第二十三話 「土曜日の駅前」
# 第二十三話 「土曜日の駅前」
土曜日。
昼過ぎ。
りょうやは駅前の時計を見上げた。
待ち合わせの十分前。
少し早く着きすぎた。
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駅前は賑やかだった。
買い物袋を持った人。
家族連れ。
制服姿の高校生。
みんなそれぞれの休日を過ごしている。
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スマホを見る。
かなうから連絡はない。
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たぶん遅れる。
りょうやはそう思った。
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大学の頃からそうだった。
待ち合わせ時間ぴったりに来るかなうを、
ほとんど見たことがない。
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五分後。
スマホが震える。
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『着いた』
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りょうやは周囲を見回す。
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かなうは、
道路の向こう側に立っていた。
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少し伸びた髪。
ラフな服装。
片手にスマホ。
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大学の頃と変わったような。
変わっていないような。
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目が合う。
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かなうが手を上げる。
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りょうやも軽く手を上げた。
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「久しぶり。」
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近づいてきたかなうが言う。
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「一か月くらいだろ。」
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「意外と長かったな。」
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かなうは少し笑った。
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歩き出す。
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目的地は決めていない。
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それも、
大学の頃と同じだった。
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「仕事どう。」
かなうが聞く。
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「普通。」
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「雑。」
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「そっちは。」
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「普通。」
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りょうやは笑った。
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「人のこと言えないな。」
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かなうも笑う。
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しばらく歩く。
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不思議だった。
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会っていなかった時間が、
急になくなったような感覚。
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気まずさもない。
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頑張って話題を探す必要もない。
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ただ歩いているだけなのに、
少し安心した。
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かなうがふと立ち止まる。
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「腹減った。」
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「まだ言うか。」
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「会ったら言おうと思ってた。」
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「意味わからん。」
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かなうは笑う。
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その笑い方が、
少し懐かしかった。
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気づけば二人は、
駅前のファミレスへ入っていた。
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窓際の席。
ドリンクバー。
土曜日の昼。
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大学の頃と違うのは、
終電を気にしなくなったことくらいだった。
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「佐伯、結婚するらしい。」
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かなうがスマホを見ながら言う。
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りょうやは思わず顔を上げた。
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「早くないか。」
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「な。」
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かなうは少し笑う。
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でもその笑顔は、
どこか複雑そうだった。
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窓の外では、
初夏の光が道路を照らしていた。




