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第二十話:龍鳴渓谷の決戦(前編)

 赤茶色の断崖絶壁が切り立つ『龍鳴(りゅうめい)渓谷』。

 奥へ進むにつれて風はどんどん激しさを増し、肌を刺すような鋭い風圧が俺たちの進路を阻む。


「ぐっ……! すごい風だ……前が見えづらい!」

「トウマさん、私の風の結界に入ってください!」


 シオリさんが竹笛を吹き、俺たちの周囲に風を和らげる円形の結界を張ってくれる。


「助かる、シオリさん!」


『ぬう……この荒れ狂う風の質、間違いないぞ。我が三本目の尾の霊気じゃ。だが、かなり邪悪な気配に汚染されておる!』


 俺の肩の上で、師匠(天狐)が二本の尾をピシッと逆立てて警戒を強める。


「ふむ……奴め、我々を歓迎する気はないようだな」


 アーサーは、背中の巨大な『青龍刀』の柄に手をかける。


 ゴオオオオオオオッ——!!!!


 突如、峡谷の天井を突き破るように、巨大な緑色の旋風が巻き起こる。

 その嵐の中心から現れたのは——全身を硬い緑色の鱗で覆われ、九尾の尾(疾風の霊核)を額に埋め込んだ巨大な龍、『暴風龍(クラックス)』だ!


『ギャアアアアアオオオンッ!!』


 咆哮一発。それだけで周囲の岩山がメリメリと音を立てて崩れ落ちる。


「出たな、暴風龍(クラックス)! この街道をお前の好きにはさせん!」


 アーサーは豪快に叫ぶと、身の丈ほどもある青龍刀を軽々と一閃させた!


 ズバァァァンッ!!


 青龍刀から放たれた青い斬撃波が、暴風龍(クラックス)の放った風の刃を正面から叩き潰す!


「す、げぇ衝撃波……! 凄いよアーサーさん!」

「ハハハ! ほめ言葉は奴を倒してから受け取ろう! トウマ、シオリ殿、合わせられるか!?」


「もちろん!」

「はい、いつでもいけます!」


 アーサーは背中からもう一つの相棒——木製の弦楽器『二胡(ニコ)』を取り出し、左手で抱え込んだ。青龍刀を右手に構え、左手で二胡の弓を引く独創的なスタイルだ!


 キィィン……と、哀愁漂う重厚な二胡の音色が峡谷に響き渡る。

 アーサーの青龍刀に青い竜の気が急速に集まり始めた!


「なるほど……二胡の音色で霊気を高めてるのか! なら俺も音で合わせるぜ!」


 俺は背中の三味線を構え、撥(ばち)を激しく打ち鳴らした!


 ベンッ! ベベンッ!!


 俺の三味線の激しいテンポと、アーサーさんの力強い二胡の音色が重なり合い、戦場に壮大なアンサンブル(合奏)が巻き起こる!


「おおおっ……! 腹の底から力が湧いてくるぞ! 素晴らしい演奏だトウマ!」

「アーサーさんの二胡も最高にクールだぜ!」


『ギャアオオンッ!!』


 自分たちの領域で奏でられる音色に苛立ったのか、暴風龍(クラックス)は額の『疾風の霊核』を激しく輝かせる。

 次の瞬間、空全体を覆うほどの巨大な緑色の竜巻が生成され、俺たちを丸呑みにせんと襲いかかってくる!


「来ます、トウマさん! 巨大な嵐です!」


「シオリさんは風の結界で俺たちの足場を頼む! アーサーさん、あの竜巻を切り裂くぞ!」


「おうともよ! ヤツの好きにはさせん!、竜人族の誇りにかけて——突破する!!」



読んでいただきありがとうございました!


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