第三十六話 「招待状」
# 第三十六話 「招待状」
三十三歳。
春。
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郵便受けの中に、
一通の封筒が入っていた。
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差出人を見る。
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佐伯。
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りょうやは少し笑う。
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結婚式の招待状だった。
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大学時代。
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いつも一緒にいた友人。
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東京へ行き。
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結婚して。
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子どもが生まれ。
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今はもう、
立派な父親らしい。
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時間は本当に進んでいる。
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その夜。
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りょうやは写真を撮って、
かなうへ送った。
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『佐伯』
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数分後。
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既読。
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『三人目らしい』
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りょうやは吹き出した。
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『増えすぎ』
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『な』
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かなうから電話がかかってくる。
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「もしもし。」
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『俺らだけ時間止まってね?』
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開口一番だった。
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「失礼だな。」
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『だってさ。』
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かなうが笑う。
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『大学の頃と話してる内容変わらん。』
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それは少し否定できなかった。
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窓の外では雨が降っていた。
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春の雨。
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静かな音。
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かなうが言う。
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『佐伯の結婚式行く?』
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「行く。」
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『俺も。』
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少し沈黙。
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『久しぶりだな。』
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「何が。」
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『みんな集まるの。』
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たしかにそうだった。
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大学卒業以来。
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全員が同じ場所に集まることは、
ほとんどなくなっていた。
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仕事。
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家庭。
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住む場所。
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それぞれ違う。
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かなうが小さく言う。
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『二十歳の頃さ。』
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「ん?」
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『ずっと続くと思ってたよな。』
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りょうやは少し黙る。
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大学。
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コンビニ。
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ファミレス。
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終電。
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かなうの部屋。
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どれも遠い。
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でも。
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なくなったわけではなかった。
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「続いてるだろ。」
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りょうやが言う。
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かなうは少し笑った。
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『まあな。』
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その声は、
どこか安心したようだった。
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電話を切ったあと。
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りょうやは招待状をテーブルへ置く。
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佐伯。
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森下。
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かなう。
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そして自分。
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あの日の仲間たち。
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久しぶりに全員が集まる。
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そんな日が、
もうすぐ来ようとしていた。




