第三十一話 「それぞれの冬」
# 第三十一話 「それぞれの冬」
十二月。
街は少しずつ年末の空気になっていた。
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駅前にはイルミネーション。
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コンビニにはクリスマスケーキのポスター。
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スーパーには正月用品。
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一年が終わろうとしていた。
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仕事帰り。
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りょうやはマフラーを巻き直しながら歩く。
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冷たい風。
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吐く息は白い。
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スマホが震えた。
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かなうだった。
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『忘年会だるい』
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りょうやは少し笑う。
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『行ってこい』
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既読。
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『帰りたい』
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『まだ始まってないだろ』
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『だから』
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相変わらずだった。
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大学の頃から。
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飲み会が好きそうに見えて、
実はあまり得意じゃない。
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人に合わせるのは上手い。
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でも。
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疲れるらしい。
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りょうやは知っていた。
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数日後。
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休日。
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久しぶりにかなうから電話が来た。
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「もしもし。」
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『暇?』
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「少し。」
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『飯行く?』
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りょうやは少し驚く。
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「今日?」
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『今日』
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「急だな。」
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『思いついた』
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それもかなうらしかった。
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夕方。
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駅前で待ち合わせる。
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かなうは相変わらず少し遅れて来た。
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「寒。」
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第一声だった。
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「お前、毎年言ってる。」
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「寒いものは寒い。」
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二人は少し笑う。
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歩きながら。
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特に目的もなく店を探す。
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それも昔と変わらない。
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かなうが言う。
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「なんかさ。」
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「ん?」
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「会ってない気がしなかった。」
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りょうやは少し考える。
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たしかにそうだった。
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数か月ぶりなのに。
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久しぶりな感じがしない。
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かなうも同じだったのか、
少し笑う。
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「不思議だよな。」
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「まあな。」
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居酒屋の明かりが並ぶ通り。
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クリスマスソング。
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すれ違う人たち。
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みんな誰かと歩いている。
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かなうがふと立ち止まった。
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ショーウィンドウを見ている。
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「どうした。」
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「いや。」
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かなうは少し笑う。
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「俺ら、二十五歳なんだなって。」
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りょうやは吹き出す。
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「今さら。」
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「急に実感した。」
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かなうはそう言って笑った。
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その横顔は。
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大学の頃より少し大人で。
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でも。
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どこか変わっていなかった。




