第二十五話 「会う理由」
# 第二十五話 「会う理由」
ファミレスを出ると、
外は少し曇っていた。
昼間の賑やかさも落ち着き始めている。
駅前の広場では、
子どもたちが走り回っていた。
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「どうする?」
かなうが聞く。
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「何が。」
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「解散する?」
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かなうらしい聞き方だった。
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りょうやは少し笑う。
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「帰るのかと思った。」
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「帰ってもいいけど。」
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かなうは空を見上げる。
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「なんか久しぶりだし。」
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それだけだった。
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二人は駅前から少し離れた川沿いを歩くことにした。
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学生の頃も、
よくこうして目的もなく歩いた。
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話しながら。
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黙りながら。
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気づけば遠くまで来ている。
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そんなことが何度もあった。
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川沿いの風は少し強かった。
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かなうがポケットに手を入れる。
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「そういえばさ。」
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「ん?」
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「会う理由っているのかな。」
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りょうやは少し考える。
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「どういう意味。」
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かなうは肩をすくめた。
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「大学の頃って理由なかったじゃん。」
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確かにそうだった。
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コンビニ行く。
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飯食う。
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暇。
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その程度。
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会うために、
わざわざ予定を立てたりはしなかった。
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「今はさ。」
かなうが続ける。
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「飯行く?」
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「いつ空いてる?」
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「何食べる?」
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「何時?」
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「場所は?」
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「なんか大人だよな。」
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りょうやは少し笑った。
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「それ普通だろ。」
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「普通なんだけどさ。」
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かなうは川を見ながら歩く。
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「会う理由が必要になるの、
少し寂しくね?」
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風が吹く。
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水面が揺れる。
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りょうやは何も言わなかった。
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たぶん。
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かなうも答えを求めていない。
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ただ思ったことを口にしただけだ。
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しばらく歩く。
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向こう岸では、
犬の散歩をしている人が見えた。
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かなうが小さく笑う。
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「でも。」
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「ん?」
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「今日会えてよかった。」
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りょうやは少しだけ前を向いたまま答える。
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「俺も。」
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かなうは何も言わなかった。
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でも。
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少しだけ歩く速度が遅くなった気がした。
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夕方の風は、
少しだけ冷たかった。




