第三十五話:鳳凰との対面と、秘められた過去
ソフィアさんに案内され、俺たちは巨大な大聖堂の最奥——神秘的な朱色と黄金の光に満ちた謁見の間へと足を踏み入れた。
その中央、炎のように揺らめく神聖な霊気の中で羽を休めていたのは、神々しい輝きを纏った巨大な霊鳥——伝説の神獣『鳳凰』だ。
「——よく来たな、天狐よ」
鳳凰の重厚で透き通った声が、謁見の間に心地よく響き渡る。
『くっくっく、息災であったか鳳凰。身動きが取れんかった我の代わりに、麒麟を追い返して東の大陸を救ってくれたこと、礼を言っておくぞ』
師匠(我)が肩の上で威風堂々と胸を張ると、鳳凰は静かに羽を揺らした。
「相変わらずの口の聞き様だな。……だが天狐よ、あの暴走の原因だが、千年の時が流れた今も尚、ただ『強い闇の力』が関与していたということ以外、詳しい真相は分かっておらんのだ」
『ぬ……!? 千年も経っておいて、まだ何も分からんのか! 呆れた奴じゃな!』
「……青龍もその際の深傷により、今も西の大陸の奥深くに眠りについておる。北の大陸は断崖絶壁に囲まれ容易には立ち入れぬ土地。唯一存在する港に密偵を送り込んだが、一向に吉報が届かず戻っても来んのだ」
すると師匠は、後ろに控える俺たちを振り返って顎をしゃくった。
『まあ良い。それはそうと鳳凰よ、我が後ろにおる若者たちは、天神と九十九の末裔であるトウマとシオリじゃ。そしてこちらは竜人の戦士アーサーである』
「初めまして、トウマです!」
「シオリと申します」
「竜人族のアーサーと申します」
俺たち三人が一斉に丁寧にお辞儀をすると、鳳凰の鋭い瞳がカッと見開かれた。
「何……!? 天神フウマの末裔だと……!?」
鳳凰は感慨深そうに俺を見つめ、静かに羽を伏せた。
「……かつて東の大陸で麒麟が暴走した折、天神フウマが自らの命を賭して放った捨て身の一撃……それにより麒麟は決定的な痛手を負った。私が駆けつけた時にはフウマの力のおかげで麒麟を追い返すことができたのだ。……あと数刻、私が早く到着していれば、フウマを死なせずに済んだものを……、しかもその後そなた達の一族は途絶えたと聞く。すまなかった。」
「へぇ、ご先祖はそんなに強かったんだ……」
俺が自身のルーツとご先祖様の壮絶な過去に言葉を失っていると、鳳凰は表情を引き締め、雰囲気を一変させた。
「……昔話はここまでだ。天狐よ、そして旅人たちよ。現在、この南の大陸は突如として現れた魔物の群れに襲われ、塗炭の苦しみに喘いでおる。頼む、我らに力を貸してはくれぬか?」
「……それって、もしかして師匠の『尻尾』が関係してるんじゃ……?」
俺がポツリと呟くと、鳳凰は不審そうに首を傾げた。
「尻尾……だと?」
俺はこれまでの旅の経緯と、師匠の封印された尾が各地で魔物を活性化させたり、悪用されたりしている事実を丁寧に説明した。事情を理解した鳳凰は、ニヤリと力強く微笑んだ。
「なるほど……そういうことか。天狐よ、ならば東の大陸を救ったあの日の貸し、ここで返してもらうぞ。——ソフィア!」
「はっ!」
ずっと傍らに控えていた軍師ソフィアが、一歩前に出て恭しく頭を下げた。
「トウマたちと共に赴き、南の大陸を脅かす魔物の源流を絶て。お前の采配と彼らの絆があれば、必ずや道を切り拓けよう」
「御意にございます、鳳凰様」
ソフィアさんが凛とした表情で俺たちに向き直り、静かに頷く。
こうして俺たちは、頼もしい軍師ソフィアさんを仲間に加え、南の大陸を救う新たな戦いへと立ち上がるのだった——!
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