第三十話 「二十五歳」
# 第三十話 「二十五歳」
十一月。
かなうから連絡が来た。
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『誕生日おめでとう』
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朝の七時。
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りょうやは布団の中で、
そのメッセージを見て少し笑った。
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『ありがとう』
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送信。
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既読。
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数秒後。
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『二十五だな』
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『お前もだろ』
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『信じられん』
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りょうやも少しそう思った。
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二十五歳。
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高校生の頃。
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大学生の頃。
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もっと大人だと思っていた。
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でも実際は。
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仕事に慣れ始めただけで。
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将来のことも。
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人生のことも。
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相変わらずよくわからない。
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昼休み。
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会社の食堂。
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同僚たちに、
「おめでとう。」
と言われる。
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嬉しい。
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でも。
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どこか実感がない。
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スマホを見る。
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かなうとのトーク画面。
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『二十五歳の目標は』
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かなうから来ていた。
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『ない』
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送る。
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既読。
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『終わってる』
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『お前は』
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しばらくして返信。
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『健康』
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りょうやは吹き出した。
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『現実的』
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『最近腰痛い』
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『二十五だぞ』
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『もう二十五』
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かなうらしい。
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大学の頃から。
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少し先の未来を心配する癖があった。
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夜。
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仕事帰り。
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りょうやはコンビニへ寄る。
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ホットコーヒーを買う。
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外は少し冷えていた。
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コンビニの光。
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白い息。
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ふと。
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大学の頃のことを思い出す。
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二十歳。
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コンビニの前。
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かなうの冗談。
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「三十五まで独身だったら、一緒に住む?」
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あの時は笑った。
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本当に冗談だった。
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でも。
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気づけばもう二十五歳。
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約束の日まで、
あと十年しかない。
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スマホが震える。
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かなうだった。
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『なあ』
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『ん』
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『十年って早いと思う?』
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りょうやは少し考える。
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大学を卒業してからの五年は、
あっという間だった。
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『早いかもな』
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送信。
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既読。
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しばらくして。
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『だよな』
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それだけ。
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でも。
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りょうやはなぜか、
コンビニの明かりを見ながら少し笑った。
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十年後なんて、
まだ遠いと思っていたのに。




