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第十二話:歓楽都市・大和と、初めての合奏

 俺たちの視界に巨大な朱色の城門と、どこまでも広がる黒屋根の町並みが飛び込んできた。


「うわあぁぁぁ……! すっげえ……!」


 思わず歓声を上げてしまった俺の横で、シオリさんも目を輝かせて佇んでいた。


「あれが……東の大陸最大の都、【大和(やまと)】です……!」


 整然と並ぶ木造の商家や楼閣、道を行き交う多種多様な人々、そして遠くに見える巨大な五重塔。今までいた田舎村や小さな宿場町とは比べものにならないスケールと活気だ。


『フン、昔と変わらず騒々しい町じゃのう。まあ、人が多ければそれだけ噂も集まるというものじゃ』


 肩の上の師匠(天狐)が鼻を鳴らす。俺たちは人波に紛れるようにして、巨大な朱塗りの大門を潜り抜け、大和の都へと足を踏み入れた。


 ◇


「いらっしゃい! おうおう兄ちゃん、いい素材持ってるじゃねえか!」


 都に入ってまず向かったのは、大きな商人が集まる大通りの中央ギルド(商会)だった。

 俺が道中の洞窟で仕留めた『岩亀の甲羅』と、霊刀で傷つけずに削り取った『月光銀鉱』をカウンターに並べると、眼光の鋭い鑑定士の親父が目を丸くした。


「傷ひとつない銀鉱石に、最上級の甲羅……! これなら……そうさな、金貨三十枚でどうだ!?」

「き、金貨三十枚……!?」


 思わず目玉が飛び出そうになった。金貨一枚で普通に一週間は美味い飯を食べて遊べる計算だ。つまり、しばらくは遊んで暮らせる超大金である!


「よし売った! ありがと親父さん!」

「毎度あり! いい腕の冒険者さんだな!」


 重みのある革袋を受け取り、ギルドを出た俺は、シオリさんの前でニッカリとドヤ顔を決めた。


「見たかいシオリさん! これでしばらくは超豪華な宿に泊まれるし、美味しいものも食べ放題だよ!」

「ふふっ、天狐様も喜びますね! 」


 シオリさんに優しく微笑まれて、俺のテンションは最高潮に達していた。


『おい弟子よ、金が入ったのなら当然……わかっているじゃろうな?』

「分かってるって! 師匠には特大の高級油揚げ、シオリさんには一番美味しい料亭のご飯をご馳走するよ!」

『クッカッカ! 気が利くではないか!』


 ◇


 その日の夜。

 都の中でも一際きらびやかな灯火が揺らめく歓楽街の、一番大きな高級酒場『千客万来亭』。


 美味しい料理とお酒でお腹を満たした俺たちは、店主の許可を得て、中央の小さなステージへと上がっていた。


「さあ、シオリさん。大和での初演奏、いっちょカマしますか!」

「はい、トウマさん! よろしくお願いします!」


 ざわざわと騒がしい酒場の客たちが、「なんだなんだ? 綺麗な巫女さんと三味線弾きか?」と物珍しそうに視線を向けてくる。


 俺は深く息を吐き出すと、撥(ばち)を強く握りしめた。


 べベン——……!


 力強い静寂を打ち破る三味線の音が、酒場全体に響き渡る。

 客たちの雑談が一瞬でピタリと止まった。そこへ、シオリさんが朱色の竹笛を口元に当て、透き通った息を吹き込む。


 ヒョロロロ〜……ピィパラリ……!


 三味線の重厚でダンサブルなリズムと、風のように駆け抜ける哀愁を帯びた竹笛の音色。

 昼間の練習の成果が、大和の夜の空気と見事に共鳴し合う。テンポを上げて疾走感を出すと、客たちの足拍子が自然と響き始め、酒場全体が熱気に包まれていった。


「う、美味い……! なんだこの演奏は!?」

「三味線と笛が……まるで生き物みたいに会話してるぞ!」


 曲がクライマックスを迎え、俺とシオリさんがバチッと目を合わせて最後の一音を同時に鳴らすと——


 ドドオオオッ!!


 割れんばかりの歓声と拍手が酒場を揺らした。


「アンコール! アンコール!」

「お兄さん! お姉さん! 素晴らしいぞ!」

「投げて! 投げ銭だ!!」


 ジャラジャラジャラッ! と、ステージ上に金貨や銀貨が雨のように投げ込まれていく。あまりの反響に、店主が目を見開いて飛んできた。


「すごい! すごいぞ君たち! ぜひ明日からも毎晩うちで弾いてくれ! 報酬は弾むから!」


「やったね、シオリさん!」

「はいっ、トウマさん! すごく楽しかったです!」


 歓声の中でシオリさんが弾けるような笑顔を見せ、俺の手をぎゅっと握りしめてくれた。その温もりと柔らかさに、俺の心臓は三味線の音よりも激しく跳ね上がるのだった。


 ◇


 熱狂の初ステージを終え、大満足でバックヤードへ戻ってきた俺たち。

 大量の投げ銭を回収しながら、師匠が油揚げを咥えたまま、客席の方をじっと見つめていた。


『……トウマ。客席の奥で、おぬしたちの演奏をじっと見ていた“あの男”に気づいたか?』

「え? あの男?」


『うむ……只者ではない気配を纏っておった。……どうやら、この都・大和にも、一筋縄ではいかぬ噂と影が蠢いているようじゃな』


「面倒な事に巻き込まれなきゃいいけど……」

読んでいただきありがとうございました!


初めての合奏、好評に終わりました

二人共楽しく演奏していましたよ

次回、大和の影


少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価(★)で応援してもらえると嬉しいです!

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