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第三十一話:響く大鉄の音色と、南の大陸への道

「……おい、ちょっと待て」


 背後からガルドさんに呼び止められ、俺たちはピタリと足を止めて振り返った。

 腕を組み、手ぬぐいで汗を拭ったガルドさんが、不敵な笑みを浮かべて俺たちを見つめている。


「完成祝いも無しでサクッと帰ろうなんて、ドワーフの国じゃあ許さねえぞ。最高に仕上がったその『神奏具』の初鳴らし……ドワーフの鍛冶屋どもと一緒に、盛大にやろうじゃねえか!」


 ガルドさんが口笛を吹き鳴らすと、工房の表から「おおおっ!」という豪快な男たちの歓声が湧き上がった。


 表へ出ると、そこには大小さまざまな太鼓や鉄器、打楽器を手にしたドワーフの職人たちが集まっていた。中央には大きな焚き火が焚かれ、香ばしい肉の焼ける匂いとなみなみと注がれた酒樽が並べられている。


「ワハハハ! 宴の始まりだぁーっ!」


 ドワーフの一人が大太鼓をドンドンと打ち鳴らすと、地響きのような重低音が街中に響き渡った。


「トウマさん、行きましょう!」

「フッ、乗るしかないようだな」


 シオリさんとアーサーさんも顔を見合わせ、楽しそうに笑う。

 俺は体内に収納していた三味線を念じて手元に呼び出し、力強く撥を構えた。


 ——ベベンッ……!!


 太鼓の重低音に重ねて三味線を力強くかき鳴らす!

 続いてシオリさんの透き通る竹笛の音が夜空へと駆け抜け、アーサーさんの重厚な二胡が龍の唸りのように重なる。ドワーフたちの打楽器の打ち鳴らす猛烈なリズムと、俺たちの演奏が合体し、街全体を揺らす圧巻の大演奏会が幕を開けた!


「ガハハハ! 最高だ! 酒が美味いぞ!」

「東の演奏家たち、大したものだ!」


 職人たちも大興奮で太鼓を叩き、踊り、肉を喰らい、酒を酌み交わす。

 三味線から解き放たれる音色は格別で、弾けば弾くほど自分の霊気と一体化していくのが分かった。宴は夜が更けるまで盛大に盛り上がったのだった。


 ◇


 翌朝。宴の余韻が残る中、俺たちはドワーフ王ゴルドー様のもとを再び訪れていた。

 謁見の間でゴルドー王にお礼を伝えようとした時、アーサーさんがふと真剣な表情で口を開いた。


「ゴルドー様。宴の熱気ですっかり聞きそびれてしまっていたのですが……一つお伺いしたいことがあります。この大陸に眠ると言われる『青龍様』について、何かご存知でしょうか?」


 アーサーさんの問いかけに、ゴルドー王は立派な髭をさすりながら重々しく頷いた。


「うむ……青龍か。竜人の客人よ、我が国に伝わる古い言い伝えならあるぞ」


 ゴルドー王は窓の外、遙か南の空を指差した。


「この赤鉄の城塞よりさらに南……雲を突き抜けるほどの極高の山脈にある『龍神の山』。その山頂の秘境に、古の青龍が深く眠っておると言われておる」


「龍神の山……!」

 アーサーさんの瞳に強い光が宿る。


「ただしな」とゴルドー王は言葉を続けた。

「そこは龍神の強い神気が吹き荒れる絶対の聖域。古来より足を踏み入れた者は一人もおらん。本当に青龍が眠っておるのか、ただの伝説なのか……確信までは持てんのだ」


 アーサーさんが考え込むように顎に手をやると、俺の肩の上で四本目の尾をなびかせた師匠(天狐)が、毛づくろいをしながら気楽そうに鼻を鳴らした。


『ふむ……まあ、急いで起こす必要もないなら、今は寝かしとけばよいではないか。龍の気まぐれに付き合っておったらキリがなさそうじゃしのう』


「師匠、相変わらず大雑把だな……」


 俺が苦笑いしていると、ゴルドー王が思い出したように手を叩いた。


「そういえば天狐様、探しておられる『尾』の情報だがな。あいにくこの西の大陸ではそれらしい伝承や気配は一切聞かぬ。……だが、南の大陸はどうだ?」


「南の大陸……ですか?」


 シオリさんが問いかけると、ゴルドー王は力強く頷いた。


「うむ。南の大陸は、伝説の神獣『鳳凰(ほうおう)』が治めると言われる生命と炎の土地だ。あそこなら霊力に満ちた秘境も多く、天狐様の尾の情報も得られるかもしれん。旅の目的地として向かってみるのはどうだ?」


「南の鳳凰の大陸……!」


 俺とシオリさんは顔を見合わせた。

 西の大陸で三味線を完全復活させ、仲間たちの楽器も強化され、師匠の四本目の尾も回収できた。旅の仲間として、次に向かうべき場所が見えてきた気がした。


『クッカッカ! 鳳凰の大陸か、悪くないのう! 我の尾を探すついでに、美味いものでも食いに行くとしようぞ!』


「もう、師匠はすぐ食べ物の話になるんだから……」


 俺たちのやり取りを見て、アーサーさんも静かに微笑んだ。


「青龍の山へ向かう道も、南へ続く。ならば決まりだな。次は『南の大陸』を目指そう」


「はい! トウマさん、新しい大陸への旅ですね!」


 シオリさんが嬉しそうに微笑み、俺の手をそっと握りしめてくれた。

 進化を遂げた新しい三味線を胸に宿し、俺たちは感謝を込めてゴルドー王とガルドさんに別れを告げ、新たな冒険の舞台『南の大陸』へと足を踏み出すのだった——!



読んでいただきありがとうございました!


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