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ヴァレンタ国に着いたけど……ん?


6時間かけてようやく目的地である首都ロザリアに到着した。私たちが降ろされたのは城の正門玄関の噴水前。


ここで待機しているようにヴァレンタ国の執事長から言われたんだけど、中々来ないから忘れられてないか心配になる。



「それにしても凄いですね、この噴水。わぁ〜絵画のままです!」



降ろされて最初に目に入ったのがこの噴水。ヴァレンタ王国一の腕を持つ彫刻家に彫らせた国宝で、世界的にも有名な『噴水前で日光浴』のモデルになった場所でもある。


「細部まで細かくてリアル…凄い!」


これを見ればヴァレンタ王国の国民!……みたいなガイドブックを熱心に読んでいたエザラはとても興奮してる様子。

私も今では出発前の憂鬱さは全くない。



「着いて最初に噴水に出迎えられるなんて…素敵ね」



真ん中に彫られた天使像の服とか髪の毛が本物みたいで凄いのと、表情も繊細で今にも動き出しそう…。彫刻に詳しくない私でも国宝なの納得する出来栄え。エザラと二人でうっとりしちゃった。



「絵画?なんのことかさっぱり分からん」



美術に詳しくない兄は全く興味がなさそうに頭を掻いた。兄は美術好きって柄じゃないしね。


「ほら、ルルフェ美術館に飾られるって一時期話題になってた絵画だよ。流石のテイリーでもそれなら知っているでしょ?」


「いやぁ…さっぱりだ。興味ないからな。海外の絵画なんてもっと分からん」


「お兄様ったら……」


オリバーの説明でも伝わらないなんて。3人で顔を見合わせて呆れちゃったわ。兄はロマンがないんだから。



――なんて談笑していたら重そうな城の扉がギィ〜と音を立てて開いた。それと同時に高級そうな赤いカーペットが勢いよく敷かれたかと思えば、中から現れたのはおじ王子!


ファンファーレに合わせてカッコつけて階段を一歩、二歩と軽快な足取りで降りる姿はスカし…すごく気合が入っている印象。



「おぉー!よく来たな、エラとその他よ!歓迎するぞ」

「その他って……。」



機嫌のいい王子とは対照的に、私の後ろにいる兄が聞こえるか聞こえないかの音量で不満を漏らした。兄とおじ王子は親友なんだもんね。


――階段を下り終えた王子は私目掛けて小走りで近づいた。あぁ、これ私から挨拶しないといけない感じ?


「ベルタ殿下ごきげんよう。ヴァレンタ王国にお招きいただきとても光栄です。」


優雅に見えるように何回も練習したカーテンシー。

決まったわ!


今回の訪問は王子からの直々の招待。

そんな場でやらかしたら外交問題になりかねないからと、挨拶とかマナーを一から復習しておいたのよ!


「あぁ、エラ私のことは“ベルタ”と呼んで欲しいと前も言っただろう?殿下呼びなんて堅苦しいじゃないか」


「そうでしたわね。失礼しましたベルタ様。」

「久しぶりに君の声が聞けてとても嬉しいよ」

「それは良かったですわ。オホホホホ〜」


『答えにくいこと言われたら取り敢えず笑っておけ!』これがレナードから教わった必殺技なの!こんな早くに使う時が来ようとは。さすがおじ王子だわ、気が抜けない!


「王家の紋章を冠した馬車でお迎えいただけるとは、身に余る光栄です。妻も乗り心地を大変気に入っており、感謝申し上げます殿下。」


さすが外交官ね。ペラペラ言葉が出てくるの私も見習わないと。


「気にするな“ヴィセント伯爵殿”」


そう言えば王子って私のことは『エラ』って愛称で呼ぶのにオリバーのことは『伯爵』って他人行儀に呼ぶのね。2人の間に壁を感じる。


「エレナーデ家とヴィセント家からそれぞれ殿下への品を持参いたしました。後ほどお部屋へお届けさせますが、お口に合えば幸いです。」


「それは楽しみだ。………おぉ、兄殿そこにいたのか!エラに見惚れて気付かなかったよ。ッハッハッハ〜」


気付かなかったなんて嘘っぱちね。

私が兄の前に立っているとは言え180センチの高身長!私の後ろからは“やる気のない顔”がはみ出してるだろうし兄の存在に気づかないわけない。



(……ん?今ナチュラルに口説かれた?)



「一緒に酒を飲んだ仲じゃないですか」

「いやいや、冗談さ兄殿。ッハッハッハ」


笑いながら髪をサラッと払う王子…なんか前会った時より、服と髪型キメキメな気がする。片方の髪だけ耳に掛けたりなんかしちゃって……なんでこんなにオシャレしてるんだろう。夜会は夜から始まるわけで午前からかしこまった服着なくてもいいのに。



(この国ではこれが普通?)



「挨拶がひと段落ついたところで街に案内するとしよう。さぁ、行くぞ!」

「えっ!今からですか?」

「あぁ、私自ら案内する。」


私の手を取るなり街へ行こうとしてるけど、王子はその格好のまま行く気?!


「殿下、失礼ですがそのお召し物で街を散策されるのですか?」


私同様オリバーも兄までも驚いた顔をしていた。


オリバーの言う通り、このままの格好で街に行くのは不用心すぎる。『僕王子なんです〜』みたいな格好の人が王都とは言え街中で歩いていたら目立ってしょうがないだろうし。何より命狙われそうで危険!



「あぁ、脱ぐのを忘れていた。」

「えっ、ぬぐ?」


(着替えるじゃなくて?!ここで脱ぐつもり?!)


――指パッチンを合図に使用人が王子の横について上着をバッと脱ぎ捨てた。一瞬にして庶民の様な質素な服装に変わった姿はまるでマジック。


(中に庶民服を着込んでたなんて。)


なんか今回のおじ王子……前会った時よりレベルアップしてる気がする。


あぁ〜街散策で何かあったらどうしよう。



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