第三十七話:打ち解ける絆と、光闇の魔将
『赤結晶の洞窟』から無事に『火薬の魔石』を回収し、索敵と連携の実戦訓練を完璧にこなした俺たちは、再び駐屯施設の作戦会議室へと戻ってきた。
テーブルの上に回収した魔石を置き、ソフィアさんが淹れてくれた温かいお茶を一口すする。洞窟探索の疲れがじんわりとほぐれていくようだった。
そこで俺は、ずっと気になっていた疑問を口にしてみた。
「そう言えばソフィアさんって、おいくつなんですか? たぶん、俺より年上だと思うんですけど……」
俺の問いかけに、ソフィアさんはお茶のカップを置き、少し首を傾げた。
「私の年齢ですか? 24歳ですが……何か問題でも?」
「やっぱり! なら、俺より全然年上じゃないですか!」
俺が思わず声を上げると、シオリさんも「ふふっ」と優しく微笑む。俺は自分の胸を指差した。
「俺……トウマは17歳なんです」
「私も19歳ですよ、ソフィアさん」
「俺は25歳だ」
最後にアーサーさんが腕を組みながら淡々と答えると、ソフィアさんは綺麗な目を丸くして、俺とアーサーさん、シオリさんを順番に見比べた。
「なんと……トウマさんが一番年下だったのですね。指揮に従う身ごなしがしっかりしていたので、もっと上かとばかり思っていました」
「いやいや、見た目通り子供ですよ」俺は照れくさそうに頭を掻いた。「だからその……ソフィアさん、俺たちにそんな固い敬語じゃなくて大丈夫ですよ? 年下なんですから、普通に話してください!」
「そうですね。アーサー様もソフィアさんよりお一つ上ですし、お互い仲間としてもっとフランクに接しましょう」
シオリさんがそう提案すると、アーサーさんも力強く頷いた。
「ああ、俺もトウマも全く気にしない。戦場でも日常でも、敬語を崩した方が連携も取りやすくなる」
「……分かりました。では、私にも敬語は不要ということで、お言葉に甘えさせてもらうわね」
ソフィアさんはクスッと小さく微笑むと、それまでの固い雰囲気を少し崩し、親しみやすい表情を見せてくれた。どこか凛としたお姉さんのような雰囲気に、会議室の空気が一気に和やぐ。
『ぬふふ、若い者同士、距離が縮まるのは良いことじゃのう!』
肩の上の師匠が満足そうに尾を揺らすのを見て、ソフィアさんは表情を引き締め、本題の地図へと視線を戻した。
「……さて、本題に入りましょう。本番の敵——南の大陸を脅かしている魔物の元凶についてよ」
ソフィアさんが差し示した地図の一点には、不気味な赤い印がつけられていた。
「相手は……2人、いえ2匹の魔物よ。それぞれが強力な【光】と【闇】の属性魔力を操る、極めて厄介な存在なの」
「光と闇……!?」
俺とアーサーさんは思わず身を乗り出した。相反する2つの属性を、2体で完璧に使い分けてくるということか。
「ええ。光の魔物は圧倒的な速度と貫通力を持つ広範囲攻撃を放ち、闇の魔物はあらゆる攻撃を無効化する強力な結界と精神汚染を仕掛けてくる。これまで私も何度も軍を率いて討伐に向かったのだけれど……完璧な連携の前に、決定打を与えられずに退却を余儀なくされていたの」
ソフィアさんは俺たちの顔を一人ひとり、力強い瞳で見つめた。
「けれど……今日のダンジョンで見せてくれたあなたたちの連携と、属性を操る霊刀、風のサポート、そして青龍刀の破壊力があれば……絶対に勝てる。お願い、南の大陸を救うために、力を貸してほしい」
「勿論だ! 俺たちの目的とも重なっているみたいだし、断る理由なんてないよ!」
俺が即答すると、シオリさんとアーサーさんも力強く頷いた。
「はい! ソフィアさん、一緒に戦いましょう!」
「フッ、光と闇の連携か。どちらが上か、試してみるとしよう」
みんなの頼もしい返事に、ソフィアさんは胸に手を当て、心からの感謝を込めて微笑んだ。
「ありがとう……! 頼りにしているわ。討伐作戦の開始は明朝。決戦の地に赴くわよ。今夜はしっかりと身体を休めて、明日に備えてちょうだい」
「了解!」
光と闇の属性を宿した2体の強敵。その背後に師匠の尾の存在を感じつつ、俺たちは明日の決戦に向けて、静かに闘志を燃やすのだった——。
読んでいただきありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価(★)で応援してもらえると嬉しいです!




