岐路と別れ
お久しブリーフ
「いててて。」
落ち着いてきたら腕やあちこちが痛みだしてきた。
これは『なんだ……終わったとたんにまた痛みが……でももういいんだ……オレたちは勝ったんだ』現象だな。
「ち、ちょっと。大丈夫なの?タケル。」
カレンが心配そうに問いかけてくる。
左肩……折れてるかな?
ダメだ。痛い顔をするとカレンが心配してしまう。
ここは精神コマンド『ド根性』の出番だ。
「うん。ちょっと気が抜けただけだよ。大丈夫、歩けるよ。それより暗くなる前に早く帰ろう。」
「そ、そうね……。またさっきの奴が出てくるかもしれないものね。」
「まずは、秘密基地まで戻ろう。ウェンディとクレアも心配しているだろうし。」
「でも……無理はしないでよ。」
「もちろん。」
ん?よく見るとカレン、少し震えているな。
無理もないか。
10歳の女の子があんなに怖い目にあって、また奴みたいなのが来ないとも限らない状況だ。
……よし!
ぎゅっ!
オレは無事な右手でカレンの手を握る。
「え?」
「頼りないかもしれないけど……カレンは僕が守るから。安心してよ。」
「くすっ。そんなボロボロの体で何言ってるのよ。それに普通は逆よ、逆。今度はわたしがタケルを守るんだから。……でも、ありがとう。」
「よし、行こう。」
「待って!」
「え?」
歩き出そうとしたオレをカレンが止める。
「みんなの前だと恥ずかしいから……。タケル、あらためてありがとう。とてもかっこよかったよ。そして、変な態度を取っちゃてて今までごめんね。」
そう言ってカレンは頭を下げる。
「こうしてお互い無事だったんだし、仲良くなれたんだからもういいよ。カレン、これからもよろしくね。」
「やっぱりあなたは素敵ね。……わたしさ、男が嫌いだったんだ。」
「え?」
「だらしない。なよなよしてる。いつも偉そう。そのくせ何もできない。なのにみんな男ってだけで特別扱い。」
うわ~。この世界の男、結構ひどいみたいだな。
「はじめて、父と呼ばれているものに会ったときに『気持ち悪いから近寄るな。』なんて言われたわ。お母さまも後で慰めてくれたけどやっぱり仕方ないって感じで……。それから今まであった男はみんなどうしようもないものに見えたわ。実際どうしようもない奴らばかりだったけど。」
「……なんだよそれ。自分の娘にそんなことを言えるなんて……。」
ありえない。
なんだその胸糞悪い奴は。
「タケル……。ありがとう。大丈夫よ、もう吹っ切れてるから。だからそんな怖い顔しないで。」
「カレン……。」
いかんいかん。
つい顔に出てたようだ。
「ふふ。やっぱりあなたは違うわね。」
「当たり前だよ。こんなに可愛いカレンになんてことを。」
「え//?」
「あ、いや、ごめん。何でもないよ。さて、いい加減戻ろうか。」
つい、本心を口走っちゃったオレは気恥ずかしくなり、カレンの手を引き歩き出す。
「-----------------(ぼそっ)。」
「え?」
歩き出したときに何かカレンがつぶやいたけどよく聞き取れなかったオレはつい聞き返す。
「……なんでもないわ!さあ、戻りましょう!」
そうして、オレたちは帰路に着く。
そして、秘密基地のドアを開けた途端……。
「兄さま!ご無事でしたか。……!!」
勢いよく駆け寄ってきたウェンディが、オレの姿を見て驚く。
「どどどど、どうしたのですか。兄さま。」
「だ、大丈夫なの?タケル君?」
クレアも心配そうだ。
「いやー、実は……。」
かくかくしかじか。
オレはさっき遭ったことを説明する。
「兄さま、本当にご無事でよかった。兄さま。兄さまぁぁぁ。」
おっと、話を聞いたウェンディが泣き出してしまった。
え?ちょっと待て。
「いたたたたたた。」
「兄さまぁぁ!兄さまぁぁぁ!」
感極まったウェンディはなんとオレに抱きついてきた。
「だ、大丈夫?タケル君?」
ウェンディさん!そこは!そこは!らめえ!
「ちょっと!タケルはケガしてるのよ。離れなさい!」
すかさず、カレンがウェンディを引きはがしてくれた。
「まったく……。大丈夫?タケル?」
優しくオレの体を労わってくれるカレン。
「う、うん。ありがとう、カレン。」
「へえ……。」
「むーーーー。」
「あ、ごめんな。ウェンディ。」
引きはがされて、むくれているウェンディをなだめる。
「兄さま。いつの間にカレンさんとそんなに仲良くなったの。」
「いや、まあなんやかんやとね」
「ふふ。そうよ、わたしとタケルは一緒に苦難を乗り越えた『特別な関係』ですもの。」
やけに特別な関係に力が入っているような。
でも、うれしいな。
「むーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
ウェンディは屋敷までの帰り道、ついぞ機嫌を治すことはなかった。
オレの右腕にへばりついては、カレンを睨んでいた。……歩きにくかったです。
カレンはカレンで余裕な感じで微笑んでいるけど、心なしか目が笑っていない。
……おいおい、なんでここが険悪になるんだよ。
クレアは意外と空気を読むタイプなのか、静かに気配を消している。
そして、会話もほぼ無いまま屋敷へと着いた。
「「「「ただいまー。」」」」
「おかえりなさいませ……どどど、どうされたのですか!タケル様!そのお姿はっ!!」
出迎えてくれたエリーゼが珍しく取り乱している。
「アン様!アンネリーゼ様!!」
珍しいエリーゼの大声に、多くの足音が近付いてくるのを感じる。
「何事だ。騒々しい……タケルッ!?どうしたのだ!?」
呼ばれて駆け付けたアンも驚いている。
イーシェやキアヴェリもすぐ駆けつけて似たような反応をされた。
「申し訳ございません。アン様、実は……。」
囲まれているオレに代わってカレンが簡単な説明をしてくれる。
「そのようなことが……。いや、まずは手当だ!その後、体を洗ってくるのだ。」
そして、オレは治癒魔法をかけてもらい(すぐに治るものではなく体の治癒能力を高めるものらしい)お風呂へと入った。
心配したみんなが無理やり一緒に入ってくるものだから落ち着かなかったよ。
そして、薬を塗ってもらい、包帯を巻いたところで食堂へと集まった。
……そして、オレ達子供組はこっぴどく怒られ、森は今後立ち入り禁止となった。
翌日。
キアヴェリもカレンも体が治るまで滞在して良いと言ってくれたが、移動するのにそこまで不自由を感じるほどではないので辞退した。
しかし、街観光は大事をとって軽くお土産だけを買って終わりとなった。
そして、別れの時。
せっかく仲良くなったのに別れるのはつらいなあ。
あのカレンが涙目になっている。
「タケル……。今回は本当にありがとう。」
「こちらこそありがとう。カレン達のおかげでとても楽しい毎日だったよ。」
「今度は、私が遊びに行くわ!絶対絶対すぐに遊びに行くから!」
「うん。待ってるよ。」
周りでは大人組が優しい目で見守っている。
「じゃあ、タケル。ばいばい。」
「違うよ。こういうときは『ばいばい』じゃなくて『またね』って言うんだ。」
そう。また会うためのおまじないだ。
「くすっ。またね、タケル。」
そう言って笑うカレンは幼いながらにとても美しかった。
「うん。またね!カレン!」
そしてオレ達は他の人たちとも挨拶を交わし、カガミ領を後にする。
わずか数日の秘密基地と冒険。
でも、オレの心には輝かしい思い出となっていつまでも残っていくことだろう。
「ばいばい」じゃなく「またね」
アニメ化情報もあるし同志いるかな




