第十四話 「冬のはじまり」
# 第十四話 「冬のはじまり」
朝の空気が冷たかった。
大学へ向かう道を歩きながら、
りょうやは思わず肩をすくめる。
吐いた息が少し白い。
気づけば季節は冬になりかけていた。
スマホが震える。
かなうからだ。
『寒すぎ』
りょうやは少し笑う。
『起きてるだけ偉い』
数秒後。
『褒めろ』
『無理』
既読がついて、
しばらく返信は来なかった。
たぶん二度寝している。
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昼休み。
かなうは珍しく先に学食へ来ていた。
窓際の席。
湯気の立つうどん。
「生きてた。」
りょうやが言う。
かなうは箸を持ったまま顔を上げた。
「朝褒めてくれなかった。」
「まだ言ってる。」
「根に持つタイプだから。」
「初耳。」
かなうが笑う。
窓の外では、
風で木の葉が揺れていた。
少し前まで半袖だったのに。
時間が経つのは早い。
かなうも同じことを思ったのか、
窓の外を見ながら言う。
「もう冬か。」
「そうだな。」
「この前まで夏だったのに。」
「それ毎年言ってる。」
かなうは少し笑う。
でもそのあと、
珍しく黙った。
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帰り道。
二人はコンビニへ寄った。
店内は暖かい。
肉まんの匂い。
レジ横のおでん。
クリスマスケーキの予約ポスター。
かなうが、
それを見て言う。
「今年も終わるな。」
「まだ十一月。」
「でももう終わる空気じゃん。」
りょうやは否定できなかった。
毎年そうだ。
気づいたら年末で、
気づいたら春が来る。
かなうは缶コーヒーを持ちながら、
店の外へ出る。
冷たい風。
白い息。
いつもの段差。
かなうは空を見上げながら言った。
「卒業もすぐ来そう。」
りょうやは何も言わなかった。
言葉にすると、
急に現実になりそうだったから。
かなうも、
それ以上は言わない。
ただ、
コンビニの光の中で、
温かい缶を両手で持っていた。
しばらくしてから。
かなうが小さく笑う。
「三十五の冬も、
こうやってコンビニいたら面白いな。」
りょうやは少し笑う。
「お前、どんだけコンビニ好きなんだよ。」
「落ち着くじゃん。」
その言葉に、
りょうやは少しだけ頷いた。
確かにそうだった。
大学も、
教室も、
いつか終わる。
でも今はまだ、
この時間が続いている。




