が夜空へと溶け込んでいく。さらに、賢者ソフィアがタクトを振るって美しく光る魔法の粒子を夜空に舞い散らせ、光と音の大合奏が繰り広げられた。
『クッカッカ! 最高の宴じゃ! 踊れ、唄えーッ!』
「我の分のお肉も取っておくのだぞ、天狐!」
机の上でフサフサの尾を揺らす師匠と、その横で肉をつつく小さな鳳凰。
人々の歓声と温かな音楽に包まれながら、俺たちの大演奏会は深夜まで続くのであった。
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