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「拝啓、かなうへ。あの日の約束を覚えていますか?」  作者: ともり。


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第五話 「既読」

# 第五話 「既読」


「りょうや、お前インターンどこ出すの?」


講義前の教室。


かなうは椅子を後ろ向きにして、

スマホをいじりながら聞いた。


「まだ決めてない。」


「え、やばくね。」


「かなうに言われたくない。」


「俺、昨日説明会行ったし。」


りょうやが少し驚いて顔を上げる。


「行ったの?」


「寝そうだった。」


「だめじゃん。」


かなうが笑う。


周囲では、

スーツ姿の三年生が増え始めていた。


去年まで、

“就活”なんて遠い話だったのに。


気づけば、

みんな普通に将来の話をしている。


「佐伯、もう内定近いらしいぞ。」


かなうが言う。


「早。」


「しかも東京。」


りょうやは、

机の上のシャーペンを転がしながら、

小さく息を吐いた。


「なんかさ。」


かなうが窓の外を見ながら呟く。


「みんな、ちゃんと前進んでる感あるよな。」


「まあ。」


「俺だけ取り残されそう。」


その言葉に、

りょうやは少しだけかなうを見る。


かなうは笑っていたけれど、

少しだけ疲れて見えた。


「かなうはなんとかなるだろ。」


「雑。」


「なんだかんだ生きてそう。」


「褒めてる?」


「半分。」


かなうが笑う。


その時、

講義開始のチャイムが鳴った。


かなうは、

「終わったらコンビニ。」

とだけ言って前を向く。


いつもの流れ。


たぶん、

明日も同じ。


そう思っていた。


――その夜。


りょうやのスマホに、

かなうからLINEが届く。


『インターンのES、意味わからん』


りょうやは、

ベッドに寝転がったまま少し笑う。


『どこ?』


数秒後。


『まだ白紙』


『終わってる』


『助けて』


りょうやは天井を見ながら、

少し考える。


それから、


『明日見る』


とだけ返した。


既読はすぐについた。


でも返信は来ない。


たぶん、

もう寝たんだろうな。


りょうやはスマホを伏せる。


部屋には、

エアコンの音だけが残っていた。


その静けさの中で、

ふと思う。


大学を卒業して、

社会人になったら。


こういうやり取りも、

減っていくんだろうか。


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