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「拝啓、かなうへ。あの日の約束を覚えていますか?」  作者: ともり。


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第十二話 「終わらないでほしい」

# 第十二話 「終わらないでほしい」


「うわ、懐かし。」


かなうが、

大学近くのゲームセンターを見上げながら笑った。


「まだあったんだここ。」


「潰れそうだけどな。」


入口のネオンは半分消えていて、

店内から古いゲーム音が漏れている。


講義終わり。


特に予定もなく、

なんとなく歩いていたらここまで来ていた。


かなうは、

「一回だけ。」

と言いながら店へ入っていく。


「絶対一回じゃ終わらん。」


「りょうやって俺のこと信用してないよな。」


「してない。」


かなうが笑う。


店内は少し暗くて、

煙草の匂いが残っていた。


学生の頃から、

二人はよくここへ来ていた。


暇な時。

帰りたくない時。

終電まで時間を潰したい時。


特に理由はない。


でも、

気づけばいつも一緒にいた。


かなうはクレーンゲームの前で立ち止まり、

「これ欲しい。」

と言った。


「絶対いらないだろ。」


「でも顔おもろい。」


変なキャラクターのぬいぐるみ。


かなうは百円を入れて、

真剣な顔になる。


数秒後。


「無理。」


「下手すぎ。」


「今のはいける流れだった。」


りょうやは少し笑う。


かなうは、

「りょうややって。」

と百円を押し付けてきた。


「なんで。」


「お前、こういうの地味に上手い。」


結局、

二人でしばらく遊んでいた。


店を出る頃には、

外はもう完全に夜だった。


かなうが、

ビニール袋に入ったぬいぐるみを揺らしながら歩く。


「無駄遣いした。」


「お前が欲しいって言ったんだろ。」


「大学生の百円って重い。」


「今更。」


夜風が少し冷たい。


駅前では、

酔った社会人たちが笑いながら歩いていた。


かなうが、

その人たちをぼんやり見ながら言う。


「俺らも、

 ああなるんかな。」


「どうだろ。」


「なんか想像つかん。」


かなうは、

ぬいぐるみの袋を持ち直しながら笑う。


「てかさ。」


「ん?」


「この感じ、

 ずっと続く気してた。」


りょうやは少し黙る。


ゲームセンターの光が、

道路へ滲んでいた。


かなうは、

前を向いたまま小さく言う。


「……終わらないでほしいな。」


その言葉は、

夜の音に溶けるくらい小さかった。


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