カガミ領にて④
今回、残酷な表現とちょっと汚い表現があります。
カガミ領に来て早くも3日目。
もはや、次の一日が我らの最後の滞在となるだろう。(世紀末救世主風)
でも、明日はアンと買い物の約束もあるし、森で遊ぶのは最後だろうな
オレは哀しみを背負いながら、今日も今日とて秘密基地へと向かう。
毎日、秘密基地に来ては取り留めもなく4人で遊んでいた。
秘密基地の周りでかくれんぼをしたり、鬼ごっこをしたり、お菓子を食べてくつろいだり、とても楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
……だからだろうか。
この2日間は、日没まで余裕を持って屋敷に帰るようにしていた。
でも……今日は、何となく「帰ろうか。」の一言が誰からも出てこない。
何となく、基地の中で皆で座っていた。
ふと、カレンが基地の外へ出ていく。
まあ、いわゆる『お花摘み』ってやつだろう。
……さて、いつまでもこうしているわけにもいかないよな。
カレンが帰ってきたら、さすがに帰らないとな……。
……キャーーーーー!
「「「!!!!!」」」
今の声はカレン!?
オレは、そう考えるよりも先にドアを蹴破る勢いで外に飛び出す。
「あ、ちょっと。」
「兄さま!」
「二人は危ないからここにいるんだ!!」
呼び止める二人にオレはそう叫び、俺は声のした方向へ全力で駆けていく。
そうして、いくらもしないうちに、カレンの姿が見えてきた。
カレンの目の前にはボロ布を纏った、緑色の肌をした小鬼がいた。
手には棍棒を持っている。
カレンは震えて動けないみたいだ。
無理もない。まだ10歳やそこらの子にとって独りぼっちでの魔物との遭遇は酷ってものだろう。
早く助けなければ!!
しかし……近づくにつれて……
……視界がブレる。
……足が震える。
おいおい、オレまでビビッてどうするんだよ。
「ゲギャギャギャ!!」
そんなことをしている間にも、小鬼は不快な声をあげながらカレンに向って棍棒を振り上げた。
まずい!
動けよ!オレの足!
男だろ!
皆を守るんだろ!
『強く在れ、武。』
ふと、脳裏にそんな声が流れた。
「うわああああああああ!!!」
気が付けばオレはカレンに向かって駆け出していた。
「タケルッ!?」
俺に気付いたカレンが声をあげる。
間一髪、カレンと小鬼の間に身を入れるとカレンをかばうように抱き寄せる。
「……ガッ!」
刹那、オレは肩のあたりに強い衝撃を受けて倒れこんでしまう。
「……だ、だいじょうぶか?カレン?」
「な、なんで?……!?タケル!!あぶない!!」
「クッ」
オレはカレンの声に反応し、何とか横へ転がりすぐに体を起こす。
元居たところを見ると、小鬼の棍棒が振り下ろされていた。
左肩がうまく動かせないな。
不幸中の幸い、利き腕が無事でよかった。
アドレナリンのおかげかほとんど痛みは感じない。
「カレン!下がってて!」
「あ、あなた。ケガを……。」
「はやくっ!」
「……うん。」
「ファイヤ!」
オレは魔法で小鬼に攻撃を仕掛ける。
不意を受けた小鬼はまともに火の玉の直撃を受けてくれたようだ。
「ファイヤ!」
追撃とばかりにもう一発魔法を打ってみるが、今度は躱されてしまった・
「グギャーー!」
体表に黒い焦げを作った小鬼は、激昂しながら襲い掛かってくる。
動きが単純になっていたのでオレは、振り下ろされた棍棒を躱し、カウンター気味に右ストレートを右頬にお見舞いしてやる。
「ギャ!」
殴られた小鬼はたたらを踏み、棍棒を取り落とす。
すかさずオレはもう一撃パンチをお見舞いすると、小鬼は後ろへ倒れた。
このままとどめを刺してやる!
ガバッ!
「なにっ!?」
不用意に奴に近づいてしまったオレは、倒れ込んだ状態からいきなり跳びかかってきた小鬼に意表を突かれてしまう。
「くそっ!」
何とか右手で奴の頭を押さえているが、このままじゃジリ貧だ。
ボンッ!
「ギャーーーーーー!!」
すると、小鬼の背中で何か爆発音がする。
「タケル!今よっ!」
そうか!今のはカレンの魔法か!
小鬼が怯んだ隙を逃さず、奴の頭を掴んだオレは全体重をかけて奴の首をへし折る。
グキッ……
いやな手応えと音を感じ、小鬼は今度こそ首をあらぬ方向に曲げて倒れこんだ。
「……はあ……はあ。」
……やったのか。……助かったのか。
左肩と右拳がじくじくと痛み出す。
下を向くと首の曲がった小鬼。
「うっ――。おぇぇぇーーー。」
ビチャビチャ。
ふいに猛烈な吐き気と不快感に襲われ、オレは胃の中のものを吐き出す。
あの嫌な感触と音が蘇り、オレの体は震え出す。
「タケル!?」
カレンが呼びかけてくるが、まともに答えることが出来ない。
震えが止まらない。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
フワッ……。
突然柔らかい何かに包まれた。
「大丈夫よ。大丈夫だから。タケル……。」
気が付くと、カレンが抱きしめてくれていた。
「大丈夫だから。落ちついて、タケル。」
抱きしめて、背中をさすり続けてくれる。
そうされているうちに、段々と震えも気持ち悪さも治まっていくのを感じる。
やがて、震えは完全に止まり、吐き気も治まってきた。
「うん。もう大丈夫みたいね。」
カレンは、優しく身を離す。
「……ぁ。」
人肌が無性に恋しくなっていたオレは寂しさとともにそんな声を漏らしてしまった。
「ふふ。ありがとう、タケル。助けに来てくれて。」
「いや、カレンが無事で本当に良かったよ。」
……!?
「カ、カレン。それ……。汚しちゃってごめん。」
カレンの体にはオレの血や吐しゃ物が付いてしまっていた。
「バカね。こんな傷だらけに……なりながら、わたしを……守って……くれたのに、そんな……こと、気にするはず……ないじゃない。」
カレンは言葉の途中から、感極まってしまったのか泣き出してしまった。
「本当に……本当に……ありがとう…………。」
そう言って泣き笑いの表情を作るカレンは、月並みな表現だがとてもキレイだった。
ああ……父ちゃん、爺ちゃん。
オレ、守りたいものを守れたよ。
祝!!陥落!!
カガミ領編はあと一話で終わります。(予定)




