第二十四話 「変わったもの」
# 第二十四話 「変わったもの」
「結婚か。」
りょうやはドリンクバーのコーヒーを一口飲んだ。
窓の外では、
家族連れが横断歩道を渡っている。
土曜日の午後。
ファミレスの店内は、
思ったより混んでいた。
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かなうはスマホをテーブルへ置く。
「佐伯っぽくないよな。」
「いや、むしろ一番早そうだった。」
「そうか?」
「昔からちゃんとしてたし。」
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かなうは少し考える。
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「確かに。」
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そのあと二人は少し笑った。
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大学の頃。
将来の話をしても、
どこか現実感がなかった。
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結婚。
転職。
家。
子ども。
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全部、
もっと遠い未来の話だった。
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かなうがストローを回しながら言う。
「俺らもそういう年齢なんだな。」
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りょうやは頷く。
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もう学生じゃない。
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社会人になって二年目。
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新人とも言い切れず。
ベテランでもない。
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なんとも中途半端な年齢だった。
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「かなう。」
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「ん?」
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「大学の時と比べて、
一番変わったの何?」
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かなうは少し考える。
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「体力。」
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即答だった。
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りょうやは吹き出す。
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「夢とかじゃないのか。」
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「現実的だろ。」
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かなうが笑う。
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「お前は?」
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りょうやは窓の外を見る。
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少し考える。
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「時間。」
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かなうが顔を上げた。
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「時間?」
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「大学の時、
無限にあると思ってた。」
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かなうは少し黙る。
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ファミレスの店内放送が流れる。
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食器の音。
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子どもの声。
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「それはわかる。」
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かなうが小さく言った。
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「気づいたら一週間終わってる。」
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「気づいたら一か月。」
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「気づいたら一年。」
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二人は少し笑った。
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その笑い方は、
大学の頃と変わらなかった。
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でも。
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笑ったあとに残る沈黙は、
少しだけ違っていた。
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かなうが窓の外を見る。
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「なあ。」
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「ん?」
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「次会う時も、
こんな感じなんかな。」
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りょうやは少し首を傾げる。
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「どんな。」
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「普通に飯食って。」
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「普通に話して。」
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「普通に帰る。」
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かなうはそう言って笑う。
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りょうやも少し笑った。
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「それでいいだろ。」
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かなうは何も言わなかった。
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ただ。
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少し安心したように見えた。




