表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「拝啓、かなうへ。あの日の約束を覚えていますか?」  作者: ともり。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/43

第三十九話 「言わなかったこと」

# 第三十九話 「言わなかったこと」


披露宴から一週間。


---


りょうやは仕事帰りの電車に揺られていた。


---


窓の外は真っ暗だった。


---


スマホを見る。


---


かなうとのトーク画面。


---


最後のやり取りは、

結婚式の日だった。


---


『お疲れ』


---


『お疲れ』


---


それだけ。


---


昔なら。


---


そのあとも、

だらだら話していたかもしれない。


---


でも今は違う。


---


連絡しなくても、

不思議と平気だった。


---


---


電車が駅へ滑り込む。


---


人が降りる。


---


人が乗る。


---


同じことの繰り返し。


---


りょうやは窓に映る自分を見る。


---


三十三歳。


---


少し疲れた顔。


---


大学生の頃とは違う。


---


でも。


---


あの日のコンビニの景色だけは、

妙に鮮明だった。


---


---


その夜。


---


スマホが震える。


---


かなうだった。


---


『暇?』


---


りょうやは少し笑う。


---


『少し』


---


既読。


---


しばらくして電話がかかってくる。


---


「もしもし。」


---


『暇だった。』


---


「知ってる。」


---


かなうが笑う。


---


---


電話の向こうでは、

テレビの音が流れていた。


---


昔から変わらない。


---


かなうは何かをしながら電話する。


---


---


『なあ。』


---


「ん?」


---


『結婚式の日さ。』


---


りょうやは少し黙る。


---


『うん。』


---


『ちょっと思ったんだけど。』


---


かなうの声が少しだけ低くなる。


---


『俺ら、意外とちゃんと約束守ってるな。』


---


りょうやは少し笑った。


---


「何が。」


---


『まだ独身。』


---


思わず吹き出す。


---


「そこかよ。」


---


『そこ。』


---


かなうも笑う。


---


---


しばらく沈黙。


---


気まずくはない。


---


でも。


---


何かを言いかけて、

やめたような空気があった。


---


---


かなうが言う。


---


『三十五歳になったらさ。』


---


「ん?」


---


『ちゃんと答え合わせしような。』


---


りょうやは少し考える。


---


答え合わせ。


---


その言葉が妙に引っかかった。


---


---


大学生の頃。


---


未来は遠かった。


---


今は違う。


---


未来が少しずつ現実になっている。


---


---


「そうだな。」


---


それだけ返す。


---


かなうが少し笑った。


---


『じゃあまた。』


---


「おう。」


---


電話が切れる。


---


静かな部屋。


---


りょうやはスマホを置く。


---


かなうがあの時、

本当は何を言おうとしたのか。


---


それは聞かなかった。


---


たぶん。


---


かなうも言わなかった。


---


でも。


---


その“言わなかったこと”だけが、

なぜか少し気になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ