第三十七話 「再会の席」
# 第三十七話 「再会の席」
六月。
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佐伯の結婚式当日。
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空はよく晴れていた。
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会場へ向かう途中。
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りょうやは少し緊張していた。
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結婚式だからではない。
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久しぶりに、
みんなに会うからだった。
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受付を済ませる。
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会場には、
懐かしい顔が少しずつ集まり始めていた。
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「りょうや!」
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振り返る。
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森下だった。
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「久しぶり。」
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「全然変わってないな。」
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「お互いな。」
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森下は笑った。
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でも。
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よく見ると、
少しだけ大人になっていた。
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昔より落ち着いている。
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当たり前か。
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もう三十三歳だ。
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「かなうは?」
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森下が聞く。
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「まだ。」
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「絶対遅れると思った。」
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二人は吹き出した。
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その十分後。
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「ごめん。」
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聞き慣れた声。
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振り返る。
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かなうだった。
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スーツ姿。
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少し伸びた髪。
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昔より少しだけ落ち着いた表情。
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でも。
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第一声が遅刻の謝罪なのは変わらない。
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「お前な。」
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森下が笑う。
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「ごめんって。」
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かなうも笑う。
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久しぶりなのに。
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久しぶりな気がしなかった。
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それが少し不思議だった。
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披露宴が始まる。
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佐伯は幸せそうだった。
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隣には奥さん。
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子どもたちもいる。
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時間が流れたことを、
嫌でも感じる。
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かなうが小声で言う。
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「すげぇな。」
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「うん。」
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「ちゃんと大人だ。」
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りょうやは少し笑う。
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「俺らも大人だろ。」
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かなうは首を振った。
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「なんか違う。」
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披露宴の途中。
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昔の写真が映し出される。
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大学時代。
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文化祭。
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飲み会。
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卒業式。
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そして。
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コンビニの前で撮った一枚。
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かなうが吹き出した。
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「なんでこれあるんだよ。」
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佐伯の悪意だった。
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間違いない。
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スクリーンには。
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缶コーヒーを持つかなう。
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隣で笑うりょうや。
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大学生の二人。
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会場から笑い声が上がる。
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その瞬間。
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りょうやは、
少しだけ胸が締め付けられた。
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懐かしいからか。
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戻れないからか。
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それとも。
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別の理由なのか。
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自分でもわからなかった。
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披露宴の終わり。
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会場の外へ出る。
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夕方の風が吹いていた。
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かなうが隣へ来る。
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「なあ。」
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「ん?」
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かなうは少し笑う。
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「あと二年だな。」
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りょうやは思わず吹き出した。
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「その話好きだな。」
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「だって近づいてきたし。」
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かなうはそう言って笑う。
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でも。
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その笑顔は。
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昔より少しだけ、
真剣に見えた。




