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「拝啓、かなうへ。あの日の約束を覚えていますか?」  作者: ともり。


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第六話 「雨の帰り道」

# 第六話 「雨の帰り道」


講義が終わる頃には、

外は雨だった。


窓ガラスに、

細かい水滴が流れている。


「うわ、最悪。」


かなうが外を見ながら顔をしかめた。


「傘ない。」


「また?」


「朝晴れてたじゃん。」


りょうやは鞄から折りたたみ傘を出す。


かなうがそれを見て笑った。


「出た、ちゃんとしてる人。」


「お前が適当すぎるだけ。」


教室には、

雨宿りする学生がまだ残っていた。


みんなスマホを見たり、

友達と話したりしている。


かなうは窓際へ寄りかかりながら、

「止むと思う?」

と聞いた。


「無理そう。」


「だよなぁ。」


少し沈黙。


窓を叩く雨音だけが聞こえる。


かなうが、

ちらっとりょうやの傘を見る。


「……入れて。」


「最初からそのつもりだろ。」


「バレた?」


りょうやは小さく笑った。


大学を出ると、

雨の匂いが強かった。


街灯に照らされた道路が、

濡れて光っている。


二人で一つの傘に入る。


かなうが、

「狭。」

と言いながら肩を寄せてくる。


「近い。」


「濡れるよりマシ。」


歩幅は自然とゆっくりになった。


車が通るたび、

水の跳ねる音がする。


かなうはスマホを見ながら、

「佐伯、もう面接らしい。」

と言った。


「早いな。」


「な。」


かなうは少し黙る。


それから、

ぽつりと言う。


「なんか怖くなってきた。」


りょうやは隣を見る。


かなうは、

前を向いたままだった。


「何が。」


「わかんないけど。」


雨音。


コンビニの光。


信号待ちの車列。


かなうが続ける。


「大学って、ずっと続く感じしてたじゃん。」


「まあ。」


「でも急に終わりそう。」


りょうやは、

少しだけ傘を持ち直した。


かなうの肩が、

少し濡れている。


「かなう。」


「ん?」


「もっと寄れ。」


かなうが笑う。


「優しい。」


「風邪引かれると面倒。」


「言い方。」


二人はそのまま、

濡れた夜道を歩く。


コンビニの明かりが近づくと、

かなうがいつもの調子で言った。


「肉まん食う?」


りょうやは少し笑って、

「今日はいい。」

と答えた。


その何でもない会話が、

なぜか少しだけ、

安心できた。


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