第二十話 「既読の間」
# 第二十話 「既読の間」
五月。
連休が終わった。
朝の電車は相変わらず混んでいる。
りょうやは吊り革を握りながら、
窓の外をぼんやり眺めていた。
気づけば、
大学を卒業して一か月以上が経っている。
早いのか、
遅いのか。
よくわからなかった。
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昼休み。
スマホを見る。
かなうからメッセージが届いていた。
『今週やばい』
それだけ。
りょうやは少し笑う。
大学の頃から、
かなうの文章は短かった。
『何が』
送る。
既読。
返事は来ない。
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午後。
仕事が終わった頃には、
空が暗くなり始めていた。
りょうやは駅へ向かう。
ふとスマホを見る。
かなうから返信が来ていた。
『全部』
それだけだった。
思わず笑う。
『雑』
送る。
数秒後。
『説明する気力ない』
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大学の頃なら。
そのまま会っていた。
コンビニ。
ファミレス。
かなうの部屋。
どこでもよかった。
会えば終わる話だった。
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でも今は違う。
仕事終わり。
疲労。
距離。
時間。
少しずつ、
会う理由が必要になっていく。
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夜。
部屋で夕飯を食べながら、
りょうやはテレビを流していた。
内容は頭に入ってこない。
スマホが光る。
かなうだった。
『元気?』
珍しい。
かなうからそんな連絡が来ることは、
ほとんどなかった。
りょうやは少し考える。
『普通』
送信。
既読。
しばらく返信は来ない。
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五分後。
『ならよかった』
それだけだった。
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りょうやはスマホを見つめる。
大学の頃なら。
「何が?」
と聞いていたかもしれない。
でも今は、
そのまま画面を閉じた。
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ベランダの外では、
夜風が少しだけ吹いていた。
静かな部屋。
シンクには洗い終わっていない皿。
テーブルには読みかけの本。
大学の頃、
一人暮らしに憧れていた。
自由そうだったから。
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でも。
自由と静かさは、
少し似ている。
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寝る前。
スマホを見る。
かなうとのトーク画面。
最後のメッセージ。
『ならよかった』
その短い言葉を見ながら、
りょうやは少しだけ笑った。
そして充電器につなぎ、
部屋の電気を消した。
返信はしなかった。
それでも。
また明日、
連絡が来るような気がしていた。




