第三十四話:神聖都市パラドラと、軍師ソフィア
トリスの港町で路資金を蓄えた俺たちは、南の大陸の中央に位置する目的地——神聖都市『パラドラ』を目指して街道を進んでいた。
道中、緑豊かな南国の景色を眺めながら、俺は肩の上の師匠に問いかけた。
「そういえば師匠、鳳凰に会ったらまずは感謝しないとダメだぞ? ちゃんとお礼言えるか?」
『ぬ? なぜ我がお礼など言わねばならんのだ!』
師匠は四本の尾をフサフサと揺らし、不満そうにヒゲをぴんと張った。
「だってシオリさんが言ってただろ? 昔、東の大陸が危機に陥った時、鳳凰が助けてくれたって」
『むぐぐ……まあ、我がフウマに封印されて身動きが取れんかった時期に、暴れておった神獣『麒麟』を追い払い、東の大陸の崩壊を防いでくれたのは事実じゃがな……。ふん、せいぜい「ご苦労であった」くらいは言ってやるかの』
「素直じゃないなぁ。でも、鳳凰って本当にすごい神獣なんだな」
「ええ。東の大陸を救ってくれた神獣様にお会いできるなんて、緊張しますね」
シオリさんが竹笛をそっと抱きしめ、アーサーさんも静かに頷く。
「ああ。天狐様の尾の情報も持っている可能性が高い。会えれば一気に旅が進むはずだ」
◇
数日の旅を経て、俺たちはついに南の大陸の中央に聳え立つ大都市——パラドラへと到着した。
「うわあ……すごい綺麗な街だ……!」
街に踏み入れた瞬間、俺はその美しさに思わず息をのんだ。
青空に映える純白の石造りの建物がいくつも立ち並び、街の中心には、天を衝くほど巨大で壮麗な『大聖堂』が鎮座している。南国の鮮やかな花々と白い街並みのコントラストが、まるで絵画のように美しい。
「あの大きな大聖堂に、鳳凰様がいらっしゃるのですね」
俺たちはさっそく、鳳凰に謁見するため大聖堂へと向かった。
しかし、大聖堂の巨大な門の前までたどり着いたものの、厳重な甲冑に身を包んだ兵士たちに立ちはだかられてしまった。
「止まれ! ここから先は立ち入り禁止だ!」
「あの、俺たち鳳凰様に会いに来たんです! 危険な者じゃありません!」
「はっ! 毎日何十人もの旅人が同じことを言って押しかけてくるのだ! 現在、魔物の活性化により厳戒態勢中である! 用のない者は立ち去れ!」
「そんな……! そこをなんとかお願いできませんか!?」
俺たちが困り果てて門前で押し問答を続けていると、背後から凛とした澄んだ声が響いた。
「——何事ですか」
振り返ると、そこに立っていたのは……トリスの港町で魔物の群れを鮮やかに退治していた、あの女性指揮官だった。
「あ! あなたはあの時の……!」
女性は俺たちを一瞥すると、兵士に向かって静かに尋ねた。
「この者たちが何か?」
「はっ、ソフィア様! この者たちが鳳凰様への謁見を求めて聞き入れず……」
ソフィア——そう呼ばれた彼女は、この国の軍勢を率いる軍師だったのだ。ソフィアは冷徹とも思える知性的な眼差しで俺たちをじっと見つめると、ふと俺の肩の上にいる師匠へと視線を止めた。
『ぬ……? なんだその目は。我の美しさに惚れ惚れしたか?』
四本尾をなびかせて偉そうに胸を張る師匠。その姿を見た瞬間、ソフィアの綺麗な瞳が大きく見開かれた。
「……その姿。ただの妖狐ではありませんね。溢れ出る圧倒的な神気……まさか、東の大陸の伝承に名高い『天狐』様ですか?」
『クッカッカ! ほう、若い娘にしては目が肥えておるではないか! さよう、我こそが天狐なるぞ!』
「まさか本物の天狐様がお越しになるとは……失礼いたしました」
ソフィアは胸に手を当て、礼儀正しく一礼した。そして俺たちに向き直ると、静かに語りかけた。
「私の名はソフィア。この国の軍師を務めております。東の大陸の守護神たる天狐様と、そのお連れの方々であれば、鳳凰様もお会いになる価値がありましょう。私が大聖堂の中へご案内いたします」
「本当ですか!? 助かった……! ありがとうございます、ソフィアさん!」
門番の兵士たちが驚愕する中、俺たちはソフィアの導きによって、ついに大聖堂の扉をくぐるのだった——!
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