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「拝啓、かなうへ。あの日の約束を覚えていますか?」  作者: ともり。


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第十八話 「卒業式」

# 第十八話 「卒業式」


空は晴れていた。


春らしい暖かさだった。


大学の正門には、

スーツや袴姿の学生たちが集まっている。


写真を撮る人。


家族と話す人。


笑っている人。


泣いている人。


いつも見ていたキャンパスなのに、

今日は少し違って見えた。


---


「りょうや。」


振り返る。


かなうだった。


珍しくスーツをきちんと着ている。


「似合わんな。」


りょうやが言う。


かなうは顔をしかめた。


「第一声それ?」


「思ったから。」


「失礼。」


かなうは笑う。


りょうやも少し笑った。


その笑い方は、

大学一年の頃と変わらなかった。


---


卒業式は、

思ったよりあっさり終わった。


長い話。


拍手。


校歌。


気づけば終わっている。


教室へ戻ると、

みんな写真ばかり撮っていた。


「かなう。」


森下が声をかける。


「写真撮ろう。」


「おう。」


気づけば何枚も撮っていた。


佐伯もいる。


森下もいる。


ゼミの仲間もいる。


みんな笑っている。


---


でも。


どこかでわかっていた。


この景色は、

今日で終わる。


---


夕方。


大学の前。


人も少なくなっていた。


かなうとりょうやは、

いつものように歩いていた。


卒業式の日なのに。


特別なことは何もない。


いつもの帰り道。


いつものコンビニ。


いつもの段差。


---


かなうが缶コーヒーを開ける。


「終わったな。」


「終わったな。」


それだけだった。


---


しばらく無言。


車が通る。


誰かが店へ入る。


自動ドアが開く。


閉まる。


その音を聞きながら、

かなうが言った。


「なんか実感ない。」


「わかる。」


「来週も普通に授業ありそう。」


りょうやは少し笑う。


「もうないけどな。」


かなうも笑った。


---


夕日が少しずつ落ちていく。


コンビニの白い光が、

いつもより目立っていた。


かなうが、

缶を見つめながら言う。


「俺らさ。」


「ん?」


「結構仲良かったよな。」


りょうやは少し吹き出す。


「今さら。」


「いや、改めて。」


「まあな。」


かなうは少しだけ笑った。


---


「また会おうな。」


その言葉は。


約束というより。


確認みたいだった。


---


りょうやは小さく頷く。


「会うだろ。」


かなうは安心したように笑う。


「だよな。」


その時の二人は、

まだ知らなかった。


会おうと思うことと、

会えることは、

同じじゃないということを。


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