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プチ緊急事態発生?!


「それじゃあ!次は装飾店に――


王子に腕を引かれ、半ば連行されそうになったその時、前方で女の子が足を取られて派手に転んだのが目に留まった。


(周りに母親が見当たらないから迷子なのかも!)


そう思ったらいてもたってもいられなくて体が動いていた。王子には悪いけど、掴まれた腕を振り切って女の子に駆け寄らせてもらうわ。


走っているせいでせっかく束ねてもらった花束から、花びらがヒラリヒラリと一枚、二枚落ちていく。それでも、今は気にしていられないっ!


「わぁーーーーん。痛いよぉ」

「大丈夫?足見せてみて……あぁ、擦りむいちゃったのね。」


見たところ、そこまで傷は深くないんだけど血が出ていた……ハンカチで応急処置したほうが良さそう。


「奥様、その女の子大丈夫ですか?」


エザラも心配で駆けつけてくれたみたい。彼女にハンカチ預けてあるからちょうど良かった!


「エザラ、私のハンカチ持ってる?」

「ちょっと待ってくださいね……っは!すいません荷物の中に入れて来たみたいで。私のハンカチも一緒に……」


「うわぁーーーーん」


石畳の冷たい地面に座り込んでいる女の子は一向に泣き止む気配がない。とにかく、落ち着かせないと。


「ねぇ、見て!タフィーネっていうお花可愛いでしょ?お姉さん優しいから、泣きやんだら一輪お裾分けしてあげる。」


『お花で痛みを紛らわせる作戦!』に出ることにした。これぐらいの子共は、お花好きだろうから上手く――


「うわーん! いたい、いたいよぉ……。おかあさんは、どこお……?」


――いかなかった。作戦は失敗した。


次第に大きくなる泣き声に、ついには周りからも『どうしたのかしら?』『大丈夫か?』と気にする声がチラホラ聞こえ始めた。


そうだ!あの人達からハンカチを借りよう。そう思ったその時、スッと私の横に片膝をついたのは救世主・オリバー。


「あぁ、血が出てる。だいぶ痛そうだ。」


女の子を刺激しないためなのか優しい声色。慣れた手つきでハンカチを傷口に巻く姿はあまりにもスマートで、見守る女性陣がうっとりして見惚れているぐらい。


いきなり現れた救世主(オリバー)に女の子も泣くのをやめて彼の顔をじっと見つめている。私がお花渡そうとしても泣き止まなかったのに……『イケメンって万国共通なんだ』ってことを実感したわ。



「ほら、これで血は止まった。――それとお姫様、靴をお忘れですよ。」



脱げた靴を履かせてあげると、女の子に包み込む様な優しい微笑みを向けて、頭を一撫で。



子供の扱いも上手いなんて…‥出来ない事無さそうだわ。



「わぁ…‥王子様!ありがとう」


笑顔に変わった女の子は嬉しそうで、オリバーに抱きついた。人たらしは子供ウケいいらしい!


「まぁ、なんて紳士的!」

「あんな人と結婚したかった人生」

「なんてカッコいいの♡」


……大人ウケがいいのはウチの国と変わらないみたいね。噴水に集まって観光していたマダム達の視線が、オリバーに向いているんだもの。


「助けてくれた彼女達にもお礼を言うべきじゃない?」

「二人のお姉ちゃんも、ありがとうございました」


女の子は私とエザラに向き直ってお辞儀すると、少し恥ずかしそうに笑顔を見せてくれた。


「フフ……。お礼言えるなんて偉いわね」

「……あっ、このお花アナタにあげるね。それとあんまり走ってはダメよ?お姉さんとの約束」

「うん!わかった!」


ピンク色と迷ったけど、結局水色のタフィーネを渡すことにした。この女の子には水色が似合いそうだから。


「ミアァーーー!‥‥あぁ!」


建物の曲がり角から『ミアァーー!』と叫んで安堵した面持ちでこちらに走ってくるのは、20代後半ぐらいの女性。……この女の子の名前『ミア』っていうのね。


「ミア…探したのよ。ここにいたのね良かった。」


「お母さぁーん。」


ミアちゃんが全力タックルで女性の腰に抱きついた。よっぽどお母さんに会いたかったんだわ。感動的ね!


「うゎ!…‥ちょっ!勢いすごっ……」


お母さんはあまりの勢いのハグに少し苦しそうだけど、それでも嬉しそう。うんうん、やっぱり感動的ね!


「本当にありがとうございました。それに、綺麗なハンカチとお花まで頂いて。なんとお礼を言ったらいいのか……。」


すぐさまミアちゃんの足に巻かれたハンカチと手に持つタフィーネに気付いて、私達三人に向きを変えると勢いよくお辞儀をした。お辞儀のスピードが早い。なんだかバトミントンの球みたい……。


さっきのミアちゃんのタックルといい、お母さんのお辞儀のスピード感といい……この二人が親子なの納得したわ。ミアちゃんはお母さん似なのかな?


「気にしないで下さい。困った時はお互い様ですから〜」


やだ、今の私ってば小説のヒロインばりにいい子すぎるわ。隣には“王子様”(笑)もいるしね。


「本当にお世話になりました。ミア、お姉さん達にさようならして」

「お姉ちゃんお兄ちゃんバイバーイ」


私とエザラとオリバーは、親子が手を繋いで建物の角を曲がるのを見届けた……のと同時に、どこからともなく“ダダダ!と凄まじい地響きが上がった。



「えっ…‥なになに??何事????」



辺りを見渡す暇もなく、気づけばマダム十名ほどがオリバーを包囲している。その機敏な動きは、もはや熟練の兵士そのものだった。


……え?私とエザラ?

あ〜という間に輪の中から弾き出されたわ!


「素敵でしたわ〜ところでおいくつ?」

「イケメンデスネー。ケッコンシマショ〜」

「私の靴もあそこに…」


「まぁ……みなさん落ち着いて……。」


流石のオリバーでも驚きを隠せないみたいみたいで、ご夫人達のこと宥めてるけど顔は若干引き攣っている。今ではオリバーが驚く顔もだいぶ見慣れてきたけど、ここまで引き攣ってる顔を見るのは初めてかもしれない。マダム達ある意味すごい…。


「でも、オリバーって何であんなに人を引きつけるんだろう……。まさか!魅了の力持ってたりしちゃう?!」

「ハハハ奥様ったら……」


エザラには呆れられたけど、あんなに人にモテまくるなんておかしいと思わない?


「全く、お前はバカなのか?」

「いてっ……」


いつの間にかそこに居た兄によって、私のおでこを突かれた。兄もエザラ同様呆れた顔をしている。


「エラは小説の読み過ぎだ。この世界に魔法なんて存在しない」

「魔法信じたくなるくらいモテるから……って、あれ?ベルタ様は?」

「あぁ、王子なら花屋の前で項垂れてる。ほら」


兄が指差す、先ほどのお花屋さんに目を向けると、店の壁に両手をついて呪文のように呟く姿を目撃してしまった。



おじ王子の周りだけに不幸せオーラが充満してるみたい!



「俺がせっかく計画したデートプランが…これじゃあ伯爵に負けている!いや、俺にはまだドレスが……」


ブツブツブツブツ……。距離が遠くて何言ってるのか全く聞こえない。けど一つ言えるのは王子を警戒した方が良さそうってこと。あの人何するのかわからないから。


「あなた、ルルフェ国の外交官なんですか?」

「はい、3日ほど滞在する予定です。機会があれば我が国、ルルフェにも是非いらして下さい。」


「「「「「是非行かせてもらいますぅ〜」」」」」


さっきまでの引き攣り顔はどこはやら。今では100点の笑みを浮かべて、ちゃっかり自国の旅行まで進める余裕ぶり。


それにしたって……オリバーってば他国でもモテ過ぎてじゃない?そのモテっぷり、私にも少しぐらい分けてほしい。




オリバーが駆け寄る際、おじ王子も負けじと付いて行こうとした時「あぁ〜、ベルタ様タフィーネについてお聞きしたいことが」と言って引き留めてくれてたテイリー、グッジョブ。


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