王子……やりやがった
王族がファンファーレと共に入場!……したところは、窓に向かって流れ星にお願いしてて見逃した。
(あぁ〜ちょっと登場の仕方気になる。あの王子のことだし……)
ド派手に登場すべく、カーペットにくるくると包まったおじ王子がいるわけ(つまりは海苔巻き状態)
で、カーペットをコロコロ転がすと中からジャジャーン、王子の登場!って感じじゃない?
痛いキメが……失礼。シャキーンとキメ顔をする。
みたいな演出だってきっと取り入れてるはずよ!朝だってド派手にレッドカーペットなんか敷いてたわけだし。
(う〜ん。あの人ならやりそう!)
どうしても気になるから、ツンツンと左隣に居る兄の裾を引っ張る。何か言いたいことを察してか、高いところにある耳を私の口元に近づけ話を聞く姿勢をとった。
「ねぇ、ベルタ様は居たの?登場シーン見逃しちゃって」
「そりゃ居たに決まってんだろう。」
『居た』だけじゃ、どんな登場の仕方かわからない!
「どんな登場だった?」
少しワクワクした気持ちで兄に聞いた。どんな返事が返ってくるのか楽しみにしていたのに……
「しっかり“着て”登場したぞ。なぁ、オリバー」
「そうだね。“着てた”ね」
2人ともおじ王子が“来てた”としか言わない。
そんな情報私でも分かってる!
そんな事ではなくてどんな登場の仕方したのかが気になっているのに。
「そりゃ“来てる”に決まってるじゃない。ベルタ様が開いた夜会なんだから!」
「まぁ…会えばわかるよ。」
オリバーの返答にイマイチ納得いかない。登場の仕方気になってるのに『会えばわかる』ってどう言うこと?
なんて思っていたのはほんの数分前――
王族に挨拶するべく貴族たちの後ろに並んだ私達は、両陛下・王太子に無難に挨拶し終えて、次はいよいよおじ王子の番。ドレス贈ってもらったわけだし私から挨拶しないとね!
「ベルタ殿下、本日はお招きいただきありがとうございます」
「おぉー!そのドレスよく似合っている。」
「素敵なドレスを贈っていただき……え?!」
カーテンシーをして、ゆっくりと顔を上げたら……私とペアな夜会服を着たおじ王子がいた!
驚き過ぎて自分の着ているドレスと王子の夜会服を無礼にも見比べちゃったわ!
で、この時思っちゃったわけよ。
(王子、やってんな!)
って。
ドレスの可愛さに浮かれて王子がペア来てくるなんてこと全く頭になかった!
だって王族ってこういう場で“儀礼用の重い軍服”みたいなの着てることが多いじゃない!だからドレスと合わせた夜会服着てくるなんて夢にも思わなかった!
あぁ、兄達が言ってたの『しっかり(ペアの服)着て登場してた!』って意味だったのねー。今更理解したわ。
王子に挨拶しに行くって言われてずっと……
『こんな可愛いドレス貰ったわけだしドレスのお礼言わないと!』『なんてお礼返すのが普通かしら?」
って考えてたから王子の“着てる”服を見て驚愕したよね。
水色とピンクの組み合わせが偶然ドレスを贈った張本人と被るなんてありえない。100%合わせて作ったに決まってる!!
男性にしては目立つねずみ色のペンシルストライプの夜会服。首に巻かれたスカーフと袖のカフスボタンが水色で、スカーフに付いた宝石と胸元のハンカチがピンク。
幸いガッツリ上着が水色!とかピンク!ではないから遠目で見たら気付かれない……はず。
けどこんなに近くにいたら『ペアな服だ!』って気付くような絶妙なライン。
「フッ…まじでペアルック」
と、他人事だと思って無責任に吹き出して笑う兄の足を踏み潰した。安心してよ踵じゃないから。
コソッ
「ねぇ、殿下と夫人のお召し物の色同じではない?友好の証かしら?」
「本当ね」
なんて声が私の耳に聞こえて来た。
(え……まってこれ、ヴァレンタ国の人達からしたら王子と服の色被ったやばい外国人?)
それに、これもし贈られたドレスってバレたら王子の妾とか思われちゃわない???私これでも一応既婚者なのに隣国の王子とペア着てるなんて私不倫してるって思われそう。
絶体絶命ピンチ!!
「エラよ、どうしたんだ?せっかく私とペア服だと言うのに……って、おい!伯爵殿の胸元についているそのコサージュ…」
いきなり声を上げた王子は、オリバーの胸元のコサージュを指差し驚いていた。
(あっ!そうじゃん私のドレスとオリバーと合わせてコサージュ付けてもらってたんだった!)
「妻がベルタ様からいただいたタフィーネを大変気に入りまして、ヴァレンタ国の友好の証にとコサージュとして付けてくれました。」
にっこり笑いながら私を引き寄せるオリバー。
あんたなんて仕事のできる男なのー!王子がペア着てくるって見越して私のドレスと同じ色のコサージュ胸につけたんだ。
「殿下のお召し物も随分と気合が入ってらっしゃいますね」
「まっ、まぁな……」
気まずそうなおじ王子はオリバーと目線を逸らしている様子からは『コサージュをつけてくるなんて想定外!』そんな声が聞こえて来そう。
そりゃ気まずいよね、私(妻)に送ったドレスとお揃いの夜会服着てるんだから。
「っは、伯爵殿の服は全体的に黒くてスパイみたいな格好だなぁ〜」
「ハハハハ、殿下お戯を」
(えっ、 スッ……スパ、スパイ!!まずい!)
普通に考えたら『お前の服地味だな』って少し馬鹿にした意味なんだろうけど、この時すんごく気が動転していたの。だってオリバーがスパイって王子にバレたのかと思って焦ったから。
「ベルタ様〜あちらから素晴らしい調律が聞こえますよー踊りましょうよ!」
と、自ら誘ってしまった。
「エラから誘ってくれるなんてー。今日はダンスの日記念だ。さっ!気が変わらないうちに踊ろう!」
(っは!焦ってダンスを私から誘うなんてー!あれだけ礼儀作法復習してきたのに、やらかした!)
――なんて後悔しているけど時既に遅し。グイグイ私の手を引っ張って王子に連れて行かれいつの間にかホールの真ん中に誘導させられた。
(こんな真ん中で踊るの?もし間違えたりしたら目立つけどアナタ自信あるんですか?)
そんな風に心配していたけど、案外リズムよく踊るから上手かったのよね。それでも、上手くリードしていたとはいえ三曲も連続で踊ったから流石に疲れた。
あとダンス中に浴びせられるセクハラに耐えるのに苦労した。
『エラはすごく細くて華奢だな〜。私の脂肪をあげたいくらいだ。ッハッハッハ〜』
とか、
『こんなに着こなしてくれるなら毎日ドレスを贈ろうか?もちろん私とペアで』
みたいなことを耳元で囁かれた。
え?その時の私?……『まぁ、ベルタ様ったらぁ〜ご冗談を〜オホホホホ(涙』
って返しておいた。
レナードから教わった『取り敢えず笑っておけ』はすごく使い勝手が良くて活躍している。
「あぁ〜なかなか疲れた。何か食べるもの……あ、オリ……バー」
オリバーを見つけたから声を掛けようとしたのに、女の人に囲まれて笑っている姿を見てしまって少し落ち込んだ。
「我がルルフェ国では、お目にかかれない美しい花が咲き誇っていてとても圧巻でした。」
「まぁ、お花好きなんですね!」
「お花を愛でる心がある男性なんてうちの国では珍しいですわ」
「素敵〜」
――ってな具合にしっかり外交していた。
やけに楽しそうに笑ってる……仕事だから仕方ないけど。なんだかモヤモヤする。
女の人にいつもあんな風に笑うよねオリバーって……『私に対しても上辺の気持ちで接してるかもしれない』なんて不安になって来ちゃった。
だってあのオリバーだよ?
無意識に人を惹きつけるモテ男とはいえ、頭がいいから打算も入ってるでしょ。あぁ……あの人のこと分からなくなった。せっかく馬車の中でまたオリバーと話せるようになったとか思ってたのに。
「暗い顔してどうしたんだ?」
「うわっ!……お兄様ってば脅かさないでよ!!」
私の顔を覗き込むように顔を近づけて来た兄。手にはお肉とかの乗った皿を持っているからブッフェを堪能していたんだろうな。
「さてはお前『やっぱり私に対しても上辺の笑顔だったのか』なんてことを、オリバーのモテる姿見て考えてんじゃねーだろうな」
っぐ……なんでいつも鈍感なのにこんな時だけ当てるのよ!!!
「その顔は図星か、安心しろお前といる時に打算で接しているようには見えないからな。」
「なんでそんな事分かるの?」
「アイツと何年一緒にいると思ってるんだ。それに……
「それに?……」
途中で止まった兄の言葉を確認するように顔を上げた。なんて言われるんだろう?
「お前と上辺で付き合ったところでアイツには何も利益がない!だからいつもお前には素で接している。」
「……………。」
その言い方だと、上辺じゃないって言われたのになぜか嬉しくない。あぁ〜もっと深い話かと思ったけど、兄がそんな話するわけないわよね。




