第二十八話 「連絡しなくても」
# 第二十八話 「連絡しなくても」
九月。
夏の暑さが少しだけ和らぎ始めていた。
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仕事終わり。
りょうやはコンビニで缶コーヒーを買った。
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特に理由はない。
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ただ、
なんとなく飲みたくなっただけだった。
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店を出る。
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夜風が少し涼しい。
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コンビニの明かり。
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その光を見た瞬間。
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ふと、
大学の頃を思い出した。
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かなうと座っていた段差。
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肉まん。
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どうでもいい会話。
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「働きたくねぇ。」
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かなうの声が、
今でも聞こえてきそうだった。
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思わず少し笑う。
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スマホを見る。
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最後の連絡は、
一週間前。
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実家で電話した時だった。
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昔なら考えられなかった。
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一週間も話さないなんて。
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でも今は。
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それが普通になりつつある。
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不思議だった。
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寂しいわけじゃない。
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嫌いになったわけでもない。
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むしろ。
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会えば普通に話せる。
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なのに。
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連絡する回数だけが減っていく。
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大人になるって、
こういうことなんだろうか。
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帰宅する。
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エアコンをつける。
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ネクタイを外す。
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ソファへ座る。
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静かな部屋。
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スマホが震えた。
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かなうだった。
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りょうやは少し笑う。
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開く。
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『生きてる?』
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思わず吹き出した。
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大学の頃から変わらない。
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『普通』
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送信。
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既読。
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数秒後。
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『ならよかった』
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りょうやは天井を見上げる。
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またそれか。
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そう思う。
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でも。
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少しだけ安心した。
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連絡しなくても。
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会わなくても。
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どこかで繋がっている。
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そんな気がした。
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窓の外では、
秋の虫の声が聞こえ始めていた。




