第二十九話 「会えない理由」
# 第二十九話 「会えない理由」
十月。
気づけば、
社会人三年目になっていた。
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朝。
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メール。
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電話。
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会議。
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資料。
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気づけば夕方。
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気づけば金曜日。
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そんな毎日だった。
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りょうやは会社を出る。
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空はもう暗い。
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少し前まで明るかったのに。
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季節が変わるのは早い。
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スマホが震える。
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かなうだった。
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『今月やばい』
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りょうやは少し笑う。
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『いつも言ってる』
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既読。
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『今回は本当に』
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『毎回本当』
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かなうから返信は来ない。
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たぶん仕事中だろう。
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昔なら。
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「今日暇?」
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それだけで会えた。
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今は違う。
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予定を合わせる。
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休日を確認する。
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疲労を考える。
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それでも会えないことがある。
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夜。
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部屋で夕飯を食べる。
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テレビでは、
旅行番組が流れていた。
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知らない街。
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海。
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夜景。
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かなうなら、
「行きたい。」
とすぐ言いそうだ。
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スマホが震える。
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かなうだった。
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『今度旅行行く?』
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りょうやは思わず笑った。
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予想通りだった。
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『どこ』
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送る。
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既読。
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しばらくして返信。
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『決めてない』
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『計画性』
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『ない』
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大学の頃から変わらない。
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りょうやは少しだけ懐かしくなる。
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『来年なら』
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送信。
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既読。
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かなうから、
『来年か』
と返ってくる。
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その短い言葉に。
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少しだけ時間の流れを感じた。
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大学生の頃。
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来週。
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明日。
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今日。
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そんな単位で生きていた。
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今は。
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来月。
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半年後。
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来年。
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そんな話が増えた。
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窓の外では、
秋の風が吹いていた。
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かなうから最後に届いたメッセージ。
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『会うの難しくなったな』
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りょうやは少し考える。
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そして。
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『会わなくなっただけだろ』
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と送った。
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既読。
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返信はしばらく来なかった。
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数分後。
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『それもそうか』
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その言葉を見て、
りょうやは少しだけ笑った。
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会えない理由は、
きっとたくさんある。
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でも。
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会おうと思う理由も、
まだちゃんと残っていた。




