【バクバク】暗闇で二人きり……の巻
チンピラに見つかって大ピンチ!
なんて恐怖していたら突然オリバーに手を引かれ、その場を逃げ出していた。こういう時は頼りになる。
「あそこに隠れよう」
(オリバーの手、私より大きいなぁ)――なんて繋がれた手にドキドキしていたら、いつの間にか大講堂の前にいた。重い扉のせいで中に入るまで少し時間が掛かったけど、チンピラ達には気づかれてないみたいで一安心。
「ふぅ〜追いつかれるかと思った。え、暗くなった!」
「ただ扉が閉まっただけだよ。」
「あぁ、なんだ……」
私が話し終えたのと、同時に扉が閉まったらしく視界はほぼ真っ暗。唯一ある灯は床に置いてあるロウソクなんだけど……ズラッと廊下の端に沿う様に置いてあるのが怖い。
「このロウソク、儀式に使う為に置いてるみたいで呪われそう。」
「そう?僕はロウソクに火を付けてから時間が経ってない事の方が怖いけどね。」
「………どう言うこと?」
「さっきまで人が居てロウソクに火を付けていたってことだよ。」
「えぇ!!確かにそっちの方が怖い!」
オリバーの言葉にビビりながらも薄暗い廊下を歩き進めるとロウソクが、ある部屋の前で途切れていた。
扉には、薄暗くても見える文字の大きさかつ真っ赤なペンキで“絶対に入るな!”って警告があるんだけど……入るなと言われると余計に気になるじゃんか!
「ねぇ、この部屋中に何かあるのかな?」
「そんなに気になるなら入ってみなよ。」
「そっ、そうよね!女は度胸よ。えぇーい!」
恐怖より好奇心が勝って恐る恐る扉を開くと立て付けの悪い扉がギィィと音を立てた。
薄暗いながらも中央がライトアップされていて、どんな部屋なのかは把握できた。分かりやすく言うと、劇場みたいになっていてオペラで使われる会場そのもの。椅子が無いから歩きやすい。
「なんだぁ〜案外普通じゃん。死体が転がったりしてるのかと思ったぁ〜………ん?あれって盗まれた女神の置物?!」
「本当だ。それにしても目立つ様に飾ってあるね。まるで見つけて下さいと言わんばかりに」
部屋の中央に美術館で使われる様な展示ケースが置いてあって、その中に金色のピッカピカに光り輝く女神の置物が鎮座。
存在感ハンパねぇ〜って感じ
な・ぜ・か・私達を導くみたいに中央の展示ケースだけがライトアップされてるけど……女神像を目立たせたかっただけよね☆
駆け寄ってケースの中を覗き込むと、女神像に使われている宝石が鮮明に見えた。金が使われてるだけでもすごいのに宝石まで……。片手で持ち上げられそうなサイズ感だけど、高価な置物に違いない!
「本物っぽいね。コレ」
私の後ろからケースを覗き込むオリバーは、まるで宝石の鑑定士。メガネ姿も相まって本物のそれにしか見えないわぁ〜……って!話が脱線した。
「オリバーったら当たり前じゃない。わざわざ学園長が偽物を盗むわけが――」
???「ッハッハッハ〜!」
「え?なになに??何事??」
――女神像を照らしていたライトの光が奥のステージに移動した。照らされて現れたのは後ろ向きの椅子とアンティーク調の机。その横には、黒い服に身を包んだ若い男が立っていた。
『いかにもこれから劇が始まりま〜す。って演出だ!』なんて考えていたら、若い男が椅子をくるり回した。椅子に座っていたのは探していた人物……
そう、悪の学園長!
「私はこの学校の学園長だ!盗んだ女神の置物を見られたからには、お前たち生きて帰れると思うなよ!」
いかにも悪役が言いそうな言葉を吐き捨てた後、恐る恐る机の上に登った。さっきまでカッコよかったのに机の上に登る姿が危なっかしい。
「どうしたんだ小娘よ!そんな顔して。さては私を目の前にして恐れ慄いたのだな!」
「学園長、机の上に登るのは危ないから辞めなよ。」
「え……そこ?まぁ確かに。それは一理あるな。失礼した。」
学園長が、若い男の手を借りながら机から下りる姿をしばらく見守る事にしよう。危なっかしくて小言を言ってしまうのは無視してほしい。
「ゆっくりだよ、学園長。見たところそんなに若くないんだから無茶しちゃダメよ。」
「ップ……フフ」
後ろでオリバーがフフって吹き出した声が聞こえたから、振り返ってのに顔を逸らされた。
オリバーったら!
顔逸らしても肩が揺れてて笑っているのがバレバレよ!そして通常運転だけど、笑いのツボが変。
「学園長、あの令嬢達に馬鹿にされてますよ。」
私の言葉を聞いてか、若い男が学園長に一言吐き捨てた。
「これでも頑張ってる方なんだがね」
「もう〜いい感じだったのに、途中からいつもの優しい学園長に戻ってましたよ。小物感出ちゃってますって!」
「……“いつもの優しい”……学園長?」
二人の会話に違和感を覚えて、ステージ上の二人を見つめると、私と視線を合わせようとしない。
「二人とも慌てて顔を逸らすなんて怪しい……」
「わっ、私は何も怪しくないぞ。悪い事ばかりしている悪の学園長だ!」
「そうですよ!凄〜く悪いおじさんなんですからね!」
こんな小物感あるおじさんが窃盗の他にも脱税と人攫いしてるとは考えにくい……。
「なんだか慌て方も嘘くさい!」
――私が学園長を疑い始めたその時。
「エラ!僕がきたからもう大丈夫だ!」
「えぇ?!ベルタ様?!なんであんな所にいるの?」
上の観客席に現れたのは、なんとおじ王子!
王子の登場と同時にスポットライトがそっちへ向いたから途中で『タイミング合いすぎじゃね?」なんて戸惑ったわけよ。
「今から君の元へ行くぞぉー!!」
叫びながら、ぶっとい体にロープをグルグル巻きつけ、足を柵の上に恐る恐る降ろす姿に一言だけ言いたい。
危ないから辞めなよ って。
「えぇぇーーい!!」
覚悟を決めたかの様なおじ王子は、2、3メートルの観客席から一直線に私の近くへ降りてきた。
まるで訓練されたかの様な身のこなしに驚きを禁じ得ない。ワガママボディーでよくあんな高さから飛び降りたな〜と拍手を送りたいけど、調子に乗るだろうからやらない。絶対に。
「僕が助けに来た。何もしないで突っ立っているあんな男より僕の方が――
そう言ってオリバーを指差し非難したおじ王子に釣られ、私も振り返った。
「ベルタ殿下!ターゲットの二人を逃がしました、どうしま………しょう。」
後ろを振り返ったお陰で(?)会場にタイミングよく入って来たチンピラ4人と目が合った。私と目が合うなり顔を逸らす姿は焦っているようにしか見えない。
……待って、チンピラがおじ王子に向かって“ターゲットの二人”って言った?
じゃあ!チンピラとおじ王子がグルだったの!?それに学園長が優しいなんて話と違うし!
「ベルタ様〜どう言う事なのか説明願えます?」
「え……いや、何のことだか。ハハハ」
視線を合わせようとしないおじ王子を見て点と線が繋がった。詳しいことはわからないけど、全ての元凶がおじ王子なことは確か。
「ベ・ル・タ・殿・下〜」
悟った私は、満面の笑みで王子に詰め寄った。
――そう、満面の笑みで♡
◇ ◇ ◇
「つまり、私たちを学校へ潜入調査させたのはベルタ様の計画で、女神像は盗まれてなくて、痛くも痒くもなかった。そういうことですね!」
「二人の仲の良さに嫉妬してこんなことをしてしまった。悪かった。」
「……本当に申し訳ございませんでした。」
床に跪いて許しを請う諸悪の根源おじ王子とじぃや。
因みに、じぃやはスポトライト係として裏方で頑張っていたと言う。どうやら私とオリバーは、おじ王子が計画した罠にハマっていたらしい。
つまり、今日の出来事は全部おじ王子の計画だったわけよ!
「「「「姉貴!許してくだせー!」」」」
「「すみませんでした」」
「あなた達はやらされていただけだし怒ってないわ!」
おじ王子とじぃやに続くように、チンピラ、学園長、そして学園長秘書(若い男)までもが土下座……。この人たちはおじ王子に巻き込まれた被害者だから許すけど、おじ王子は自分の立場を利用して沢山の人を巻き込んでるし…。
「ベルタ様酷いですよ!本気で心配してたのに!私がどんな思いで潜入調査を引き受けたか!」
「その割には楽しんでたよね。」
横で合いの手を入れてくるオリバーを横目でジロリと確認した。それでも気にせず話し続ける。
「学園長にまで迷惑かけて!めっ!ですよ!」
「あ、僕は楽しんでやってたわけで迷惑ではないんだよ。むしろ、来週生徒に混じってやる演劇の練習できてラッキーなんて思ってたし」
「学園長、お黙り!」
「えぇ…そんなぁ」
「僕たちは黙ってるべきですよ、学園長。」
項垂れる学園長を励ますように隣の秘書がコソコソ。で、今私が話し合うべきなのは……おじ王子!
「エラ、本当に悪かった。あの置物は本物の金で出来てるんだ!あれを君にあげるから許してくれ」
この人ってば、物で私を釣って解決しようとしている?ちょっと許そうと思ってたのに。
「もうベルタ様なんて知らない」
「あっ!エラ待ってくれ。あの置物には数十億の価値が――」
頭を冷やしてもらうためにここは強く出ることにした私は、部屋から出た。金だろうが宝石だろうがそんなもので私が許すなんて大間違いよ!
「オリバー、早く!置いていくわよ」
◇ ◇ ◇
おじ王子を無視して馬車に乗り込んだ。相変わらず王家の馬車は豪華で乗り心地は最高だった。気分は最悪なのに。
「全く!物を渡して解決しようなんておじ王子ったら、誠意が無いと思わない?嘘ついて私たちを騙していたのに!」
「確かにそうだね。でも見方を変えれば、実際には窃盗や人攫いが無くて良かったとも言える。王子は確かに酷いことをしたけど」
「むぅ‥…なんで王子に対してあんまり怒ってないの?」
「君だって途中まで楽しんでいたじゃ無いか」
「別に楽しんでなんか無いもん!」
オリバーと今回の旅行で初めて二人きりになれて嬉しかったのに……喧嘩したく無かったのに……どうしても強い口調になってしまう。
『スパイしていたから嘘つく事に抵抗が無いんだ!』とか『スパイかっこいいとか思ってたけど見損なった!』『きっと、不倫してたのも全く悪いとか思って無いに違いない。』
悪い方にしか考えられなくなった結果、考えなくてもいいことまで………。
おじ王子だけじゃなくて目の前に座る無駄に顔のいいこの男にも腹が立ってきた。
せっかくの豪華な馬車なのに。空気が最悪。
騙す側
助ける役/おじ王子
スポットライト役/じぃや
悪の学園長/学園長
助手役/学園長の秘書
チンピラ役/兵士
騙された側
助けられる人/エラシラ
負け犬/オリバー




