第三十二話:氷閃の特訓と新たな船出
ドワーフの国『赤鉄の城塞』をあとにした俺たちは、西の大陸の南端にある港町『ラタ』を目指して、街道を南下していた。
道中、広がる荒野の只中で、俺は一人立ち止まり、霊刀を構えていた。
師匠の四本目の尾を取り戻したことで、「氷の霊気」が芽生えていたのだ。
「フッ……ハッ!!」
俺は心の中で三味線のテンポを刻み、体に染みついた拍子に合わせて一気に集中を高めた。体の中で鳴り響くリズムに乗せて、溢れ出た冷気を右手の黄金の霊刀へとダイレクトに流し込む。
「見切れ……氷閃ッ!」
踏み込みとともに刀を閃かせた瞬間、刃筋に沿って激しい冷気が走り、目の前にあった巨大な岩塊が一瞬で凍りつき、スパッと真っ二つに裂け割れた。断面からは白い冷気がモウモウと立ち上っている。
「よし……! 氷の霊気の感覚、掴めてきたぞ!」
俺が額の汗を拭いながら手応えを感じていると、肩の上でフサフサの四本尾を揺らした師匠が、満足そうにヒゲを撫でた。
『くっくっく、筋が良いぞトウマ。炎は威力を高め、雷は速度と貫通力を増す。そして氷は相手の動きを鈍らせ、斬撃の軌道を凍てつかせて固定する特質がある。状況に合わせて巧みに切り替えるのじゃぞ』
「はい、師匠!」
「すごいです、トウマさん! 炎、雷、風に続いて氷まで……! 刀一本でここまで冷気を扱えるようになるなんて!」
シオリさんが竹笛を胸に抱え、感嘆の声を上げる。
アーサーさんも青龍刀に手を置き、感心したように頷いた。
「ああ、技の幅が一段と広がったな。それにしてもここまでの霊気を制御できるようになるとは。トウマの成長には目を見張るものがある」
「仲間みんなのサポートと、道具を新しくしてもらえたおかげですよ。移動中も背中が軽くて本当に助かってます!」
新しく身につけた『氷閃』の感触と、進化した道具の恩恵を感じながら、俺たちは再び港町ラタへの道を急いだのだった。
◇
数日の旅路を経て、俺たちはついに西の大陸の最南端——港町『ラタ』に到着した。
潮の香りとウミネコの鳴き声、そして立ち並ぶ白壁の建物。活気あふれる市場を通り抜け、俺たちは巨大な木造船が何隻も停泊する埠頭へと向かった。
「ここがラタの港町か……! 海を見るのは久しぶりだな!」
「綺麗……青くて広い海ですね。あの水平線の向こうに、南の鳳凰の大陸があるのですね」
シオリさんが潮風に長い髪をなびかせながら、嬉しそうに海を見つめる。
俺たちはトリスの港町へ向かう定期旅客船のチケットを買い、揺れるタラップを渡って大きな船の甲板へと乗り込んだ。
ゴーッ……と大きな汽笛が響き渡り、船がゆっくりと岸壁を離れていく。小さくなっていく西の大陸の港町を眺めながら、俺たちは甲板の柵に並んで立ち、風を受けていた。
「トウマさん。新しい大陸……どんな場所なんでしょうね」
シオリさんが隣で柔らかく微笑む。
「ドワーフの王様は『生命と炎の土地』って言ってたな。鳳凰が治める場所か……師匠の新しい尾の情報も、何か掴めるといいんだけど」
『ぬふふ、それも楽しみじゃが、南の大陸には珍しい果物や美味い魚介料理がたくさんあると聞くからのう! 我はそれが楽しみでならんわい!』
「もう、師匠は相変わらず食いしん坊なんだから……」
俺とシオリさんが苦笑いすると、アーサーさんも水平線を見つめながら口を開いた。
「南の大陸か……西の大陸から出るのは初めてだからどんな場所なのか楽しみだな」
新しい大陸への期待に、胸が高鳴る。今の俺たちなら、どんな困難が来ても乗り越えられるはずだ。
◇
青い海を渡ること数日。
見渡す限りの水平線の向こうに、緑豊かな広大な陸地が見えてきた。熱帯の力強い樹木が生い茂り、赤や黄色の鮮やかな鳥たちが空を舞っている。
「みんな、見ろ! 陸地だ!」
アーサーさんの声に引き寄せられ、俺とシオリさんは船首の欄干へと駆け寄った。
「あれが……南の大陸……!」
港が近づくにつれて、エメラルドグリーンの海に映える美しい街並みが見えてきた。南の大陸の玄関口——トリスの港町だ。
俺たちは期待と高鳴る胸を抱えて、トリスの地にしっかりと足を踏み下ろすのだった——!
読んでいただきありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価(★)で応援してもらえると嬉しいです!




