和解しました。喧嘩しました!
城に戻ってからもオリバーとはギクシャクしたまま。と言うか、着いてすぐ昼食会だったから仲直りする時間が無かった。
「食べないの?」
隣の席に座るオリバーに話しかけられて何て返せばいいのか迷った結果――
「お腹空いて無いから要らない!」
少しキツめの返しになってしまったかも。
あぁ流石に今のは子供っぽすぎた……。
「おい、どうしたんだ?いつもなら決まってバクバク食うのに。ダイエットか?お兄様はそんなもの必要ないと思うぞ。」
私とオリバーの喧嘩に気づきもしないのか無神経なことを言ってくる兄。真剣な表情で説教垂れてる癖に寝癖が酷くて心に響かないのよ!
「そんなんじゃない!ご馳走様でした。」
居心地が悪くて部屋に戻るしかなかった。
気持ちを落ち着かせようとソファーに座ってクッションを抱きしめた……なのに全く効果がない。
「奥様ったら、お城に帰られてからどうされたんです?お出かけが余りお気に召さなかったんですか?昼食会でも料理をあまり口にしていませんでしたよね?」
「オリバーとケンカしたの。……それでついつい冷たい返ししちゃう」
「いつもの素直な奥様に戻れたら仲直りできそうですけど。」
う〜んと考え込むエザラをよそにコンコンッと2回ノック音がした。遅れて城に到着したおじ王子が謝罪しに来たに違いない!今は会いたくないのに!
「エザラ。王子には帰ってもらって」
「悪いけど、殿下では無いよ。」
「え?!お、オリバー?!」
スッとドアから入ってきたオリバーの姿にドキッとして顔を逸らした。だってあんな感じで昼食会抜けて来たから気まずいし…。
「な、何しにきたの?」
「昼に元気なかったからフルーツなら食べられるかと思って持って来たんだ。」
「え?フルーツ……」
再びオリバーに視線を戻すと、両手には銀のトレイに美しく盛り付けられたフルーツが――。
「あ、たった今テイリー様に呼ばれていた事を思い出しました〜。奥様、すぐ戻るので失礼しますね!」
見え透いたをついたエザラは私にさり気なくウィンク☆した後ササ〜と部屋を出て行った。どうせ扉に耳を当てて盗み聞きする気だろうけど!
「それで、どれが食べたい?苺が旬らしいけど」
「だから今はお腹空いてな――グゥ〜」
一先ず帰って貰おうと思ったのに…。こんなタイミングでお腹が鳴るなんて恥ずかし過ぎる。それにオリバーが隣に座って来たから絶対お腹が鳴る音聞かれたぁぁ!
「あぁ、やっぱりお腹空いているんだね。」
オリバーに聞かれていたのが恥ずかしくて、差し出してきた苺と同じ顔色になっちゃったじゃんか!
「食べやすいように切り分けてもらったから。ほら」
目の前に差し出された苺の魅惑に負けて、パクりと一口。別に甘えてるわけじゃ無いからね!
「…………美味しい」
悔しいことにお腹が空いた私には、フルーツの糖分が染み渡りいつもの倍美味しく感じる。
「フルーツを届ける為でもあるけど、君の元気がなかったから来たんだ。」
あーー!ただ女たらしなんじゃなくて、普段は優しいのがなんかムカつく。だけど、そんなところも好き。
矛盾しているのは私もわかっているのよ。
オリバーの事好きなのかそうじゃないのか、自分でも分からん。もう、よく分からん!
「昼間の事で怒っているの?」
「……。」
「気持ちを伝えてくれないと、僕も分からないよ。」
「……騙されたのにオリバーはあんまり怒ってなくて、自分だけ怒っているのが心が狭いって思われそうで嫌だったのかもしれない。」
核心をつかれて消え入りそうな声で答えるしかなかった。頑張って告白したのに肝心のオリバーは顔色ひとつ変えない。
「そうなんだ。エラらしい悩みだね。」
「もう!それ、どう言う意味よ!」
「そのままの意味だけど、違ったかな?」
余裕そうに微笑んで私を見つめるあの表情……くぅ、天然たらしなんて言ってたけど前言撤回!女たらしよ!たらったらのたらし野郎だわ!
「うぅ……もうその話はいいから苺が食べたい」
「はいはい」
恥ずかしい気を紛らわせるために『苺が食べたい』なんて言ったけど……お姫様の部屋でお姫様扱い。案外悪くないかも。
「美味しい。次はパイン……あ!やっぱりブルーベリーが食べたい」
ここは天国ですか〜てな具合にいい気分だったのはここまでだった。調子に乗った自分を後悔する事になろうとはね。
「はい、あーん」
やけに笑顔のオリバーから貰ったブルーベリーをモグモグ食べた。
「早くもう一つちょうだい。またブルーベリーがいい!美味しそうなやつだけ選んでよね!」
「ほらほら、遠慮なく食べて」
一気に三個も口に放り込まれた。ちょっと多いな。モグモグモグモグ――
「はい、どうぞ」
「んん!まだ口の中にあるから……んっ!」
「好きなんでしょ?遠慮なく食べて」
次々口に入れられて食べ物詰め込むリス見たいな見た目に……うぅ、私の愛らしいほっぺに溢れんばかりだわ。ベリー攻め!
そのせいで喋れなくなったし!
「ほら。美味しい?」
またブルーベリーを口の中へ押し込んだ。チキショウ!オリバーめ!
そして口に入れられるたび反射的に体を逸らして後退りしてたのに、ジリジリと距離を詰めて来られて遂には逃げ場がなくなった!
逃げ場もなければ口の中もいっぱいで絶体絶命大ピンチ!……あれ?何故かオリバーのブルーベリーを押し込む手が止まったわ。
「……気のせいかな。扉の方から何か聞こえるんだけど」
「?……」
オリバーが動きを止めて顔を扉に向けるから怖くなって私もドアを見つめた。そのせいでドアがミシミシ唸っているのに気がついてしまった。
ひぃぃっ!なに?!
「わぁぁぁーー!!!」
「きゃーーー」
大きな音を立てながら扉を下敷きにしておじ王子とエザラが部屋に飛び込んできた。というか転がり込んできた?
きっと二人してドアから私たちの会話を盗み聞きしてたんだ!起こりたいけどベリーのせいで口も開けられないから無理だった。
「こっ、これは〜そのぉ」
「オホホホ〜扉がいきなり壊れましたね。ベルタ殿下〜」
「いやぁ〜本当だ。不思議だ」
『あははは〜』なんて嘘くさい笑いを披露するエザラとおじ王子。すごい棒読みな演技ね。どうせドアに体重かけすぎて壊れたんだろうに。主に王子が。
「君達二人に謝りたくてだな。夕食会の後懺悔したいから時間をくれ!」
床に正座して真剣な表情だし反省してそうだから『懺悔なんかしなくていい!』そうおじ王子に言いたいのに口一杯にブルーベリーが入っているせいで上手く返事ができない。
口から出すのもお行儀悪いし仕方なくこのまま喋ることにした。
「フフッフフ、フフフー!」
(訳:許すので、懺悔は結構です!)
「そうかい。僕に時間をくれるんだね。なんて優しいんだ。」
いや、言ってないですけど?良いように解釈しないでもらえます!?
「夕食後、僕の部屋に二人とも来てくれ。」
『いいえ、大丈夫です。』そう伝えたかったのに、私の返事に満足した王子は部屋を出て行ってしまった。
お姫様扱いは当分懲り懲りだと思った瞬間だった。
「さてと、ブルーベリーはまだいるかい?」
煽るようにほっぺをツンツンと突く、憎たらしいオリバーこの野郎め!
悪魔みたいに微笑むこの男を見て思った。
オリバーを揶揄うのは危険だと。
「フフフ、フフフフッフフー!」
(訳:やっぱり、あんたなんて許さないんだから!)
「まぁ、お二人仲直りしたんですね!エザラ安心しました」
仲直りなんてしてなぁぁーーい!!!




