第三十八話:光闇の聖獣と、決戦の火蓋
翌朝、夜明けとともに俺たちはソフィアの案内のもと、決戦の地である『黄昏の渓谷』へと到着していた。
断崖絶壁に囲まれた広大な谷間。そこは本来、南の大陸の平穏を護る二羽の聖なる大鳥——『光翼のグラディウス』と『闇翼のノックス』が眠る神聖な地だった。しかし今、谷全体には禍々しく歪んだ霊気が渦巻いている。
「……気をつけて。普段は南の大陸を慈しみ護る神聖な守り神たちよ。けれど……あの不気味な霊気のせいで、今は理性を失い狂暴化しているわ」
ソフィアがタクトを握り締め、警戒を露わにする。
『むう……やはりか。あ奴らの体内に充満しておるあの霊気……我が【五本目】と【六本目】の尾の力じゃな。本来は清らかな聖獣ゆえ、我が強力な霊力に耐えきれず暴走しておるのじゃ』
肩の上の師匠が悔しそうにヒゲを震わせた。
「元々は大陸を守る守り神……! なんとしても倒すんじゃなくて、正気に戻して救い出さないと!」
「ああ。尾を切り離し、絶対に変えさせる!」
俺が黄金の霊刀を構え、アーサーさんが青龍刀を閃かせたその時——!
「「ガアアアアアアアアッ!!」」
頭上から地響きのような咆哮が轟いた!
空から舞い降りてきたのは、眩い黄金の光を撒き散らす一羽の巨鳥と、あらゆる光を吸い込む漆黒の影を纏った一羽の巨鳥。その胸元には、禍々しく紫黒色に光り輝く師匠の尾が埋め込まれていた。
「来るわ! 光のグラディウスは神速の突撃! 闇のノックスは攻撃を無効化する絶対結界を展開してくる! 前衛陣、構えて!」
ソフィアの鋭い指令が飛ぶ!
「行くぞッ!」
アーサーさんが踏み込み、闘気を最大まで高めて青龍刀を振り下ろす! しかし、闇のノックスが翼を広げると暗黒の結界が展開され、絶大な一撃が波紋のように吸い込まれて消えてしまった。
「なにっ……! 攻撃が一切通らん!」
「ならば……氷閃ッ!」
俺は心の中で三味線のビートを刻み、鋭い冷気の斬撃を放つ! だがその瞬間、神速で空を駆けた光のグラディウスが割り込み、強烈な光の衝撃波で『氷閃』を相殺した!
「くっ……!? お互いの弱点をカバーし合っているのか!」
光のグラディウスの神速の連続攻撃が俺とアーサーさんを襲い、闇のノックスの結界がこちらの反撃をことごとく遮断する。単体でも恐ろしい力を持つ聖獣が、師匠の尾の霊力によって完璧な「光と闇の相互連携」を構築していたのだ。
「トウマさん、アーサーさん! 一旦下がって!」
後方からシオリさんが竹笛を吹き鳴らし、荒れ狂う風の刃を放って敵の追撃を食い止める。俺とアーサーさんは息を乱しながら、間一髪で間合いを取った。
「ダメだ……ただ闇雲に攻撃しても、光のスピードに阻まれるか、闇の結界に防がれて打つ手がない……!」
焦りが募る俺たちの前で、ソフィアは冷静に腰のポーチへ手を伸ばした。取り出したのは、昨日ダンジョンで回収した『火薬の魔石』を特殊加工して作った——高純度の『特製閃光弾』だった。
「ふふ、これを使う時が来たわね。あのダンジョンで回収した魔石……ただの火薬としてではなく、強烈な光と衝撃波を瞬間発生させる閃光弾に加工しておいたの」
ソフィアは知的な輝きを瞳に宿し、タクトを高く掲げた。
「光の魔物には過剰な光で視界と知覚を焼き切り、闇の魔物には結界の波調を乱す一瞬の衝撃を与える! 完璧に見える連携も、この閃光弾で生み出す一瞬の『隙』を使えば必ず崩せるわ!」
「すごい……! さすがソフィアさん!」
「トウマ、シオリ、アーサーさん! 私が閃光弾を放ち、タクトで指示を出すわ。あなたたちの『音』と『霊気』を完全にシンクロさせて……あの二羽を救い出すわよ!」
「了解ッ!!」
ソフィアの手から放たれる作戦の鍵と、導かれる反撃のタクト——光と闇の聖獣を解き放つ決戦は、怒濤の後編へと向かうのだった!
読んでいただきありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価(★)で応援してもらえると嬉しいです!




