第三話 「また一緒?」
# 第三話 「また一緒?」
「お前ら、また一緒?」
学食の入り口で、
友達の佐伯が呆れたみたいに笑った。
かなうはトレーを持ったまま、
「たまたま。」
と答える。
「毎回言ってるそれ。」
「偶然って怖いよな。」
「怖いのはお前らの距離感。」
りょうやは味噌汁を受け取りながら、
「席なくなるぞ。」
とだけ言って歩き出した。
昼休みの学食は騒がしい。
空いた席を見つけて座ると、
かなうが当然みたいに隣へ座った。
向かいには佐伯と、
同じゼミの森下。
「いやほんと、お前ら仲良すぎ。」
森下が笑いながら言う。
「昨日も一緒にいたよな?」
「いた。」
「かなうの部屋。」
「半同棲じゃん。」
かなうが吹き出す。
「違うわ。」
「でも、りょうや普通にかなうん家いるよな。」
「楽なんだよ。」
りょうやは唐揚げを箸で割りながら言った。
かなうの部屋は、
散らかっているけれど落ち着く。
誰にも気を遣わなくていいし、
無言でも変に気まずくならない。
かなうは、
そういう空気を作るのが上手かった。
「絶対お前ら、卒業しても一緒にいるわ。」
佐伯が麦茶を飲みながら言う。
かなうは、
「いや、りょうや普通に結婚しそう。」
と笑った。
「かなうは?」
「俺は無理。」
「なんで。」
「めんどくさい。」
森下が呆れた顔をする。
「それ、毎回言ってる。」
かなうは肩をすくめながら、
「だって一人の方が気楽じゃん。」
と言った。
その時、
りょうやのスマホが震える。
母親からだった。
『就活どう?』
短いメッセージ。
りょうやは、
画面を少し見つめてから、
スマホを伏せた。
かなうが横から覗く。
「親?」
「うん。」
「就活?」
「まあ。」
かなうは、
「あー。」
とだけ言って、
水を飲んだ。
周りのテーブルからは、
インターンや面接の話が聞こえてくる。
去年までは遠かった“将来”が、
少しずつ近づいてきていた。
かなうがぽつりと言う。
「なんかさ。」
「ん?」
「みんな急に大人になってく感じしない?」
りょうやは少し考えて、
「まだ大学生だろ。」
と答えた。
かなうは笑う。
「そうなんだけどさ。」
窓の外では、
夏の日差しが白く光っていた。
でもその時、
りょうやも少しだけ思っていた。
この時間が、
いつまでも続くわけじゃないことを。




