第七話 「かなうがいない日」
# 第七話 「かなうがいない日」
「……あれ。」
学食の入り口で、
りょうやは少しだけ足を止めた。
いつもなら、
先に来て席を取っているかなうの姿がない。
スマホを見る。
連絡も来ていなかった。
昼休みの学食は、
いつも通り騒がしい。
トレーを持った学生たちが行き交い、
遠くで笑い声が響いている。
りょうやは適当に空いていた席へ座った。
一人で食べるのなんて、
別に珍しくない。
それなのに、
なんとなく落ち着かなかった。
味噌汁を飲みながら、
無意識に入口の方を見る。
その時。
「りょうや、一人とか珍しくね?」
佐伯が向かいへ座りながら言った。
「かなうは?」
「知らん。」
「喧嘩?」
「してない。」
佐伯が少し笑う。
「お前ら、片方いないと違和感あるな。」
りょうやは唐揚げを箸で割りながら、
「大げさ。」
と返した。
でも実際、
かなうがいないだけで、
昼休みの空気が少し違った。
かなうは、
うるさいわけじゃない。
ずっと喋っているタイプでもない。
でも、
気づけば隣にいる。
そんな存在だった。
講義終わり。
スマホが震える。
かなうからだった。
『寝てた』
りょうやは少し笑う。
『最低』
すぐ既読がつく。
『起きたら四限終わってた』
『終わってる』
『今から行く気力ない』
りょうやは、
歩きながら空を見上げる。
夕方の空は、
少し曇っていた。
数秒後。
『コンビニいる?』
そのメッセージを見て、
りょうやは自然に足を止めた。
少しだけ考えてから返信する。
『いる』
送ったあと、
なぜか少し安心した。
大学近くのコンビニ。
いつもの段差。
かなうはジャージ姿のまま、
缶コーヒーを持って座っていた。
「ひどい顔。」
りょうやが言う。
「人として終わってる。」
かなうは笑いながら、
「自覚ある。」
と返した。
そのまま、
二人でぼんやり夜道を見る。
特に話すことはない。
でも、
その沈黙は不思議と苦じゃなかった。




